9 / 33
4.紋様
寮の部屋で着替えをしながら、フィンリーは深いため息をついた。大人になるまでは性欲とは無縁だと思っていた自分に、あんなことが起こるなんて思ってもみなかった。
けれど、あの行為で確かに自分の中に眠る魔力を感じることが出来た。さらにあれをコントロールし、扱えるようにならなければ意味がない。
しかし、魔族はあんな熱を常に感じているのか。気がおかしくならないのだろうか。今度レストに聞いてみよう、なんて思いながらクローゼットを閉じた。
今日は初めての感覚を体験し、なんだか身体が倦怠感に包まれている気がしたから、早く寝ようとベッドへと潜りこんだ。
寮の部屋割りは基本二人一組だ。共同生活の体験とやらで、王族だからと特別扱いはされない。その代わり部屋は十分すぎるほど広く、相部屋の相手も身元のしっかりした貴族の令息だ。同室のナットは少し気が弱そうだが、相部屋の相手としては穏やかな性格で申し分がなかった。
そういえば、今日はまだ顔を見ていない。真面目な奴だから、もしかしたら図書室で遅くまで勉強しているのかもしれないな、なんてまどろみながら思う。
そうして、心地よい眠りがフィンリーを包み込み始めた時分、ぎし、とベッドが軋む音がした。自分の足元が沈んだ気がして、夢うつつの中、相部屋の男子生徒が暗闇の中自分のベッドと間違えてしまったのだろうか、と思った。
けれど、次の瞬間。
「!!」
足を撫で上げた人の手の感触に目を見開く。
慌てて身体を起こそうとしたら、上から硬い何かがおしつけられて動けなかった。
「な……っ」
見上げたそこには、獅子獣人が自分の上に乗っている光景が見えた。
「おっと、静かにしろよ」
そのまま、口元を覆われる。ぞわり、と身体が拒否反応で嫌悪感を示す。硬い、と思ったのは獅子獣人に身体全体で上から抑え込まれているからだ。自分よりも遥かに重い重量に、身動き一つとれない。
「へへ……っ、馬鹿だなぁ少し考えりゃわかるだろ」
熱の籠った獣臭い吐息が、顔にかかり気持ちが悪い。
何……?こいつは何を……言って……
とにかく危険だということはわかっているのに、身体は言うことをきかない。フィンリーの耳元で、ねっとりと獅子獣人が囁く。
「お前とクインの顔は一緒だ。それなら、どっちだろうが同じだよなぁ?」
「……!!」
そうだ。どんなにフィンリーが男性体に憧れて、強くあろうと男のようにふるまったところで、可憐で見る者の目を奪う美しさをもったクインと自分は同じ顔なのだ。双子本人たちはわずかな違いを認識しているが、他者から見れば大した違いではないだろう。
悔しくて、歯ぎしりをする。自分達の一族は、宝石の王族と呼ばれた。それが、この外見にあることを、わかっていたはずなのに、わかっていなかった。
べろり、とざらついた舌がフィンリーの頬を舐める。
「……っ」
嫌悪感で鳥肌が立つ。
同時に、自分の素足を獣人の手が這っている感触を感じる。
どうして……レスト先生に触られる時は、こんな気持ち悪いと感じないのに……っ
跳ねのけて逃げなければと頭ではわかっているのに、体格差はどうしようもない。王族でありながら自身を守る力さえない己に腹が立つ。
「やめ……っ」
「はは、抵抗しているつもりかよ」
嘲るような声音に苛立つが、足をばたつかせてもびくりとも相手は動かない。なんとか抵抗を試みようとしても、レストとの一件で身体に疲労がたまっていて力が入りにくい。
これが、これがもしクインだったら……
想像するだけで血の気が引く。
そう考えたら、自分でよかったのかもしれない。
クインが傷つくよりずっと……
「性別がないって身体がどんなものか興味あったし、入れる穴はあるだろ」
下卑た笑い声と共に、かぶっていた布団をはぎ取られる。薄い夜着一枚のフィンリーを、簡単に上から抑えつけてくる。
……っ
獣人の顔が近づいてきて、首筋をざらざらとした大きな舌で舐められた。
嫌だ……気持ち悪い……っ
こんなにも違うなんて。レストに触れられて心地よかったものが、何か汚いものに書き換えられている感覚がして、フィンリーは唇を嚙み締めた。
がぱり、と開けた口の中には鋭い牙があり、そのまま喉元を噛むかのように近づいてきた、その時。
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった
くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。
血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。
夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。
「……涼介くん」
薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。
逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。
夜、来て。
その一言が——涼介の、全部を壊した。
甘くて、苦しくて、止まれない。
これは、ある夏の、秘密の話。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)