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5-2.
「結構こじんまりしているんですね」
「あ~まぁ、ほとんど寝に帰るだけですからねぇ……」
王宮と比べないでくれます?とレストに頭を小突かれた。連れてきてもらったレストの家は、学園が用意したという三階邸だ。決して小さくはないが、貴族の屋敷ほどは当然大きくもない。赤い屋根がレストに似合わなくてちょっと可愛いと思ってしまった。
一人の管理ではさすがに無理があるので、使用人も最低限で三名ほど通いでいるという。
「せっかく住まわせてもらうから、掃除くらい僕手伝いますよ」
にこにこと上機嫌で腕まくりするフィンリーに、レストがふむ、と顎に手をおく。
「メイドのお仕着せでも着ます?」
「……嫌がらせ?」
ぎろり、と睨みつけると、冗談です、と笑う。
レストはこういう揶揄いをしてくるけど、最初から声音に冗談の色を混ぜているのでさほど不快感がないんだな、と今更気づく。いつもなんだかんだいって、どこか一歩自分から引いた位置で接しているのだ。おそらく自分のことを「フィンリー様」と呼ぶのもその一つのように思えた。
なんとなくだが、普段のこの慇懃無礼な態度は作り物で、先日助けてくれた時の荒い言葉遣いの時の方が彼の素に近いのかもしれない。
そう思うと、普段は距離を置かれているのかと思って少し、なんだか少しだけ胸の奥がちくりと痛んだ。
「では、フィンリー様のお部屋に案内しますね。本日は通いの使用人が帰ったので、私の案内ですみません」
そんなこと気にしなくていいのに、と思いながらもなんだか少し嬉しかった。案内された部屋は、広くはなかったけど清潔感に溢れてシンプルながら質のいい家具が揃った部屋だった。ベッドも大きくて寝心地が良さそうだ。
寮から持ってきた少ない荷物を部屋にあるカウチソファに置くと、きょろきょろと辺りを見回す。あとは勉強机に、小さな本棚。部屋の奥にはシャワー室が備えられているようだ。
二階部分なので、窓からは庭が一望できる。王宮にいた頃は庭師の整えた庭が眼下に広がる部屋で過ごしていたので、少し懐かしく感じた。
「あぁ、そうだ。同室だった彼ね。貴方の部屋に侵入する手助けをしたということで謹慎処分になりました」
物珍しそうに部屋の中を見てまわるフィンリーを、扉に少しだけ身体を預けて腕を組んだ状態で見つめながら、レストが報告する。
フィンリーは少しだけレストの方を振り返ると残念そうに「そうか」とだけ呟いた。
彼は、気弱なタイプだった。おそらく獅子獣人に脅されたのだろう。それでも、やってしまったことの報いは受けねばならぬだろうことも、理解できた。
「まったく、お優しいことですね」
呆れたようなレストの口調に、むっとして唇を尖らせる。
「未来の国王には赦す寛容さも必要だと、僕は思う」
レストが片方の眉をあげて、ため息をつく。
「貴方、もし襲われていたのがクイン様であっても同じことが言えるんですか?」
「……」
答えられずにいると、レストは組んでいた手をといて、わしわしと自分の髪をかき混ぜた。
「言い過ぎました。それで?フィンリー様、魔力コントロールの訓練は続けますか?」
言外に、襲われたトラウマは大丈夫か、と匂わせていることを感じ取る。男であっても、圧倒的な力に抑えつけられればそれはトラウマとして残るだろう。けれど、フィンリーはゆるく頭を振って、まっすぐにレストを見つめた。
「むしろ、ますますやる気が出た。僕に必要なことだ、と」
握りこぶしをぐ、と作ると、レストがにっこりとほほ笑む。相変わらずうさん臭くて、目の奥が笑ってないような笑顔だ。
「わかりました。では、今後はこの家で訓練の続きをしましょう。そうすれば、体調を崩しても私が看病できますしね」
ちょっと声が弾んで聞こえたのは、気のせいだろうか?
そんなことを考えながらそういえば、と気になっていたことを思い出す。
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