強くなりたいと言ったら、元魔王に開発調教されていました~宝石姫と元魔王の恋物語~

花虎

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「魔力が淀むってどういう意味?」
「あぁ、魔力は常に循環させないといけないんですよ。基本的に魔力コントロールができない種族はそれを呼吸で行っています。自分の体内に合った分量を吐き出し、取り込む」

 薄い唇に指をあてて、説明してくれる。

「でも、先日のように普段意識しない魔力の根源を、強制的に意識すると、うまく循環が出来なくなり、魔力自体が淀み、最悪の場合暴走する可能性があります」
「暴走……」
「はい。さすが大精霊に好かれるだけありますね、貴方の魔力は澄んでいてとても多く、芳醇な赤ワインのように美味しい」
「お、美味しい?」

自分ではわからない感覚に目を白黒させると、レストは思い出したのか少しうっとりと目を細めて説明してくれる。

「魔力を淀まないように移すことは魔族にしか出来ません。他者の魔力を取り込めば本来であれば自分の魔力とぶつかり合って身体の崩壊を招くからです。そして同時に、弱い魔力の持ち主が強い魔力を取り込むことも出来ません。己の魔力が負けて、やはり身体の崩壊を招きます」

怖いことを言い出した。青ざめたフィンリーに、レストはおやおや、と苦笑する。

「安心してください、私ならこうしてぴんぴんしているでしょう」
「じゃぁ、僕の魔力は先生より弱いってこと?」

少しほっとして尋ねると、レストはうーん、と少し視線を動かした。

「弱い、というのとはまた違いますね。貴方の魔力は魔族には持ちえない類のものなので」
「……?もしかして、それが大精霊と契約できる秘密?……ん?でも大精霊って魔力嫌いじゃなかったっけ?」

 あれ?と首を傾げたフィンリーに、レストはちょっと話が長くなりますので、とカウチソファへとフィンリーを誘った。大人しくレストの隣に座る。

「魔力嫌い、というのはある意味正しくて、ある意味間違っています。魔力には純度があって、強い魔族ほど混じりけが多いんです。理由は単純で、魔族は他者の魔力を食い合い、取り込んで強者が生き残るからです」

 自分達とは違う壮絶な価値観に、フィンリーが目を見開く。それはつまり、同族同士で殺し合うということだ。

「魔族がこの地に少ないのは、他者と相いれないという特性ももちろんありますが、元々数が少ないんですよ。殺し合いばっかりしているから」

 脳筋なんですよね、あいつら、と適当にご近所さんを評するかのような発言に、困惑する。一応レストもその魔族の一員だ。

「仲間意識とか……」
「あんまりないですね。ただ、基本的に執着が強い種族なので、己の物だと判断したものに対する行動力はあると思います。……まぁ話を戻しますね」

こくり、と大人しく頷く。

「大精霊が好きなのは、純度の高い混じりけのない魔力なんです。だから、魔族の魔力は嫌いなんです」
「あぁ……なるほど。つまり、僕たち王族が持つ魔力が、純度の高い魔力だから契約できている、ということだね」
「そうですね。貴方たち王族は、たとえ婚姻相手に他種族を選ぼうとも生まれてくる子にその魔力が交じり合うことがない、というのが最大の特徴でしょう」

 なるほど、考えたこともなかった。そして、王宮での教師陣からも習うことはなかった。大精霊は魔力を嫌っている。だから常に己の力を磨け、と。それは魔力に興味を持つことで持った魔力に何か別の不純物を取り込む可能性を忌避した結果なのかもしれない。

「まぁ、過去の王族で魔力コントロールしようなんて思い立った人いないはずですから」

 実際交じり合うのかはわからないですけどね、とレストは肩をすくめた。

「もしかして、先生が研究したかったのは、そういうことも含めて?」

やっとなんとなくわかりかけてきて、フィンリーが尋ねると、レストは笑ってごまかすように口角を持ち上げた。

「貴方たち宝石の王族は、解明できていない謎が多いですしね。まぁ……でも、私としては結構気に入っていますよ」

そう言いながら、さらり、とフィンリーの金の髪を指先に乗せて梳いた。なんだかその瞳に熱が籠っている気がして、フィンリーは居心地の悪さを感じる。まっすぐ目を見られなくて、そっと視線を外した。レストのアッシュグレーの瞳に見つめられることがなんだか恥ずかしいようなことがしてきて、慌てて口を開く。

「……せ、先生の魔力と交じり合ったら味とか変わるのかな?」

 言ってから、自分がとんでもないことを言ったということに気づいて、じわじわと頬が熱くなってくる。
 だって、それじゃぁまるで。

「ふ……、あはははは」

たまらず、といった感じでレストが噴出して、お腹を抱えて笑った。

「わ、笑わなくても!」
「はははは……。いや、すみません……くっ……」

謝りながらも肩を震わせているのが腹立たしい。思わず足の脛を蹴ってみるけれど、少しも効いていない。

 レストはひとしきり笑った後、身体を折ってフィンリーを上目遣いで見ると。

「味のレポートは今後必須にしておきます」

と嘯いた。


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