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6.変化
しおりを挟む宝石の王族は、未だに謎が多い種族だ。宝石と名がつく通り、人々を魅了する麗しい外見と、声を持っている。
大精霊との契約は成人になり性別が固定された後、その時の国王に認められれば行われる。そうして、大精霊を子に受け継いだ国王は隠居となり、新しい王が生まれるのだ。
その後、元国王は伴侶と共にゆったりと余生を過ごす。その時期に子を授かった場合は伴侶側の特徴が出て、両性具有であることはない。
大精霊の力を受け継ぐのは、一人で良いからだ。
そう考えると、双子として生まれた僕らは異例中の異例だ。二人ともが麗しい姿であり、両性具有。
どちらにも王になる資質があるということ。
幸い、力が物をいう国である。双子をそれぞれで祭り上げて権力争いなんて馬鹿なことも起こらない。
けれど、逆を言えば、王の跡継ぎであったとしても、大精霊を契約する前に死ねば意味がない。特別だと言われながらも、成人の儀を迎えるまではむしろ他種族より脆弱であると言える。
自分に筋肉がつきにくいのも、おそらく両性具有であるが故だろう、とフィンリーは考えている。
幼い頃から周りにいわれてきた。どちらが王になってもいいが、フィンリー様の勇猛さは王に向いている、と。フィンリー自身もそれに気をよくして、自分は男になるのだと信じてきた部分がある。
それは今でも変わらない。
変わらないのだが……
「ん……っは……っ」
熱い吐息を漏らしながら、フィンリーは硬く瞼を閉じた。
あの熱が快感だと認識してから、レストに触れられると全身がむずむずするようになってしまった。
そして何より……ふにふにとレストが揉む胸のあたりが、少し、ふっくらしてきたような?いや、気のせい、気のせいだ。
考えたくなくて、フィンリーはふるふると頭を振った。
「僕……は、男だ…っ、これくらいのこと……んん…っ」
言い聞かせるように呟くと、レストの指先が乳首を摘まんで捏ねた。
「はいはい。ご立派ですね」
「あしらうな、馬鹿~!」
「気持ちいいなら気持ちいいって、言っていいんですよ?」
「うる……さい!ぁ……っ」
レストと共に暮らし、魔力コントロールの訓練を続けてもう数か月たった。年齢は十六歳になった。
成人まであと二年。しかし未だ魔力の扱いは小さい物を浮遊させる、までしか到達していない。それも、毎回魔力を使うためにレストに引き出してもらってからだ。
レストは相変わらずフィンリーを揶揄ってくるし、フィンリーも変わらず意地を張って認めないでいる。
いい加減もうレストには全てバレている気がするが、フィンリーにとってはこの引き出す行為が気持ちいいと認めてレストに告げるには抵抗があった。
下腹部の熱が溜まり、全身へと巡らせると、フィンリーは目の前におかれたコップに意識を集中させる。するとふわり、とコップが浮いた。
ここまでは、前回できた。今回はそのコップの中身の水……液体を浮遊させる。繊細な魔力コントロールは、集中力がいる。
レスト曰く、慣れたら他のことをしながらでも容易だそうだが、それはお前が上級魔族だからではないか?とフィンリーは思っている。
こぷり、とコップの水がまるで球体のようになって、コップの中から浮き上がる。
「やった!でき……っ」
できた、と言いかけたら、ぱしゃん、と水に戻りコップと共に机の上に落ちた。
「……」
がっくりと肩を落とすフィンリーに、まるで見て覚えろとでもいうようにレストが人差し指をくるりとまわすと、倒れたコップと、散らかってしまった水がするりと戻る。
いや、見ただけじゃわからないんだけど、とじとっとレストを睨みつけるが、彼は元々丁寧に物を教えるタイプではなかった。
普段の授業もやって見せて、あとは自分でなんとかしろスタイルだ。
教師としてどうなんだ?と思う反面そのやり方があったからこそ、自身で工夫する生徒も多く出て、何故か授業の評判はいい。いや、評判がいいのはおそらくこいつの顔の評価も入っている。
狐顔のくせに。
と心の中で難癖をつける。
「今日はここまでにしましょう」
レストの終わりの合図に、もう少しやりたかったが、無理をすると熱を出すと言われたので大人しく従う。
フィンリーはほとんど無意識に、隣に座ったレストの方を向くと瞼を閉じて、くい、と顎をあげて薄く唇を開いた。
それを見て、レストが一瞬固まる。
「……?」
「……貴方それ、私の前でしかしないでくださいよ」
何を言っているのだろう、と瞼を開きかけた時、薄い唇が自分のそれを塞いだ。開いた口の間から、分厚くて長い舌が侵入して、口内を愛撫する。
心地よい快感が背筋を駆け抜けて、全身の滞留していた熱が吹き上がる。慰めるようにレストの手が粟立って敏感になった素肌を滑ると、知らず身体が震える。
快感の奔流が全身をめぐり下腹部の魔力の塊が膨らんでいくのがわかる。その部分にレストが手を添えて力を入れて押し込めると、一気に頭の先まで強い刺激が駆け抜ける。
「んん……っ」
びくり、と身体を震わせて、フィンリーはレストの服を掴んだ両手に力を籠める。そして同時に襲い来る倦怠感。それも、心地よくて、ふらりとレストの胸に倒れこむ。
魔力溜まりを引き出して、最後レストに食らってもらうまでが、フィンリーにとっては訓練のワンセットだった。
決して気持ちいいからしてほしいとか、そういうんじゃない。
「……別に毎回はしなくていいんですけどね……」
くってりと寄りかかるフィンリーに、苦笑したその声は届かなかった。
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