強くなりたいと言ったら、元魔王に開発調教されていました~宝石姫と元魔王の恋物語~

花虎

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 フィンリーがレストにお願いしたいこと、というのは魔力溜まりを引き出す際にもう胸を触らないでくれ、というささやかな願いだった。

 何故なら、やっぱり気のせいではなく最近胸が少しぷっくりしてきている気がするのだ。認めたくはないが、おそらくレストのせいではないだろうか。

 レストに触られると気持ちいい、と覚えた身体はもう無理に胸を触られなくても大丈夫だと判断して、これ以上胸が膨らんでこないように触るのを禁止したいのだ。一度だけ、それとなく伝えたことはあるが。

「嫌です」

と有無を言わせぬ圧力を持った笑顔で却下された。なんでだ。解せない。

 大体胸が膨らむなら胸筋がよかった。どう考えてもレストの胸とは感触が違う。それもフィンリーにとっては許せない理由の一つだった。

 僕は、レスト先生みたいな胸筋が欲しい。

 あるいは魔力を自在に操れるようになったら体格的なところもどうにかなるのだろうか?なんて真剣に考え始めたその時。

 今日も手合わせ願おうとレストを探していた。学園の廊下を歩き、レストの研究室を覗いたが、珍しくもぬけの殻だった。大体そういう時は生徒に捕まって質問攻めに合っているか、トラブルを起こした生徒を(本人曰く穏便に)指導しているかのどちらかだ。

 今日は特に騒ぎが起きていた記憶もないし、質問攻めの方かな?なんて思いながら踵を返し、きた道を戻る。すると、少し遠目に、背の高いレストの姿が見えた。

 見つけた、と思って声をかけようとした瞬間、耳に届いた声に固まった。

「見て!レスト先生とクイン様よ。なんてお似合いなの~」

 ……え?

声の方に視線を向けると、きゃぁきゃぁと下級生が複数人頬を染めて騒いでいる。それからゆっくりと視線をレストの方へ戻すと、確かにその隣に、クインの姿があった。

 まるでそれは、一対の絵のような、煌びやかさがあった。麗しい姫をエスコートする騎士かと見間違うかのような物腰の二人。

 クインが穏やかな表情で微笑み、その笑顔を見てレストも瞳を柔らかくした。

 どくり、と心臓が嫌な音を立てた。

まだ二人は少し離れたフィンリーには気づいていない。気にせず声をかければよかったのだ。いつものように。だけどなんだか二人の空気感に割り込むのが憚られて、フィンリーはさっと二人の視界に入らない位置に身を隠した。

 どく、どく、どく、と心臓が脈打つ音がやけに耳に響いた。

「あ~憧れるなぁ。美しい宝石姫と美麗なレスト先生」
「ご結婚なさるのかしら」
「してほしい~!」

きゃぁ~と盛り上がる下級生に、どうやら気づいたらしいレストが声をかける。

「もう鐘は鳴っていますよ、教室に戻りなさい」

声をかけられたことで、また女生徒達から黄色い悲鳴があがり。バタバタとその場を離れていく足音が響く。

 結局、クインとレストがいなくなるまで、フィンリーは隠れた物陰から出ることは出来なかった。


 結婚……そうだ。自分が十八の成人になった後……大精霊と契約し、国王になったら、クインは誰かに嫁ぐことになる。

  国外に出すという選択肢はおそらくないから、クインを守れるほどの力を持った家との婚姻になるだろう。

 この国に、上級魔族であるレストに勝てる者など、ほとんど存在しない。いるとすれば大精霊を使役する国王くらいになるだろう。

 レストと……クインが結婚する。それは、国防のために上級魔族を留めておきたいこの国の思惑にも合致する。

 上級魔族は気まぐれで、残忍性を持っているが、一度執着したものに対しては力を惜しまないという特徴を持っている。それは土地といったものに対して発揮されることもあるのだ。

 上級魔族が住まう地域を、侵略してくる他国は滅多にいない。つまり、国外への牽制に使えるのだ。

 レストは国王とは古い知り合いという理由で現在この地にとどまって、酔狂で学園の教師をしているが、いつ気が変わっていなくなるともわからない。だから、彼を縛り付ける何か、を……王宮は求めている。

 しかし上級魔族に対して、半端な娘を差し出したところで意味がないだろう。魔族の自尊心を満足させる、唯一無二の上等で上質な……宝石姫……。

 これ以上のものなど、おそらくない。

 レストは胡散臭い顔を張り付けてはいるが、意外と面倒見がいい。それは、フィンリー自身が嫌というほど知っている。おそらくクインを嫁にすれば、大切にしてくれるだろうことも想像がつく。

 そう、だ。クインには幸せになって欲しいとずっと願っていた。自分が守ることももちろん当たり前に視野に入っている。けれど、自分が守ってクインの自由を奪うのではなく、クインにはクインの幸せを掴んで欲しかったから、婚姻については取り計らうつもりでいた。

 自分から見ても、レストは申し分ない相手だ。

 あぁ……だけど、何故

「……っ」

 何故こんなにも、心臓が引き絞られるように痛いのだろうか――――




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