強くなりたいと言ったら、元魔王に開発調教されていました~宝石姫と元魔王の恋物語~

花虎

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7.人間




「おかえりなさい。始める前に食事にしますか?」

通いの使用人が作って用意してくれていた食卓を指して、レストが言った。けれど、お腹は全然空いていない。フィンリーはゆるく首を振る。

「今日は体調がよくないので、訓練もやめておく……」

いつもはフィンリーの方からやりたい、と迫ってくることが多いので、レストは軽く目を見開く。熱でもあるのか、と額に手を添わせるが、熱はなさそうだ。しかし、レストが触れることを当たり前のように受け入れるフィンリーが、軽くその胸を押して拒絶した。

「大丈夫……寝ていれば治ると思う」

早口でそれだけ告げると、足早に与えられた自室へと入っていく。体調が悪いというわりに、しっかり歩いているし、熱もない……それに、異変を感知する紋も変化がない。なんだかんだ毎回魔力移しを強請られて、やるときに異変感知の紋様はつけている。本当に辛いほどの体調不良であればそれが反応するはずだった。あの紋様は体調不良以外にも、フィンリーが危機感を感じた時にもレストに伝えてくれる。獅子獣人に襲われた時は、その知らせで駆け付けたのだ。

と、いうことは……単純にレスト自身が拒絶されたのだとは理解したが、心当たりがない。

「……」

年齢もあがって、フィンリーにも悩み事が増えたのかもしれないな、なんて結論づける。
何も毎回やらずともいい、と考えていたのは自分だったはずなのに、いつの間に、当たり前になっていたのだろう、なんて思いながら、レストは食卓についたのだった。






 腹の奥がじくじくと痛む。いや、痛い……わけではないのかもしれない。毎日のように触れあっていた。あの暖かな感触を拒絶したのは自分だ。それなのに今更、いつも彼が触れる下腹部が切なく疼き、何かを訴えてくる。

 布団の中でぎゅう、と瞼を閉じると、その裏に浮かぶのはレストと……自分と同じ顔をしながらも、自分よりもずっと可憐で可愛いクイン。

 僕も……レスト先生より背が高くなって、強くなれたら……

こんな言葉にできないような感情は無くなるのだろうか。

 祝福したい。なんなら僕が二人をくっつけたっていいんだ。いや、でもすでに僕が知らないところで二人は親密になっていたのでは?

 そう考えて、また心臓が痛くなる。

微笑みあっていた二人の姿が、脳裏に焼き付いている。

 レストにいたっては、フィンリーが見たことないような顔をしていた。
僕には胡散臭い笑顔しか向けたことないくせに。なんだよ……クインだって、どうして僕に教えてくれないんだ……

 わかっている、これは嫉妬だ。自分の半身であり、何でも相談しあってきたクインに相談してもらえなかったこと……そして、自分の方が親しいと思っていたレストが、実はそうではなかったという事実。

 ……どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう……

初めての感情に戸惑って、フィンリーはただひたすら丸まってやり過ごすしかなかった。


 鳥の鳴き声が耳に入ってきて、ハッとする。ほとんど一睡もできないまま、朝を迎えてしまった。

 寝不足で頭がぼーっとする。

「大丈夫ですか?今日は休みますか?」

部屋から降りてきたフィンリーの顔色が悪いのに、さすがに心配になったのかレストがそう提案してくれるが、断った。

 むしろ、授業に出て身体を動かしたい気分だった。思い切り暴れて、この言葉にできない荒れ狂う感情を外に吐き出してしまいたかった。

 そんなことを考えながら学園までの道を歩く。レストの家は、さすが学園が用意しただけあって、学園のすぐ近くにあり徒歩で通える距離だ。

 だが、人通りが多いところでは生徒とも出会う確率があがって煩わしいだろうという配慮から、学園の裏手から近いといった位置にある。

 そのため、学園までの道のりに人通りは常に少ない。今日はいつもより早く出たのでさらに人がまばらだった。

 学園の裏手へ繋がる小道に足を踏み入れると、完全に人の気配がなくなる。今はありがたい気分だ。少し雑木林になっているそこをさくさくと土を踏みしめながら歩く。

 今日はクインに会ったら聞いてみようか……

考えて、言葉が見つからない。

 かまえなくても、レスト先生のことどう思う?って……聞けばいいだけだ。
思えば、あの大人しいクインがやけにレスト先生のところに僕がいくのを厭っていた。

 もしかしたら、好きな人に僕が近づくのが嫌だったのかもしれない。そうだとしたら、謝らないと……

 なんて思考の海に沈み切っていたフィンリーは、気づかなかった。横合いから迫る、人の気配に。

 いきなり飛び出してきた黒い旅装の男二人が、驚いて固まったフィンリーの頭から大きな麻袋をがばりと被せた。

 途端奪われた視界に、フィンリーは払いのけようとしたが、その時には足を持って引き倒されていた。

「何を……!」

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