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7-2.
暴れるが、麻袋の中ではどうにもならない。慌てて脱出しようとしても、足元の入り口が何かの紐で結ばれた。
身動きがとれなくなる。
ざっと血の気が引いた。
そのまま、何者かに担がれる感覚がする。どうにかしようともがいても、びくともしない。
「誰か……!」
声をあげても、雑木林に人はいなかった。どう考えても人がいるところにまで届きそうにない。
自慢の体術も、不意を突かれて自由を奪われれば役に立たない。そのまま、何かの荷台に乗せられたのか、硬い感触が身体を打つ。直後、がたがたと道の悪いところを馬車が進んでいる振動が伝わってくる。
「おぃ、乱暴に扱うなよ!商品だぞ!」
「わかってるよ!うるせーな!見ろよ、宝石姫なんて上物、手が震えるぜ」
男たちが興奮したように喋っている。
「しっかし、どんなに綺麗でも女ではないだろう?俺はごめんだね、気持ち悪い」
「はは!だからこそ希少な物に目がないゲテモノ食い公爵に高く売れるんだろうが」
下卑た笑いが頭に響く。
もしかして……こいつらは……人間か?
視界は麻袋に覆われ、わからないが、時折この王国に人間もわたってくることがある。ビジューライト王国は人間の王国と違い物珍しいものが溢れているため、商人が険しい山岳を乗り越えてくるのだ。それでもあまりにも厳しい環境のため、途中で力尽きる者も多いと聞く。
おそらくこの男たちが言う「公爵」とはこの王国の貴族ではなく、人間の国の公爵だ。
で、なければ宝石姫を「ゲテモノ」とは称さない。人間とは違うものを、物珍しい動物として扱う「人間という種族」は、ビジューライト王国ではあまり良い評価を聞かない。
常にビジューライト王国の侵略も狙っているという噂だ。強欲で、非力なくせに数に物を言わせて、略奪を行う。
己の力で成しえることが美徳だとされるこの王国とは相いれない存在だ。
「せっかく、魔族の手を借りてここまで来たのに、一攫千金を狙わないと男じゃないぜ」
「あぁ!」
魔族?王国の外にいる魔族か?なるほど、確かに魔族であればあの険しい山岳を人間が通れるようにすることは可能かもしれない。
男たちの会話は、聞いているだけで腸が煮えくりかえる。尊い宝石の王族を「物」扱いし、売ろうとしているこの男たちが。
殺してやる
ふつふつと怒りがこみ上げるが、今何かを出来るかというとそうではない。麻袋は意外と頑丈で、少し暴れたくらいでは破れないようだった。
あるいは身体強化を施せば可能であろう。しかし、そのための魔力が今のフィンリーにはない。ないというか、未だに魔力の引き出しはレストの手を借りねばならぬのだ。
う~僕のバカ……レストの手が気持ちいいからって、自分で引き出す訓練を疎かにしていたなんて……
今更気づいたところでどうしようもない。よく考えずともレストがいなければ使えないというのは致命傷過ぎるのだが。
あ、そういえば……
ふと思い出して、上着の裾を引き出し、お腹を見るが、紋様がない。
……ダメか……。そういえば先生が、一日たつと効力が無くなるって言っていたもんな。がっくりとして次の手立てを考えたくても、道が悪いのか何度も馬車の床板に跳ねて打ち付けられて身体が痛い。
麻袋の中で身体をまげてハタと気づく。もしかしてこのまま転げまわったら男たちを馬車から落とせないだろうか。視界はほぼ遮られてはいるが、気配はわかる。御者一人と、荷台に乗っているのは襲ってきた男二人だ。
馬車の形状は予測でしかないが、そんな上等なものではない。声の反響の仕方からしてホロがついていないタイプで、おそらく農民が収穫した穀物を運ぶ時に使うようなものに、馬が二頭。つまり、さほど耐久性はない。
ということは、サイズ感優先で小回りがきくものを選択したと考えるのが妥当だろう。確かに雑木林に隠し、さらに素早くこの王国を脱出するのであれば出来るだけ狭い裏路地を駆けた方が確実だ。
ビジューライト王国はさほど大きい国ではない、王都から二日も馬車で走れば国境付近までたどり着ける。だがこの馬車では途中で壊れてしまうだろう。そこはおそらく織り込み済みだ。つまり、途中でもう少し耐久性の高い馬車に乗り換えるはず……。
小回りがきかなくてもよくなる、ということは街を出たところ……。
そこの乗り換えの時がチャンスかもしれない。とにかくそれまで我慢と体力温存だ、と拳を握りしめた。
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