男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎

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14話

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羞恥に頬を染めながらそう言うと、リアンの手が背中に触れる感触がした。しゅるしゅるとドレスを留めていた紐状のリボンが、リアンの手によって解かれる。

 その音が、さらに羞恥を煽ってくる。

王女として、夫となるもの以外に肌を晒すなんて、本来ならあり得ないけれど……。

 背中側が緩んだのがわかったので、そこからは自分で前身ごろを引っ張ると、コルセットだけを着けた状態になる。抑え込まれた胸が強調されていて恥ずかしい。けれどじっと見つめてくるリアンの視線を感じて、なんとか上半身を脱いだ。

 下半身を脱ぐには立ち上がらないと無理だな、と考えてエレノアが逡巡する。それを無視してリアンがおもむろにスカートを掴んで、半ば強引に引っ張ると、ずるり、と抜け落ちた。

 途端に下着だけの姿になったエレノアは、思わず自分の身体を丸めようとするが、それも覆いかぶさったリアンが足の間の座椅子に自身の膝を乗せて妨害していた。

 意味があるかはわからないが、ひとまず胸元を両腕で隠しながら、じっとりと自分の全身を這うように見つめてくるリアンから目を反らした。

 うぅ……なんだろう……なんだか……

 魔術具で喘いでいる姿を見られるよりも恥ずかしい。

知らず白い肌がほんのりピンク色に染まる。

 異性に肌を初めて見せたからだろうか?それとも……彼のことが、好きだったと自覚してしまったから……?

 この国で、下着姿を見せるのは、裸を見せるのと等しい行為だ。

「手を……どけて」

腹に響く低い声でさらに命令されて、普段命令される立場にないエレノアは知らず下腹部がきゅん、と疼くのを留められない。

 以前なら屈辱でしかなかったのに、どこか喜んでしまっている自分がいて。これではリアンの復讐にならないのでは、と内心不安に思うけれど、彼の気がすむまで付き合うと決めたのだ……と決意して、両手を胸元からどけた。

 リアンの手が伸びて、コルセットの縁に指を掛けて引っ張る。

「これも脱いでください」
「……!ま……マクガフィン卿、これ以上は……」

いくらなんでも不敬どころではない。万一こんなことが知られれば、国一番の宮廷魔術師だとしても、罰は免れないだろう。

 さすがに止めたエレノアに、リアンの瞳が険しくなる。恐ろしさに、一瞬ひるむけれど。彼を守るにはここで止めてもらわねばならない、とエレノアは必死で続けた。

「マ……ううん、リアン、これ以上は私も貴方を庇えなくなる。貴方の傷がこれほどまでに深いと気づけずに、本当にごめんなさい。私としては……貴方に肌を見せるのは、その……嫌ではないのだけれど……あ!でも私が嫌じゃなかったら、復讐にならないわよね……!」

ハッとしてエレノアが顔を上げると、リアンが実に何とも言えない奇妙な顔をしていた。が、リアンを説得するということに頭が完全に支配されたエレノアは言い募る。

「でも、仕方ないの。私、貴方が好きだったから……あの時もずっと触れたかったんだわ。貴方の気持ちも考えずに……」

そこでしゅん、と眉を下げる。ソファの背もたれについているリアンの腕にそっと手を乗せて。

「例え好きだとしても、貴方へした行為は決して許されることではないわ。私は王女として政略結婚のために肌を見せることは出来ないけれど……それ以外のことだったら、貴方の気が済むまで……って……きゃぁ!」

エレノアが必死で話していると、リアンがエレノアを掴んで持ち上げると、前回と同じように自分の膝の上に座らせた。

 そのまま、何も言わずにエレノアの背中に手をまわしてコルセットの紐を器用に緩めていく。

「え?ちょっと……リアン……!」

話聞いている?と思わずぺちぺちとリアンの広い背中を叩く。手元を見たいからか、エレノアの身体は前に倒れるような形になって、リアンはその肩に顎を乗せてコルセットを外していっている。

「姫様って……」

その体勢のまま、リアンがようやく口を開いた。

「本当に馬鹿で、間抜けで……」

さすがにカチンときて、エレノアが文句を言おうとしたら、上半身を元の位置に戻して、口づけされる。
 侵入してきた舌が口内で遊ぶ合間に、紐が解かれたコルセットを、割り開くのが伝わってくる。

「んん……っ」

抵抗しようとするエレノアの舌を捕えて、吸って、リアンが顔を離すと同時に、コルセットがとりはらわれる。

 ふるり、と零れた白い双丘。

けれどリアンの瞳はエレノアにひたと合わせたまま。

「度し難いほど……可愛いですね」
「……え?」

貶されたのか褒められたのかわからず、エレノアが固まっていると、リアンが苦笑を零す。

「僕が学院に入学した後、最初に作った魔道具がこれです」

そう言って指し示したのは、エメラルドグリーンのペンダント。

「自動発動の仕組みに苦労しましたが、おかげでユリウスから国王の手に渡って、貴方の元に届いた」

本来魔道具開発は、学院の最終学年でも認可までいくのは相当の難関だ。それを、入ってすぐの十四歳で成し遂げたのだという。

 リアンはぽつぽつと語りながら、ペンダントから指先をずらしてエレノアの白い肌の上を滑らせる。

「それで、考えたんです。市井へ魔道具を流通させることで、宮廷魔術師がその場で開放できれば物資を運ばずとも扱えるようになる。そうすれば、貴方に何があっても、僕が最速で助けにいける」

言いながら、手のひらで胸のふくらみを持ち上げて触れ、やわやわと揉みしだく。

「ん……っ」
「姫様、覚えていますか」

滑らかな肌や形を変える胸の感触を楽しむように、全体に柔く刺激を与えながら、リアンは続ける。

「出会った時、あなたは庭園の木陰で泣いていた」

悪戯な指先が、エレノアのピンクの乳輪をゆるりと撫でる。

「……父様も母様も兄様も、自分を大切だと言ってくれるけれど、傍にいてはくれない、と」

エレノアはわずかに目を見開く。思い出した記憶の中にはなかった。けれど、何の違和感もなく、リアンの言葉はすとんと自分の中に入ってきた。

 あぁ、そうだ。あの頃の自分は、腫物扱いだった。

「あなたはそれが寂しいと、泣いていた。十歳の子供が、声を殺して泣く姿を見て僕が何を思ったかわかりますか」

わからなくて、ゆるく頭を振ると、リアンはくすり、と小さく笑って、少しだけ立ち上がりかけている小さな胸の先端を指の腹で捏ねた。

「ふ……っ」
「―――綺麗だ、と思ったんです」



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