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王女の帰還1

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 戦いを終えふと何かを思い出したユーリスは、自身を見つめてはぁっと、ため息をついた。


「せっかく仕立てていただいたドレスが・・・このピンク色、可愛らしくてお気に入りでしたのに。少し戦いに時間をかけすぎましたわ」


 悲しげに俯く。すると


「「殿下ー!」」

 
 あら、全力でこちらへ向かってくるあの銀髪の2人は・・・


「ライアン、クリス。お勤めご苦労様です」


 見事な装飾の蒼き鎧を纏った男女が、寸分の狂いもない動作でひざまづく。


「はっ殿下!・・・ではなくて!お召し物がボロボロではありませんか!王族であるあなた様がそのようなお姿をされてはなりませぬ!さっ、私のマントをお羽織りください!」


「お怪我はありませんか?殿下の御身に何かあれば、陛下にあわせる顔がなくなります。どうかご自愛をもたれますよう・・・」


 あたふたしている青年、それとは正反対に落ち着きを持つ淑女。


「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。怪我だってしていませんし、なにより毎日鍛錬してますから」


「そういう問題ではありません!今回だって「1人でやるから街のことは任せた」とか言って飛び出していったではありませんか!心配する我々の身にもなっていただきたい!」


「そうですよ殿下。いかにお強くとも貴方様はまだ15歳、成人されたばかりではありませんか。我々親衛隊を頼っていただかないと」


 んー、心配症の部下を持つのは大変ですね。
 まあ、優秀な兄妹なんですけど れども。
 仕方ありませんね、今回は私が折れてさしあげましょうか。


「心配かけましたね、ライアン隊長、クリス副隊長。これからもよろしくお願いしますね?」
 

「「はっ!」」


 さて、お父様に帰還報告をしませんと、陽が暮れてしまいます。


「あっ、そういえば」


「どうしました、ライアン兄様?」


「いや、今回の犯人は2人と聞いていて、そこで泡吹いてるのが片割れなのはわかるんだが・・・殿下、もう1人はどこです?」


「あら、あなたの後ろにいるじゃありませんか」
 

 「え、後ろ?」
 

 あれ、なんか埋まってる。なんだこれ・・・?


「兄様。これ、人ですね」


「え、上半身埋まってるってこと・・・?殿下、これ生きてます?」


「大丈夫ですよ、たぶん。さて、あとは他のものに任せて我々は帰りましょう。お父様へ帰還報告をしなければなりませんので」


「「はっ!」」

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