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第三話 -始まり-
04
しおりを挟む「…………えっと? ちょっと待て。話まとめていい? つまりお前の話をまとめると…」
運のいいことに、ケイは比較的頭のいい青年だった。
「…輪廻転生ってのは神様もやってて、物理世界でケイって名前で人生を送っていた俺の霊体はどっかの神様だったってこと?」
「察しがよくて助かる。…正解だ。より正確に言うならば、物理世界に転生している神はごく一部に限られる。本来輪廻転生は人間が霊体のレベルを高めるために行う修行のようなものだからな。にもかかわらず神が物理世界に転生する理由は様々だが、ほとんどは人間たちの修行の手伝いであったり輪廻転生のシステムを滞りなく運営するための仕事をするためだ」
「物理世界には修行サイドの転生者と助ける側の転生者の両方がいるってことか…」
「今のお前は物理世界の魂のみの概念しか持たないから説明が難しいが…物理世界というのは何かと苦痛が多い。修行の場なのだから当然だが、神とて物理世界に転生すればそこでは人間と同様だ。怪我をすれば肉体は痛みを感じるし病気にもなる。もちろん寿命も死もある。神界で悠々と暮らしていける身分にもかかわらず、わざわざ物理世界に転生してまで人間のために働こうという神はなかなかいないのさ」
くすっと軽い笑いがケイの口からもれる。
「なんか、神って人間みたいだな」
つられるように笑いながら男は答えた。
「当たり前だ。人間とは、神が自分に似せて作りだした存在だからな。夢を壊して申し訳ないが、神とは全知全能でもなければ優れた人格者でもない。当然神にも無数の個性と考え方が存在する。ただ、霊体のサイズは人とは桁違いだがな」
「力があるってことか?」
「…神の中でもかなり差はあるが、少なくともお前はかなり大きい。神の霊体に全く興味がなくてそちらの能力に関しては素人同然の私でも一目で人間ではないとわかるレベルだ」
大きいと言われてもピンとはこなかった。一見すると目の前の男もケイ自身も、普通の人間と同じ大きさに見える。しかしそれも…物理世界的なフィルターのかかった考え方ということになるのだろうか。
肉体が眠ればケイは自動的にこの世界へ来てしまうのなら、これからは毎晩こちらに来てしまうことになる。
普通の人間ならば朝になればすべて忘れてしまえるはずの、このとんでもない異世界ファンタジーを、今の彼は忘れることができない。
「しかし…本当に何も思い出せないのか? さっき襲ってきた連中に見覚えは?」
呆れるような…というより困り果てた目でこちらを見ている男にケイが軽く叫ぶ。
「そうだッ! さっきの連中ッ!! あれは一体何なんだ?」
見た目だけで言えば確実にRPGに出てくる魔物だった。男が暗い顔で返す。
「…お前にわかりやすいように言うと、連中は悪魔と呼ばれる類だ」
「……あー…あんまりわかりやすくない…かな。悪魔って何?」
「誤解を恐れずに言うと、私たちと同じような神の一種だ。ただし、堕天して魔界と呼ばれる場所に住んでいる」
「悪魔って神なのか…。意外だな。魔界ってのは地獄のことか?」
ふぅ…と小さく息をついて男はつぶやいた。
「……教えることが多そうだな」
なんとなく、それはケイ自身も感じていた。何しろここ最近の出来事は彼自身の常識を大きく超えている。目の前の男の話が全て本当なら、おそらくケイは日本がどこで地球というのがなんなのか思い出せないレベルの記憶喪失ということになるのだろう。
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