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【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】
【理不尽賢者と女盗賊Ⅵ】
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「上手くいくかな……な、なあルーンよ」エンデュミオンが狼狽していた。
「仲間……違うな。ダチ公を信じろ! 相棒よ!」思いっきりルーンベルトはエンデュミオンの背中を叩いた。
「そうだな、俺たちゃダチ公だもんな。信じてやらなきゃ男じゃねえもんな」
「わたくしもそう思いますよ。あんなにスカッとした気持ちの良い方は中々いませんよ。良いお仲間をお持ちで羨ましいです」
どうやらローズマリーの奇襲作戦は成功しそうだ。あとは向こうさんの肝っ玉がどれだけデカいかによるだろう、とルーンベルトは考えていた。エンデュミオンが悲しむような展開だけは避けなければならない。馬よりも早く走れれば戦力になれるのにとルーンベルトは歯噛みした。己の未熟さはローズマリーとの旅で嫌というほど思い知らされているが今回は特にそうだ。相手は人間と獣人。普通に戦えられれば負ける気はしないがあのウルテジナとかいう大盗賊に手玉に取られている。あれは傑物だ。ローズマリーをしてさえ力づくが有効にならない。亀の甲より年の劫とはよく言ったものだとルーンベルトは思った。
そのことわざは先程の作戦会議の時にローズマリーから教わったものだった。
「私が逃げたらどうするの? 大事な交渉カードの筈よ」セレーナはダフネというコボルトに見張られながらウルテジナの部屋で葡萄酒を煽っていた。完全な敗北、剣の力ではなく己の精神と気転の負けだった。セレーナは屈辱的に感じていた。そしてやけ酒に走ったというわけだ。
コボルトは言った。静かに相手を説き伏せるように穏やかに。
「あんたが逃げてもこのアジトの場所から仲間の元に戻るのはこの土地に精通している我々を除いて不可能だ。だからお頭はあんたを自由にさせているのさ」
「私が剣を白銀の鷹の剣を取り返してここの盗賊を皆殺しにする可能性は考えなかったのかしら?」
「ほれ、お前の荷物だ。お頭から伝言だ、良い剣だから一生大事にしろだとよ」
「屈辱だわ! 人生で初めてよ。私が人を殺したりしないと分かっていて弄ばれた!」
コボルトは煙草を吸った。セレーナは初めて見るが本の知識で知っていた。南の国ではよく嗜まれるそうだ。
「ふーっ、お前さんに良い昔話をしてやろう。10年前俺のいた獣人族の集落はヒュームの軍隊による虐殺を受けた。オルケイアの今の王の前の時だ。一番獣人族排斥運動が強かった時期だった。俺は幼く力もなく唯一の肉親である兄貴を兵隊になぶり殺しにされた。俺は兄貴に死なないでくれと思う前に自分はああはなりたくない、死にたくないと思ってしまった。心が折れたわけだ。そして次に俺の番になった時ウルテジナがやってきた。盗賊を率いて軍隊相手にタイマンをはった。クズな兵隊共は数の力で押せなくなると逃げ出した。俺はその時人間憎しの思いが強くなり、死んだ兵士の剣を握りウルテジナを刺そうとした。しかしウルテジナはどうしたと思う?」
「分からないわ。あなたを気絶させたとか? 私みたいに」
「いや、笑ったのさ……」コボルトの口から紫煙が吹き出され空気に溶けて消えた。
「笑った? それであなたはどうしたの?」
「見ての通りさ。俺は剣を捨てウルテジナに抱きしめられた。力いっぱいな。そしてウルテジナについて行くことにしたのさ」
「分かった。私はここで葡萄酒を浴びるほど飲んであの女盗賊に嫌がらせをしてやるわ」
「ふはははは、お頭もそれには頭を抱えるだろうな」コボルトもセレーナも笑った。
「仲間……違うな。ダチ公を信じろ! 相棒よ!」思いっきりルーンベルトはエンデュミオンの背中を叩いた。
「そうだな、俺たちゃダチ公だもんな。信じてやらなきゃ男じゃねえもんな」
「わたくしもそう思いますよ。あんなにスカッとした気持ちの良い方は中々いませんよ。良いお仲間をお持ちで羨ましいです」
どうやらローズマリーの奇襲作戦は成功しそうだ。あとは向こうさんの肝っ玉がどれだけデカいかによるだろう、とルーンベルトは考えていた。エンデュミオンが悲しむような展開だけは避けなければならない。馬よりも早く走れれば戦力になれるのにとルーンベルトは歯噛みした。己の未熟さはローズマリーとの旅で嫌というほど思い知らされているが今回は特にそうだ。相手は人間と獣人。普通に戦えられれば負ける気はしないがあのウルテジナとかいう大盗賊に手玉に取られている。あれは傑物だ。ローズマリーをしてさえ力づくが有効にならない。亀の甲より年の劫とはよく言ったものだとルーンベルトは思った。
そのことわざは先程の作戦会議の時にローズマリーから教わったものだった。
「私が逃げたらどうするの? 大事な交渉カードの筈よ」セレーナはダフネというコボルトに見張られながらウルテジナの部屋で葡萄酒を煽っていた。完全な敗北、剣の力ではなく己の精神と気転の負けだった。セレーナは屈辱的に感じていた。そしてやけ酒に走ったというわけだ。
コボルトは言った。静かに相手を説き伏せるように穏やかに。
「あんたが逃げてもこのアジトの場所から仲間の元に戻るのはこの土地に精通している我々を除いて不可能だ。だからお頭はあんたを自由にさせているのさ」
「私が剣を白銀の鷹の剣を取り返してここの盗賊を皆殺しにする可能性は考えなかったのかしら?」
「ほれ、お前の荷物だ。お頭から伝言だ、良い剣だから一生大事にしろだとよ」
「屈辱だわ! 人生で初めてよ。私が人を殺したりしないと分かっていて弄ばれた!」
コボルトは煙草を吸った。セレーナは初めて見るが本の知識で知っていた。南の国ではよく嗜まれるそうだ。
「ふーっ、お前さんに良い昔話をしてやろう。10年前俺のいた獣人族の集落はヒュームの軍隊による虐殺を受けた。オルケイアの今の王の前の時だ。一番獣人族排斥運動が強かった時期だった。俺は幼く力もなく唯一の肉親である兄貴を兵隊になぶり殺しにされた。俺は兄貴に死なないでくれと思う前に自分はああはなりたくない、死にたくないと思ってしまった。心が折れたわけだ。そして次に俺の番になった時ウルテジナがやってきた。盗賊を率いて軍隊相手にタイマンをはった。クズな兵隊共は数の力で押せなくなると逃げ出した。俺はその時人間憎しの思いが強くなり、死んだ兵士の剣を握りウルテジナを刺そうとした。しかしウルテジナはどうしたと思う?」
「分からないわ。あなたを気絶させたとか? 私みたいに」
「いや、笑ったのさ……」コボルトの口から紫煙が吹き出され空気に溶けて消えた。
「笑った? それであなたはどうしたの?」
「見ての通りさ。俺は剣を捨てウルテジナに抱きしめられた。力いっぱいな。そしてウルテジナについて行くことにしたのさ」
「分かった。私はここで葡萄酒を浴びるほど飲んであの女盗賊に嫌がらせをしてやるわ」
「ふはははは、お頭もそれには頭を抱えるだろうな」コボルトもセレーナも笑った。
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