最強!最凶?理不尽賢者ローズマリーを夜露死苦!

日置弓弦

文字の大きさ
58 / 92
【第3章 理不尽賢者ローズマリーと魔法科学国オルケイア】

【理不尽賢者とその舎弟Ⅺ】

しおりを挟む
「……おもてを上げよ。聖女ローズマリーとその仲間たちよ……」玉座に座る高齢のヒュームが厳かに言った。顔には生気がなく言葉はか細い。まるで死人が話しているようだ。そしてその近くにたたずむ30を超えてそうなヒュームは王の前であるにもかかわらず傲岸不遜にもふんぞり返っていた。

 アザリス兄さん、あなただけは僕の手で引導を渡してやる。クリフトは心の中が急に真っ黒に染まっていくことに気が付いていなかった。知らず知らずのうちに佩いている剣に手がかかり抜こうとしてしまった。その時ローズマリーの温かい手がそれを止めた。ローズマリーはあたしにすべて任せろとでもいうようにウィンクした。クリフトの心を染め上げていた憎しみの心はすっと浄化された。

「……聖女ローズマリーよ、何をしにこのサザールに軍を率いさせてまでやって来た……」

「あたしは異世界からやって来た。この格好のことをこの世界の連中は珍妙と馬鹿にして言う、もしくはオルケイアの出身かとも。だからこの国にやって来たんだ。もしかしたらこの国を最初に作ったのはあたしの世界と同じところからやって来たかもしれないと思ってね」

「……もはや、それだけが目的ではあるまい。あの王旗をたなびかせると言うことは次期国王は自分であると宣言するも同じ謀反人としてクリフト共々処刑することもできるのだぞ……」

「できるものならやってみなよ、あたしが本気になればこの首都ごと全てを灰燼に帰すことくらい容易いって仲間が言ってたぞ」

「お父様! ローズマリー様が手を下さなくてももし僕たちに危害が加えられたら外で待機している部隊があなたとアザリス兄さんを殺しに来るでしょう」

 第一王子アザリスは笑い始めた。

「馬鹿な弟よ、王宮にはデルダウ魔導研究所の作った最新鋭のゴーレムが20体は配備されているのだぞ。たった3000人の兵力などものともせず踏み潰してくれるわ」

「誰がたった3000と言いましたか各都市から応援が続々と集まってきているのですよ。その為に僕はゴリアテと旅を共にしたのです」え? マジかよ、コイツただのバカな舎弟じゃなかったんだなとローズマリーは心の中で思いを改めた。

「くぅ、何故貴様も、ローレンヌも私に歯向かうのだ。獣人どもを根絶やしにすることが魔王軍への打撃になると何故わからんのだ!」

「その為にローレンヌ兄さんを殺し、僕にも刺客を送り込んだ人間の言うことか!」

「大義の為だ! 北に広がる薄汚れた獣人族の集落……あんなものがあるからオルケイアは魔王軍と繋がっている等と噂が立つのだ。お父様そうでしょう?」

「……その通りだ。獣人族は根絶やしにすべきだ……」何だかこの王様おかしいぞ。受け答えに間が空きすぎだ。ローズマリーは目に魔力を集中させた。王には暗い影のようなものがまとわりついている。そしてそれと同じ影がある人物にも見られる。

「ちょいと良いかな、王様さんよ」ローズマリーは王との距離を詰めた。第一王子はその前に立ちはだかったがローズマリーの覇気に当てられ膝をついた。王が口を開こうとした時ローズマリーは王が涙を流したのを確認した。それから間をおいて苦しむような目で王は言った。

「……クリフト及びローズマリー一行を内乱罪で死刑に処す……」

 クリフトは歯噛みしたとっておきの嘘だったのにこのままではローズマリー様まで巻き込んでしまう。【閃光斬】で父と兄を斬りローズマリー様の盾になるか? 否王宮を出るまでの時間稼ぎさえできれば何とかなるだろう。最新鋭のゴーレムは魔法が効かない。その上魔導レーザーとかいう最新鋭の武器まで装備している。ローズマリー様には不利だ。

「……クリフト! 王様になるんだろ。舎弟は舎弟らしく黙って言うことを聞いておけ」ローズマリー様は父上に触れた。すると父上の背後から黒い影のようなものが飛び出し霧散した。

「ちっ逃げられたか……まあ良い。王様よ、大丈夫か?」

「わ、わ、私はヘンネルに操られていたのじゃ……地獄の日々じゃった……くぅ……」王は気絶してしまた。王宮の兵士たちが動揺し始める。それは波紋のように広がっていった。

「鎮まれ、王国の兵士たちよ! 今から真の謀反人ヘンネルを捕縛する……都中に連絡をしろ!」ゴリアテが大音声で叫んだ。兵士たちは我を取り戻し各々の役目を果たしに散っていった。

「ありがとう、ゴリアテ、それからローズマリー様も……しかしヘンネルが犯人だなんて一体どういう証拠があって?」

「まずあの歳で副侍従長になっているのがおかしいし、副侍従長の立場なら王様のこと自由にできるからと思ったのが1つ、もう1つは侍従長がお前の兄貴と刺し違えたって話があるのにそれにすら触れなかったこと、最後にあたしの魔力をこめた目で見たら黒い影のようなものが王様とヘンネルにくっついていたことが証拠だな。それに王様の受け答えも変に間があっておかしいと思ったのさ。処刑宣言の時は涙を流していたしな」

 そしてローズマリーは第一王子アザリスに向って言った。

「あんたは実の親父に異変が起きたことを間近で感じていた筈だろう。もしかしてあんたの裏には魔王軍の影がいるんじゃないだろうな?」

第一王子アザリスは目を白黒させながら言った。

「わ、私は知らぬ。本当に父上が我が意見に賛同してくれたと思っていただけだ! あの男が裏にいたのだとは思わなかった」

「ヘンネルは女だろ?」問い詰めるローズマリーの迫力に怯え始めた。

「脅されていたのだ、実は……」

 程なくしてヘンネルの変死体が見つかった。死亡推定では半年前には死んでいたようだ。第一王子アザリスは王位継承権を剥奪され幽閉されることとなった、死罪か流刑か沙汰が出るまでだ。それらの話を聞いたクリフトは泣いていた。コイツはほんとうにお人好し過ぎる。仕方のないダチ公だ。



後日、ローズマリー達は国を救った英雄として晩餐会に出るように王様からお達しがあった。



こうしてオルケイア国第三王子クリフトはローズマリーからダチ公と呼ばれるようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...