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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】
【理不尽賢者と魔剣士Ⅵ】
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ローズマリーとカーヴァインはゴブリンの村に滞在していた。最初はてっきり襲いに来るのかと思い戦闘体勢に入ったが一向に襲いに来る様子がない。あたしが最初に遭遇したゴブリンはすぐに襲い掛かってきたのに……なんだかおかしい。
「この国の亜人族は魔王の眷属ではない。普通のヒュームの村人と大差はない」
「あたしはアレイネ山脈の麓の樹海で亜人族を相手に戦ったから、つい亜人族を見ると戦闘体勢に入っちゃうんだよね」
「まあ、分からんでもないがな、しかしアレイネ山脈の麓のモンスターの闘技場に行ったということはまさか集まった魔王の眷属全てを倒したわけではあるまいな」
「いや、それがさ……結果的にはほぼ全て倒しちゃったんだ」
「全く、貴様という奴は笑えない力を持っているな」
「で、仲間にはこの大陸に潜んでいる全ての魔王の眷属を倒したから冒険者ギルドに報告するって言われているんだ」
「貴様の武勇伝には正直呆れ果てた。ほら今夜はこの宿に泊まるぞ」
カーヴァインは宿屋の主の手を握ると魔力を与え終えた。
宿屋の主人は勿論ゴブリンである。
「旦那様にお嬢様今晩は隣の『獣の牙亭』で、食事をとると良いですよ。他国では幻の火酒ゴブリッシュも置いてありますよ」
「それはお土産に買うことはできるのか?」
「ええ、まあただその分高くつきますよ」
「分かったよ。ありがとうね、ゴブリンのおっちゃん」
2人は『獣の牙亭』にやって来た。ゴブリンのことも悪いイメージはなくなった。
「カーヴァインお前は酒は飲まないのか?」
「俺は酒には大して興味がない」
「あたしのダチ公が言ってたがゴブリッシュは本当に美味いらしいぞ? ここで飲まなきゃ人生半分損したことになるってダチ公はぬかすと思うぜ。それともそんななりで飲めないとかじゃあないだろうな」
「そのような安い挑発には乗らん」そう言うとカーヴァインは外に出て行ってしまった。
「お前良い奴だけど……ノリが悪いな」
次の朝ゴブリン達のギャアギャアやかましい声がローズマリーの目を覚まさせた。カーヴァインも同じように起きたらしく狭い廊下で、鉢合わせした。
「貴様も気づいたのか?」
「そっちこそ」
「とりあえず声のする方へ向かうぞ」
ゴブリン達は麦を食べようとするイナゴの群れにファイアボールなどの魔法や武器で攻撃していた。
しかし、量が量なだけあって麦が食べられていく。
「村長! これじゃ来年のゴブリッシュは作れないぞ!」
「ワシにもわからん。年貢の納め時かもしれんな」
そこにローズマリーとカーヴァインのコンビが現れた。なんでもこの50年1度も蝗害には会ってなかったらしく刈り時が遅かったらしい。豊潤な小麦は魔力をエネルギーにしているこの世界では格好の標的になる。
「あたしがファイアボールで、焼き殺してやろうか?」
「馬鹿か! 貴様は。麦畑ごと消え去ってしまうは!」
「じゃあどうするんだよ?」
「この世界、特にこの地では魔力が高いものが標的となる。囮は俺がやる。貴様は俺にまとわりついたイナゴをファイアボールで、燃やせ」
「大丈夫なのかよ?あたしの一撃を受けて立っていられるのか?」
「防御力が高いのが長所なんでな……」
「分かった、信じてみる」
カーヴァインは魔力を放ち始めた。回りの空間が歪みねじれる。
先ほどまで麦を狙っていたイナゴは一斉に吸い込まれるようにカーヴァインに集まっていく。
「死ぬなよ、カーヴァイン。ファイアボール!」
炎がカーヴァインを直撃し、イナゴを燃やし尽くす。一瞬カーヴァインも燃えたかと思ったらカーヴァインは剣で炎を消し飛ばしていた。
「防御力が高いのが長所なんじゃなかったのかよ?」
「方便だ。俺は魔剣士だぞ。剣技については自信がある」
今までファイアボールを食らってなお生きている存在にはエンシェントドラゴン以来出会わなかったのでローズマリーは心のそこから感心した。
「なあ……」
「なんだ?」
「そのさ……」
「はっきり言え貴様らしくもない」
「『原初』倒したらあたしと勝負しようぜ」
「馬鹿か、貴様は。頭蓋に入っているのは脳味噌なのか?」
そんな2人をゴブリンの村人が集まって見つめていた。村長とおぼしき老ゴブリンもいる。老ゴブリンはお付きの者からあるものを受けとると何も言わず渡してきた。
「美味いな、この酒は!」あれほど酒を飲むのを嫌がっていたカーヴァインはほろ酔い気分になっている。坪には印が押されており13と書いてある。若いゴブリンに話を聞いたところ13年前のゴブリッシュは味が良く、しかももらったのは大吟醸だと言う。これ1本しか残っていなかったのをわざわざ渡してきたようだ。
「私はな、シンダリア帝国の武の拠点工房都市ロートレックで生まれたのだ……。ローズマリーよ、君は聞いているのか……ヒック」
「5回も6回も同じことを聞かせんなってこのへべれけエルフ」
「先生違いまーす。ハーフエルフでーす!」人格崩壊しているんじゃないかと思うほどカーヴァインは酔っ払ていた。
悪酔いしているようだからローズマリーは少しほっておくことにした。こいつも一癖あるタイプみたいだな。面白い奴と旅ができて良かったと心から思った。
「この国の亜人族は魔王の眷属ではない。普通のヒュームの村人と大差はない」
「あたしはアレイネ山脈の麓の樹海で亜人族を相手に戦ったから、つい亜人族を見ると戦闘体勢に入っちゃうんだよね」
「まあ、分からんでもないがな、しかしアレイネ山脈の麓のモンスターの闘技場に行ったということはまさか集まった魔王の眷属全てを倒したわけではあるまいな」
「いや、それがさ……結果的にはほぼ全て倒しちゃったんだ」
「全く、貴様という奴は笑えない力を持っているな」
「で、仲間にはこの大陸に潜んでいる全ての魔王の眷属を倒したから冒険者ギルドに報告するって言われているんだ」
「貴様の武勇伝には正直呆れ果てた。ほら今夜はこの宿に泊まるぞ」
カーヴァインは宿屋の主の手を握ると魔力を与え終えた。
宿屋の主人は勿論ゴブリンである。
「旦那様にお嬢様今晩は隣の『獣の牙亭』で、食事をとると良いですよ。他国では幻の火酒ゴブリッシュも置いてありますよ」
「それはお土産に買うことはできるのか?」
「ええ、まあただその分高くつきますよ」
「分かったよ。ありがとうね、ゴブリンのおっちゃん」
2人は『獣の牙亭』にやって来た。ゴブリンのことも悪いイメージはなくなった。
「カーヴァインお前は酒は飲まないのか?」
「俺は酒には大して興味がない」
「あたしのダチ公が言ってたがゴブリッシュは本当に美味いらしいぞ? ここで飲まなきゃ人生半分損したことになるってダチ公はぬかすと思うぜ。それともそんななりで飲めないとかじゃあないだろうな」
「そのような安い挑発には乗らん」そう言うとカーヴァインは外に出て行ってしまった。
「お前良い奴だけど……ノリが悪いな」
次の朝ゴブリン達のギャアギャアやかましい声がローズマリーの目を覚まさせた。カーヴァインも同じように起きたらしく狭い廊下で、鉢合わせした。
「貴様も気づいたのか?」
「そっちこそ」
「とりあえず声のする方へ向かうぞ」
ゴブリン達は麦を食べようとするイナゴの群れにファイアボールなどの魔法や武器で攻撃していた。
しかし、量が量なだけあって麦が食べられていく。
「村長! これじゃ来年のゴブリッシュは作れないぞ!」
「ワシにもわからん。年貢の納め時かもしれんな」
そこにローズマリーとカーヴァインのコンビが現れた。なんでもこの50年1度も蝗害には会ってなかったらしく刈り時が遅かったらしい。豊潤な小麦は魔力をエネルギーにしているこの世界では格好の標的になる。
「あたしがファイアボールで、焼き殺してやろうか?」
「馬鹿か! 貴様は。麦畑ごと消え去ってしまうは!」
「じゃあどうするんだよ?」
「この世界、特にこの地では魔力が高いものが標的となる。囮は俺がやる。貴様は俺にまとわりついたイナゴをファイアボールで、燃やせ」
「大丈夫なのかよ?あたしの一撃を受けて立っていられるのか?」
「防御力が高いのが長所なんでな……」
「分かった、信じてみる」
カーヴァインは魔力を放ち始めた。回りの空間が歪みねじれる。
先ほどまで麦を狙っていたイナゴは一斉に吸い込まれるようにカーヴァインに集まっていく。
「死ぬなよ、カーヴァイン。ファイアボール!」
炎がカーヴァインを直撃し、イナゴを燃やし尽くす。一瞬カーヴァインも燃えたかと思ったらカーヴァインは剣で炎を消し飛ばしていた。
「防御力が高いのが長所なんじゃなかったのかよ?」
「方便だ。俺は魔剣士だぞ。剣技については自信がある」
今までファイアボールを食らってなお生きている存在にはエンシェントドラゴン以来出会わなかったのでローズマリーは心のそこから感心した。
「なあ……」
「なんだ?」
「そのさ……」
「はっきり言え貴様らしくもない」
「『原初』倒したらあたしと勝負しようぜ」
「馬鹿か、貴様は。頭蓋に入っているのは脳味噌なのか?」
そんな2人をゴブリンの村人が集まって見つめていた。村長とおぼしき老ゴブリンもいる。老ゴブリンはお付きの者からあるものを受けとると何も言わず渡してきた。
「美味いな、この酒は!」あれほど酒を飲むのを嫌がっていたカーヴァインはほろ酔い気分になっている。坪には印が押されており13と書いてある。若いゴブリンに話を聞いたところ13年前のゴブリッシュは味が良く、しかももらったのは大吟醸だと言う。これ1本しか残っていなかったのをわざわざ渡してきたようだ。
「私はな、シンダリア帝国の武の拠点工房都市ロートレックで生まれたのだ……。ローズマリーよ、君は聞いているのか……ヒック」
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