乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

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第1章 俺が乙ゲー転生ってマジですか?

00話 呆気ない終わり

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──俺は何でもできた。

勉強やスポーツはもちろん教養や芸術、何においても何一つ誰にも劣ることは無かった。

──でも、俺は何一つ持っていなかった。

子供の頃は神童と呼ばれたが、後にあまりに常軌を逸した能力で¨化け物¨と呼ばれ遠巻きにされるようになった。
そんな俺を家族は裏で気味悪がりながらも、利用していた。

──俺は奴らを切り捨てた。 

後悔はなかった。
俺にとって、奴等は不要の存在だと判断した。
その判断は正しく、俺はその後何年かは平穏に暮らすことが出来た。
平穏で、つまらない日々だった。

しかし数年後、奴等は再び俺の前に現れた。
多額の借金を背負い、金を無心しに来たのだ。

「だって、家族でしょ? お母さん達を助けてくれるわよね?」

母親だった女が言った。
醜い笑みを浮かべていた。

「……馬鹿だろ」

思わず口からこぼれた。

でも本当に馬鹿だ。

そもそも俺は手切れ金として多額の金を渡していた筈だし、それを使い切るどころか借金まで作るとは、馬鹿としか言い様がない。 

……しかも¨家族¨とは笑わせる。
散々利用しておいて実に馬鹿馬鹿しい……そんな事、思った事もないだろうに。

「何だとっ!? 親に向かってなんて口の聞き方だっ!!」

俺の一言に、馬鹿にされたと思ったらしい。
家族だった奴らが怒りわめき散らした。
どいつもこいつも醜く濁った瞳で、俺を写す。

「このっどこまでも馬鹿にしてっっ!!」

そして、刃物を取りだし俺の胸を刺した。

避けようと思えば避けれたし、返り討ちにも出来ただろう。
しかし、俺はそうしなかった。
俺は自分の命にも執着がなかったのだ。
刺された所から、血がどんどん溢れていく。
死の間際、奴ら罵詈雑言や、遺産が手に入るなど叫んでいるのが聞こえる。
と言っても一銭たりともいかないようになっているし、この犯行の瞬間は映像として警察にリアルタイムでいくようになっている。
すぐに捕まるだろう。
奴等の望む未来は決して訪れる事はない。

……ざまーみろ。

暗い水底に沈んでいく意識の中で、ぼんやりとそう思った。
今すぐにでも沈みきってしまいそうなのに、後悔も恐怖もない。
ただ──

あぁ、……でも人生の最後の景色がこれっていうのも、あれだな……。
もし次があるとしたら、俺は…………、




そうして、俺は死んだ。
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