乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

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第1章 俺が乙ゲー転生ってマジですか?

06話 旅路

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あの星降る夜から、俺と母様との距離は近くなったと思う。
よく下らない話もするようになったし、俺から頼ることも多くなった。

『俺は母様に笑っていて欲しい』

『ずっと家族でいたい』

『この人を信じたい』

『俺のことを受け入れて欲しい』

今まで味わったことのない穏やかな日々のなかで、そう思うようになっていた。
俺は少しずつだが、確実に変わっていっているように思える。
その変化が良いことなのかは、まだ分からないけど。

俺は5歳を過ぎた頃に、簡単な回復魔法や生活魔法を使えることを話した。
回復魔法は光属性の魔法で使える人は限られるらしく、すごいと興奮気味に誉められた。
少し照れくさかった。
また、料理や掃除洗濯も俺が代わりにやるようになった。
ヨキナ婆さんや母様ばかりにやらせるのは、申し訳ない。
俺は前世独り暮らしだったので家事全般はマスターしているし、母様は正直少し不器用だ。
なので、俺の手伝いをとても喜んでくれたし、俺もそれが嬉しく思えた。





そして俺が6歳になった頃に、この町を出て別の町に行くことになった。
今年はまた2人で流星群を見られるかと楽しみにしていたが、母様がそう決めたのなら仕方がない。
何か理由があるのだろう。

「ヨキナさん今まで本当にありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

俺と母様は揃って頭を下げ、ヨキナ婆さんに別れの挨拶をした。

「……これから寂しくなるわね。でも元気で、たまに手紙をくれると嬉しいわ」

ヨキナ婆さんは少し涙腺を緩ませて、寂しそうに言った。
思えば、ヨキナ婆さんとも長い付き合いだ。
そう思うと少し寂しさを感じた。

「はい、落ち着いたら連絡します」

こうして俺達は、長く住んだ家を離れた。
家を出て、俺達はまず町外れの馬車が止まっている場所まで移動した。
移動は商人の荷馬車に途中まで、乗せてもらうことになっている。

「おはようごさいます。今日は宜しくお願いします」

母様はに商人に頭を下げた。

「いえいえ代金も頂いていますし、ついでのようなものですから。そちらはお子さんですか?」

商人は40代くらいのひょろりとした男だった。

「はい、そうです。リュートと言います」

「よろしくお願いします」

「礼儀正しい、賢そうな子ですね。フードは取らないのかな?」

俺はフードで顔を覆い隠していた。
その格好に疑問を持っただろう、商人が尋ねて来た。

「えぇ、この子は恥ずかしがりやで。肌も日の光に弱いので、フードを被せているんです」

「へぇ、そうなのかい。じゃあ荷台の方に乗ってください」

何とか誤魔化せたようだ。
俺達が荷台に乗ると、他にも8人程乗客がいた。
俺達は奥の方に座り出発を待った。

「ねぇ、リュー君。今度いく町は養蜂が有名なところなんだて。きっと美味しいお菓子がたくさんあるよ」

一緒に食べようね、と言って母様は目を輝かせた。
母様はかなりの甘党なので、甘いものには目がない。
此方が胸焼けするような甘いものも、ペロリと平らげてしまう。

「母様、甘いものばかりだと太りますよ?」

もう少し栄養に気を使った方がいいかもしれないと、俺は町についてからの献立を考えた。

「もおっ! リュー君ったらそんなこと言ってると、女の子にモテないわよ?」

俺がたしなめるとぷりぷりと拗ねた。
そんな子供みたいな姿に思わず、俺も笑みが溢れた。

「ごめんなさい、母様」

「罰として、次の町でリュー君がケーキを焼いてね!」

「はいはい、でも程々にしてくださいね」

こうやってすぐに了承してしまうあたり、俺も母様に甘い。
母様も俺に甘いので、お互い様かもしれないが。

「ふふっ♪ リュー君の作るものって、とっても美味しいのよね!」

どうやら母様の機嫌もなおったようだ。

「出発しますよ」

商人の声が聞こえ、馬車が動き始めた。

そうして俺達は6年過ごしたこの町を出た。


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