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第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
04話 腹黒<変態=残念でした。
しおりを挟む泣かずにすんだと思ったら今度は鼻血が止まらなくなったようで、母様が急いで魔法をかけた。
血はすぐ止まって、母様が残ったものをハンカチでぬぐった。
「レイ君大丈夫っ?」
「カミラさん……違います」
「えっ? 何が??」
「世界一ではありません。宇宙一ですっ!」
兄様は唐突に叫ぶ。
周りは兄様の奇行についていけない。
この人、頭大丈夫だろうか?
「だから世界一ではなく、宇宙で一番可愛いです!」
「そっ、そう」
母様と父様は驚いている。
俺も驚いてる。
俺はゲームの性格しか知らないが、クールな性格で通っていたはずだ。
まだ子供とはいえ、その片鱗はあったのだろう。
だから母様達は驚いているのだ。
それが今は見る影がない。
顔は真っ赤に染まり、息はひどく乱れている。
しかも俺に対して、だ。
変態だ。
腹黒ではなく、これではただの変態だ。
まだ9歳という年齢だからこそ許されるが、あと数年早く生まれていたらアウトになるだろう。
「僕の天使! 僕のお嫁さんになってください!」
周囲が呆然としていると、興奮が収まらぬのかプロポーズをしてきた。
「れっレイくん?! リュー君は弟だよ?! だか」
だから無理なのだと言おうとした母様の言葉を遮り続けて言った。
「問題有りません。幸い血縁はありませんし、年齢も釣りあっています。あっ心配しないで下さいます。勿論僕が婿にはいります!」
問題はそこじゃねーよ!
俺男だし!
俺の中であったレイアス・ウェルザックのイメージが音をたてて崩れ去った。
「いくら可愛いかろうがリュートは男だ。嫁になど絶対にやらん」
凍った空気の中で父様が正論を述べる。
流石です、父様。
「大丈夫です、法なら変えてみせます!」
父様の正論にも兄様は諦める気配がない。
……駄目だ、この子攻略キャラなのに残念すぎる。
「黙れ小僧、調子に乗るな。例え法が許そうが私が認めんっ!」
へ?
「くっ、一番の障害は義父上でしたか……」
ほ?
「当たり前だ。私を越えられもしないものに息子はやらん」
は?
なんか父様が娘を嫁にやることを拒む頑固親父で、兄様が嫁に貰いにきた好青年みたくなってるんだけど……。
そもそも俺、OKだしてないですけど?
というか断固拒否だよ。俺にそっちの趣向はない!
というか父様も親バカはいってない!?
父様、ゲームでは氷の宰相様とか呼ばれてた筈じゃ………?
キャラが台無しだよ!!
「ふふふっ、リュー君はまだ6歳なんだから早いですよ。すっかりレイ君とヴィンセント様はリュー君にメロメロねぇ」
「母様、そういう問題じゃないかと……」
母様は穏やかに微笑んでそう言った。
母様は天然だった……年齢の問題じゃない。
その前にもっと大きな問題がそこにあるよ、母様。
もうやだ何この混沌。
……誰かまともな人はいないのか?
居たなら、早くこの意味の分からない茶番を止めて欲しい。
「それくらいにしてくださいませ。旦那様、レイアス様。此方の可愛いらしい坊っちゃんが困っておいでですよ?」
そんな俺の祈りが通じたのか、初老の燕尾服を来た男性が颯爽と現れた。
「セルバか、今戻ったぞ。」
「はい、お帰りなさいませ。奥方様を無事迎えに行かれたようでよう御座いました」
男性は母様を見て笑顔で言った。
その表情から母様の帰宅を、心から喜んでいるようだ。
「ところで……此方の可愛い坊っちゃんは何方ですかな?」
そして俺の姿見て父様に問うた。
「あぁ、私とカミラの子供だ。名はリュートと言う。この子も今日から此方で暮らす、準備を頼む」
「なんとっ! これは大旦那様方にも直ぐに報告致しなければなりませんね!」
「いい、私から直接伝えるつもりだ」
慌てて何処かに行こうとする男性を、父様が止める。
父様に俺以外の子供がいないとなると、唯一の直系になる。
公爵家全体としては、喜ぶべき事なのだろう。
「そうですか。これは何と喜ばしいことか! 大旦那様方も大変お喜びになります」
この男性も俺の存在に大層喜んでいるようで、俺達を見る目はとても優しい。
「セルバ、妻達を頼む。私はこれから王宮に上がる。」
「王宮へで御座いますか? 実に7年振りの再会です。ゆっくりしていけばいいのでは?」
「そうしたいのは山々だが……この子の眼を見てみろ。魔眼持ちだ。早急に王への報告が必要だろう」
「なんとこれはっ!?」
父様に言われ俺の瞳の魔法陣を覗き込むと驚愕の声を上げる。
「……確かに王への報告が必要で御座いますな。……分かりました。奥方様やお子様はお任せ下さい」
「頼んだぞセルバ」
「いってらっしゃいませ」
父様はそう告げるとまた馬車に乗り込んだ。
「「「いってらっしゃいませ」」」
俺と母様、兄様も馬車を見送った。
するとセルバと呼ばれた男性が俺の足下に膝まづいた。
「リュート様先程は挨拶も無しに申し訳御座いません。私は当家の執事をつとめておりますセルバと申します。どうぞ宜しくお願い致します」
「はい、宜しくお願いします」
俺も挨拶を返す。
やっぱり執事なのか、有能そうだな。
「では離れの方にご案内致しますね」
「よろしくお願いします、セルバさん」
そして俺は右手を母様、左手を何故か兄様に繋がれて屋敷に案内されたのであった。
解せぬ。
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