乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?

皐月乃 彩月

文字の大きさ
16 / 159
第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢

06話 やっぱり真っ黒でした。

しおりを挟む
 
俺達はセルバさんの案内で、本邸ではなく離れに案内された。
離れといってもかなり立派だ。
外から見ただけでも、部屋は20部屋はあるだろう。
庭も広く様々種類の花が揃えられている。

「長旅でお疲れでしょう。奥方様の部屋は昔のまま用意しております。休まれますか?」

セルバさんが俺達を気遣ってそう尋ねる。

「私は大丈夫だけど……リュー君はお昼寝した方がいいかしら?」

「僕は大丈夫です。馬車で沢山寝ましたから」

子供体力なのでお昼寝は必須だが、馬車で寝ていたので目が冴えている。

屋敷を探索でもするか?……いや、そうだ

「セルバさん、厨房をお借りしてもよろしいですか?」

「厨房ですか? 何か欲しいものが御座いましたら、私が用意致しますよ」

「いえ、ケーキを焼こうと思ったのでお借りしたいのです」

町を出る前に、母様にケーキを焼く約束をしていた。
折角だし、今から作ろう。
公爵家ともなれば設備や材料も揃っている筈だから、沢山種類を作れそうだ。

「ケーキなら料理長に言って作らせますので、少しお待ちいただけたら」

「ケーキ! リュー君のケーキが食べれるっ!!」

セルバの話を遮り母様が喜びの声を上げる。

母様、食い意地張りすぎです。
しかしこれで、セルバさんも断りづらくなっただろう。

「……料理長の監督のもとでなら……大丈夫でしょう」

セルバさんは不安そうだ。
普通6歳時に火を任せる人はそうそういない。

「ではリュート様は私が見ていますので、奥方様はそれまで体を休めていて下さい。レイアス様もそろそろ家庭教師の先生が来る時間ですので本邸の方へお戻り下さい」

「じゃぁ、セルバさんリュー君の事お願いします」

「宜しくお願いします」

母様は屋敷にいたメイドに連れられ廊下を奥へ向かっていった。
俺もセルバさんに厨房まで案内して貰おうとした。

「…………………………………………兄様、手を離してください」

が、兄様が俺の手を離す気配がない。

「ごほんっ、レイアス様家庭教師の先生がそろそろいらっしゃいます」

「嫌だ。……まだ此処にいたい」

セルバさんが再度促すも、兄様は拒否した。

「レイアス様……」

「たまにはいいじゃないか。……僕だってたまには遊びたい」

確かにまだ9歳の子供が勉強漬けも可哀想だな。
余り我が儘とか言わなそうなタイプだし……さっきはあれだったが。
もしかしたら、普段抑圧されてるからこそおかしくなったのかもしれない。

……(今後の為にも)少し位、息抜き出来ないのかな?

「はぁ……先生の方には私からレイアス様が体調を崩されたと連絡しておきます。今日だけですよ?」

セルバさんも俺と同じ風に思ったのか取りなしてくれるようだ。

「ありがとうセルバッ!」

兄様はすごく嬉しそうだ。
先程のやり取りで変態のイメージがついてしまったが流石はメイン攻略キャラの1人。
笑顔が眩しい。
やはり、さっきのは疲れから来る異常だったのだ。

「じゃあ行こう僕の天使!! 案内するよっ!」

兄様が俺の手を引きかけていく。
兄様はまだまだお疲れのようだ。
変な妄想に囚われている。

「兄様、僕は天使じゃありませんよっ!」

というか、そもそもお前のではない。
強いて言うなら、母様のだ。

「ははっ、天使だよ。リューは僕の天使だ!」

だからお前のじゃないってば。
……もういいや、スルーで。

「こっちだよリュー」

「……はいはい」

俺は引っ張られるがままついていく。
何事も諦めが大事である。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆







兄様に案内された厨房はかなり大きく立派であった。
セルバさんも俺達から少し遅れて着いてきた。

「ここだよリュー」

俺に蕩けるような笑みを浮かべる攻略キャラ。
これ……本当に大丈夫だよね?
疲れてるだけ、だよね?
ヒロインに出会ったらそっちにいくよね?

……何だか激しく心配になってきた。

「僕も手伝っていいかい?」

「いえ、大丈夫です。案内して貰ってありがとうございます」

手伝いを申し出て貰ったが、今まで包丁もろくに握った事がないようなお坊ちゃんだ。
申し出は有難いが、俺が1人でやる方が早い。
ここは丁重に断らせてもらおう。

「ううん、僕が手伝いたいんだ」

「大丈夫です、1人で作る方が早いので」

果物とか洗剤で洗いそうだし……それにちょっと嫌な予感もする。

「リューと一緒にいたいんだ」

あれ?しつこくね?
てか顔近いし。

「いえ「駄目かな?」」

ちょ

「い「いいよね?(ニコッ)」」

……………。

「……えぇ、お願いします。」

NOを言わせない微笑みだね。
さっきの純真さはどこへいったの?
お腹黒いよ、真っ黒だよ。

「では始めに小麦粉を……」

俺は溜め息をつき厨房に入る。
こうして、俺達は二人仲良く?ケーキ作りを開始したのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー

みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。 魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。 人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。 そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。 物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

処理中です...