103 / 159
第5章 腐った白百合
10話 腐れ王女の腐った妄想
しおりを挟む「…………はぁー、私今大事な何かを失っちゃった気がするよ」
王女は酷く疲れた顔で溜め息を溢した。
先程までの元気は何処にいったのやら。
「気のせいですよ」
俺はニコリと笑った。
だって、互いにメリットがあるクリーンな取り引きだもん。
皆幸せだもの。
「……そうだ。さっきは聞かなかったけど、リュート君って、あのウェルザックなの? てことは、ヴインセント様の子供で、レイアス様の義弟?」
王女はそれ以上何か言うのを諦め、話題を変えてきた。
ゲームを知っている者からすると気になる所なのだろう。
「はい。ついでに不本意ながら、悪役令嬢リリス・ウェルザックの義弟でもあります」
「マジでっ!? リリスが姉って……うわぁー」
俺が更に情報を付け足してやると、王女がガチで憐れみの目を向けてきた。
リリスの事は覚えているようだ。
前世散々煮え湯を飲まされたので、その性格の悪さは覚えているらしい。
「安心してください。ユーリア王女殿下も今日から此方側ですから。一応、スペックの高い美少女(笑)設定なんですから、きっとお会いすればすぐに妬まれることでしょう」
今までは他に擦り付ける奴がいなかったが、これからは存分に盾になって貰うとしよう。
……勿論約束通り、命に関わるようなのは俺がちゃんと助けるよ?
「いやーぁっっ!! これ以上変なフラグ立てたくないよっ!! それに(笑)は余計だよ!」
王女は絶叫しながらも、俺にそう文句を言ってきた。
元気が戻ってきたようだ。
「失礼しました。美少女(腐)でしたね」
自分で言ったのだが、(腐)だと腐女子って言うよりは、何かゾンビみたいな響きだ。
「…………うぅ、私王女なのに」
シクシクと王女は泣き真似をしながらも、俺を恨ましげな眼で見やる。
「言われたくなければ、殿下も此方の世界では自重なさってくださいね? 王女が腐ってるなんて、とてもじゃないけど笑えませんから」
前世の発言を此方でもやったら、国の恥でしかない。
結婚相手も、まともなのはまず近寄ってこない。
自分の将来を真面目に考えるのであれば避けるべきだ。
「外に出れるのはいいけど……憂鬱だなぁ。攻略対象者には、ヤンデレもいるのに」
「……ヤンデレって、ユーリの事ですよね? それなら大丈夫ですよ。一応、そのフラグはボキッと折ってますから」
「え? どういうこと?」
俺は安心させる為に、これまでの事を話した。
◆□◆□説明中□◆□◆
「お、うぉおー!!?! キタコレ! キタ━(゜∀゜)━!(゜∀゜ 三 ゜∀゜)」
そして、俺の話を聞き終えた王女は唐突に叫びだした。
「煩いですよ! 外に聞こえます!」
俺は叫ぶ王女を慌てて止めた。
「これが叫ばずにいられるか! だって、リュート君それ攻略しちゃってない?? ヒロインのポジ完全に喰ってるでしょ!?」
俺の制止をものともせず、王女の興奮は止まらない。
「いや、ヤンデレフラグ折っただけだし、ポジションまでは喰ってないし!! 友情だからっ!」
仲はいいが、あくまで友人の範囲内だ。
セーフだ、セーフ!!
しかし、俺の動揺とは関係なしに、王女の話はここでは終わらなかった。
「ふふフフ腐腐腐腐っ!! まさか、悪役令嬢の乙ゲー転生ものだと思ってたけど、BL小説によくある“お、俺がいつの間にかヒロインのポジに!?”なパターンだったとはっ!! 」
「…………………」
「腐腐腐っ! ありがとう神様!! これは私に、是非間近で生BLを観察しろって言う神様からの啓示ね! ぐ腐腐腐っ!! 最高だわ! 美少年の総────ぎゃっ!!? い、いひゃい゛っ!!」
「…………………………」
腐王女がまた腐ったあり得ない妄想を垂れ流しにしていたので、聞くに堪えなくて止めた。
──アイアンクローで。
「王女殿下……引き篭もり過ぎて頭おかしくなったんですか? あぁ、前世からでしたね。…………でも悪役令嬢転生ものですか……とても良い案ですね。殿下がお望みなら、再現して差し上げましょうか?」
俺は今自分で自覚出来る程のドス黒いオーラを纏って、腐王女に捲し立てて言った。
王女相手に、不敬だなんて知るか。
絶対、絞める。
「いっしゅ、しゅみません!! いひゃひゃぃ゛はじゅしてください!!」
メリメリと食い込む俺の指に、王女が悲鳴を上げる。
……暫く、このままでもいいかな?
……うん、許されると思うんだ。
すぐに俺の指から力が抜ける事はなかったのであった。
11
あなたにおすすめの小説
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)
水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――
乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】!
★★
乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ!
★★
この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる