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第6章 憤怒の憧憬
04話 学園内の絶対王政
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波乱の初日を迎えた次の日、午前の授業を終えた俺達4人は昼食を食べる為に食堂へ移動していた。
勿論、アシュレイとはあれから話していない。
目線すら合わないことから、向こうは徹底的に避ける気でいるのだろう。
……でも、それだと困るんだよね。
何とかして、兄様との仲を取り持たないと。
仲良くとはいかないまでも、普通に挨拶をするくらいにはしたいところだ。
「今日は何を食べましょうか? 美味しいと良いですね」
周りに多く人がいるので、ユリアが王女モードで話しかけてきた。
「特に兄様から聞いたことはありませんが……それなりのものは出るのでは?」
王族もいることだし。
前世で通っていた学校の学食は、正直あまり美味しくなかった。
メニューは少ないわ、味は冷凍食品のような味だわでコンビニで買った方がましなくらいだった。
何より料理が配膳されるのが遅い為、短い休み時間だと食べる時間が少なくて大変だった思い出しかない。
「高校の時よりましだといいけど」
ユリアも同じことを思ったのか、日本語でぼそりと呟いた。
……うちの学食、人気なかったよな。
メニューも学生受けするものに変えればよかったのに、ジジババ向けの様なメニューばかりだった。
それで配膳も遅いのだから人が来るはずもなく、俺達の高校では弁当がほとんどだった。
「口に合わなかったら、弁当を持ち込めばいいのでは?」
弁当箱とか、魔石を埋め込んで魔導具化すれば、出来立てのまま持ち運べそうだ。
今度、作ってみるか……。
「え!? これはリュート君が作ってくれるパターン? 愛妻弁当?」
「何が愛妻弁当だ!……たく、今は他に人いるんだから抑えろよ」
小声で話してはいるが、これだけ注目されているんだ。
変な噂をたてられたりしたら堪らない。
「りょ!」
……本当に、大丈夫なのか?
頭はそう悪いわけではない筈なのに、この王女を見ていると心配でならない。
「リュート様、開けます」
そうこうしているうちに、食堂前に辿り着いた。
スールが食堂の扉を開ける為に、扉に手をかけた。
────瞬間。
生徒達の声が飛び交う、賑やかな食堂内が目に入った。
席に座る生徒達を見ると、どうやら席は高位貴族と下位貴族で、おおよそ分けられているようだった。
恐らく、暗黙の了解でもあるのだろう。
奥の綺羅びやかな席には、高位貴族しか座っていない。
さてと、空いてる席は……────
「リュー、此方だよ!」
名前を呼ばれ、視線を少し上にあげるとそこは2階席だった。
先程の高位貴族専用の席とは、比べ物にならない程に豪華だ。
王族専用なのかもしれない。
「兄様、どうしたんですか?」
俺達は階段を上り、2階席に用意された部屋に入った。
先程はよく見えなかったが、近くで見ると予想以上だった。
金が至るところに使われており、その金のかかりようが窺える。
大きなテーブルには兄様とオズ様が席についており、その従者達が食事の準備を整えている。
「折角だから、一緒に食べようと思ってね」
「あぁ。ユーリアやリュート達も席につけ。休み時間がおわってしまう」
「「はい」」
兄様とオズ様に促され、断る事など出来る筈もなく俺達は席に着いた。
「学校はどう? 上手くやっていけそうかな?」
兄様の隣の席につくと、兄様が俺に学校での様子を聞いてきた。
「ユーリアも、友人は出来そうか?」
オズ様もユリアが心配なのか、隣に座らせたユリアに学校での様子を聞いていた。
「「…………まぁ、それなりに」」
言えない。
初日から、アシュレイ・スタッガルドと少し揉めたなんて。
そして、ユリアに至っては、人見知りなのか俺達以外とは余り話そうとしない。
むしろ身分に寄ってくる輩を、避けているようだった。
なので、当然新しい友人などいない。
2人して、目をそらしてしまった。
「ん?何だか要領を得ないな。もしかして何かやらかしたのか?」
「もし、リュー達にちょっかいをかけてくるようなら、僕等から相手に言おうか?」
オズ様と兄様が、矢継ぎ早に言った。
「いや、そんな人いませんよ……」
俺は否定した。
もしここで肯定しようものなら、本当にクラスメイト達に圧力をかけそうだ。
学園は基本、身分によって差別しない事を公言している。
しかし、ソレは身分で不当に貶められることがないというだけであり、明確な区別は存在するのだ。
そして、今俺の前にいる2人は間違いなく、この学園の頂点。
その2人に圧力なんてかけられた日には、学校を辞めてしまうかもしれない。
そんなことになったら、後味がすこぶる悪い。
だから、絶対に阻止しなくては。
「そう? ならいいけど」
兄様は笑顔で頷いた。
よかった……分かってくれたか。
「何かあったら言えよ。お前達に何かあったら、俺達が容赦しないからな」
「うん、五体満足でいられると思わない方がいいね」
ほっとしたのも束の間。
学園の頂点である2人が、爆弾発言を落とした。
それも、明らかに食堂内の生徒達に向かって。
先程まで此方に聞き耳をたてていた生徒達の顔が一瞬で青くなる。
活気に溢れていた食堂内が、一気にお通夜みたいだ。
家の兄様達が、すまない……
クラスメイト達の手が震えているのを見ながら、俺は心の中で謝った。
明日から、腫れ物扱い決定だな……。
媚びてキャーキャーと纏わりつかれるのも面倒だけど、何もしてないのに過剰にビビられるのも嫌だな。
俺が食堂内をそうして見渡していると、燃え盛る赤色を見つけた。
アシュレイ・スタッガルド……。
アシュレイは1人で、高位貴族の席に座っていた。
その眼は入学式と同様に、兄様から視線を逸らすことなく睨み付けていた。
……道のりは長そうだな。
俺は1人溜め息をついたのであった。
勿論、アシュレイとはあれから話していない。
目線すら合わないことから、向こうは徹底的に避ける気でいるのだろう。
……でも、それだと困るんだよね。
何とかして、兄様との仲を取り持たないと。
仲良くとはいかないまでも、普通に挨拶をするくらいにはしたいところだ。
「今日は何を食べましょうか? 美味しいと良いですね」
周りに多く人がいるので、ユリアが王女モードで話しかけてきた。
「特に兄様から聞いたことはありませんが……それなりのものは出るのでは?」
王族もいることだし。
前世で通っていた学校の学食は、正直あまり美味しくなかった。
メニューは少ないわ、味は冷凍食品のような味だわでコンビニで買った方がましなくらいだった。
何より料理が配膳されるのが遅い為、短い休み時間だと食べる時間が少なくて大変だった思い出しかない。
「高校の時よりましだといいけど」
ユリアも同じことを思ったのか、日本語でぼそりと呟いた。
……うちの学食、人気なかったよな。
メニューも学生受けするものに変えればよかったのに、ジジババ向けの様なメニューばかりだった。
それで配膳も遅いのだから人が来るはずもなく、俺達の高校では弁当がほとんどだった。
「口に合わなかったら、弁当を持ち込めばいいのでは?」
弁当箱とか、魔石を埋め込んで魔導具化すれば、出来立てのまま持ち運べそうだ。
今度、作ってみるか……。
「え!? これはリュート君が作ってくれるパターン? 愛妻弁当?」
「何が愛妻弁当だ!……たく、今は他に人いるんだから抑えろよ」
小声で話してはいるが、これだけ注目されているんだ。
変な噂をたてられたりしたら堪らない。
「りょ!」
……本当に、大丈夫なのか?
頭はそう悪いわけではない筈なのに、この王女を見ていると心配でならない。
「リュート様、開けます」
そうこうしているうちに、食堂前に辿り着いた。
スールが食堂の扉を開ける為に、扉に手をかけた。
────瞬間。
生徒達の声が飛び交う、賑やかな食堂内が目に入った。
席に座る生徒達を見ると、どうやら席は高位貴族と下位貴族で、おおよそ分けられているようだった。
恐らく、暗黙の了解でもあるのだろう。
奥の綺羅びやかな席には、高位貴族しか座っていない。
さてと、空いてる席は……────
「リュー、此方だよ!」
名前を呼ばれ、視線を少し上にあげるとそこは2階席だった。
先程の高位貴族専用の席とは、比べ物にならない程に豪華だ。
王族専用なのかもしれない。
「兄様、どうしたんですか?」
俺達は階段を上り、2階席に用意された部屋に入った。
先程はよく見えなかったが、近くで見ると予想以上だった。
金が至るところに使われており、その金のかかりようが窺える。
大きなテーブルには兄様とオズ様が席についており、その従者達が食事の準備を整えている。
「折角だから、一緒に食べようと思ってね」
「あぁ。ユーリアやリュート達も席につけ。休み時間がおわってしまう」
「「はい」」
兄様とオズ様に促され、断る事など出来る筈もなく俺達は席に着いた。
「学校はどう? 上手くやっていけそうかな?」
兄様の隣の席につくと、兄様が俺に学校での様子を聞いてきた。
「ユーリアも、友人は出来そうか?」
オズ様もユリアが心配なのか、隣に座らせたユリアに学校での様子を聞いていた。
「「…………まぁ、それなりに」」
言えない。
初日から、アシュレイ・スタッガルドと少し揉めたなんて。
そして、ユリアに至っては、人見知りなのか俺達以外とは余り話そうとしない。
むしろ身分に寄ってくる輩を、避けているようだった。
なので、当然新しい友人などいない。
2人して、目をそらしてしまった。
「ん?何だか要領を得ないな。もしかして何かやらかしたのか?」
「もし、リュー達にちょっかいをかけてくるようなら、僕等から相手に言おうか?」
オズ様と兄様が、矢継ぎ早に言った。
「いや、そんな人いませんよ……」
俺は否定した。
もしここで肯定しようものなら、本当にクラスメイト達に圧力をかけそうだ。
学園は基本、身分によって差別しない事を公言している。
しかし、ソレは身分で不当に貶められることがないというだけであり、明確な区別は存在するのだ。
そして、今俺の前にいる2人は間違いなく、この学園の頂点。
その2人に圧力なんてかけられた日には、学校を辞めてしまうかもしれない。
そんなことになったら、後味がすこぶる悪い。
だから、絶対に阻止しなくては。
「そう? ならいいけど」
兄様は笑顔で頷いた。
よかった……分かってくれたか。
「何かあったら言えよ。お前達に何かあったら、俺達が容赦しないからな」
「うん、五体満足でいられると思わない方がいいね」
ほっとしたのも束の間。
学園の頂点である2人が、爆弾発言を落とした。
それも、明らかに食堂内の生徒達に向かって。
先程まで此方に聞き耳をたてていた生徒達の顔が一瞬で青くなる。
活気に溢れていた食堂内が、一気にお通夜みたいだ。
家の兄様達が、すまない……
クラスメイト達の手が震えているのを見ながら、俺は心の中で謝った。
明日から、腫れ物扱い決定だな……。
媚びてキャーキャーと纏わりつかれるのも面倒だけど、何もしてないのに過剰にビビられるのも嫌だな。
俺が食堂内をそうして見渡していると、燃え盛る赤色を見つけた。
アシュレイ・スタッガルド……。
アシュレイは1人で、高位貴族の席に座っていた。
その眼は入学式と同様に、兄様から視線を逸らすことなく睨み付けていた。
……道のりは長そうだな。
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