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第6章 憤怒の憧憬
20話 ほうれんそう、コレ大事
しおりを挟む「おはよう、リュート君! 今日も相変わらずの美少年だねっ!!」
昼食会を行ってから数日、ユリアの機嫌は異様に良い。
ロゼアンナ・ディールとは、中々上手くいっているようだ。
その影響で常に笑顔を振り撒き、周囲の男子生徒達が頬を赤く染めることもしばしば見られた。
……本当に、顔が良いと得だな。
中身が腐ってても、この扱いだし……。
「おはようございます、ユーリア殿下。殿下も相変わらずお綺麗ですね(外見だけ)」
俺は適当に愛想笑いを浮かべながら、嫌味を交ぜて挨拶を返した。
俺のユリアへの対応は、日毎に雑になっていってる。
「ちょっと、最近私に対する態度が冷たくない!? 前々から時々冷たかったけどさ!」
俺はここ最近事ある毎にユリアの惚気?話を、散々聞かされてきた。
お陰でほぼ初対面に等しいロゼアンナ・ディールのプロフィールが、すっかり頭に入ってしまったくらいだ。
俺が取り持った仲だが、そのせいで幸せそうな腐王女を見るとイラっとする。
「いえ、そんな事はありませんよ。朝っぱらからテンション高くてウザいとか……全然思っていませんよ?」
あんなに2人が上手くいくよう願っていたのに、この苛つきは何なんだろう……?
「思ってるじゃん! 少しは私の幸せを喜んでよ!」
腐王女が俺の隠しきれていない本音に抗議をいれてきた。
しかし文句は言うものの、特に気分を害した様子はなく、むしろニコニコと笑顔さえ浮かべている。
余程、女友達の存在が嬉しかったと見える。
「────そうか、俺は腐王女だけ幸せに入り浸ってるのが気に入らないのか」
その答えは胸にストンと落ちて、俺を納得させた。
俺はフラグ回避やら何やらで苦労しているのに、腐王女が他力本願で楽々幸福に入り浸ってるのが納得できない。
要するに、腐王女はもっと世間の荒波に揉まれて苦労すればいいと思う。
「もっとヒドイよっ!! 私は不幸がお似合いってことなのっ!?」
別に腐王女自身の力で全て解決していたら、そうは思わなかったのかもしれない。
けれど、腐王女は俺に迷惑をかけまくるは、俺の侍女を腐らせるは、周りを腐らせようとするは……やっぱり、自力で作ったとしてもイラつくな。
「……腐ってますから」
不幸というより、残念なのが似合うと思う。
「腐女子にも幸せになる権利はあるからね!!」
「……ソーデスネ」
腐王女以外にはあると思うよ?
「ちょっと、リュート君!?」
俺は一応頷くと、腐王女に背を向けて教室へと向かった。
これ以上話してても、埒があかないだろう。
あーあ、ロゼアンナ・ディールに本性バレて、腐王女に鉄拳喰らわせてくれないかなー。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おい、聞いたか?」
「あぁ、来月の郊外実習に向けて、軍から臨時で教官を呼ぶらしいな」
「誰来んだろー! 楽しみだな!!」
授業が始まる5分前、クラスメイト達は限られた自由な時間を思い思いに過ごしていた。
「……教官?」
そんな喧騒の中、気になる話をしている男子生徒達に目をやる。
「どうしたの? リュート君」
「いえ……臨時教官が来るようですが、僕は初耳でしたので……」
ユリアが不思議そうに、俺の視線を辿って問いかける。
「あぁ、らしいね。現役の騎士様を見れるって、さっき女の子達も盛り上がってたよ」
「……ユーリア殿下は、その話聞いてました? 僕には報告が上がってきてないんですが……」
俺が気になったのはそこだ。
軍から現役の騎士が派遣されるのは、別にあり得ない話ではない。
……だけど、一応なりと王女の護衛を任されている俺に話が来ないのはおかしくないか?
「うん、急な話だったみたいでね。一昨日くらいに、お父様にリュート君にも伝えとくように言われたよ」
なんて事のないように、さらりと腐王女が俺の疑問に答えた。
……お前のせいかよ。
原因は腐王女だった。
「…………殿下? 僕達、毎日会ってますよね?」
原因が分かって、俺の声のトーンも自然と下がる。
「うん、リュート君は私の一番の友達だからね!」
腐王女は親指を立て、凄くいい笑顔で言った。
「……もっと、早くに話す機会がいくらでもありましたよね?」
「…………てへっ」
腐王女はここにきて漸く俺の言いたい事が分かったのか、舌をペロリと出して誤魔化しにかかってきた。
「…………はぁー、後でお説教ですね」
「うぅ……誰にだってうっかりはあるのにぃ」
俺がそう言うと、腐王女は頬をぷくっと膨らませて不満そうな表情を浮かべた。
お説教がお気に召さないらしい。
まぁ、でも確かに今回の事は腐王女だけが悪い訳じゃない。
腐王女の頭の出来が残念なのは、今に始まった事じゃないからな。
「……王様も、そろそろユリアのダメっぷりを察しないとな」
大事な話は、父様か俺に直接伝えて欲しい。
手紙でも全然問題ないのだから。
俺は周囲には気付かれないように、溜め息と共にボソリと呟いたのであった。
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