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しおりを挟む「……怒られると思ってた……。だって……ヨウちゃんにあれだけ、『りんぷんをつかうな』ってとめられてたから」
「なら、どうしてりんぷんをつかい切ってまで、オレを助けたんだよ?」
まぶたを押し上げて、琥珀色の瞳が、まっすぐにあたしを見る。
「あたしが……助けたかったの」
キッと眉毛をつりあげて、あたしはヨウちゃんの目を見返した。
「ヨウちゃんがいなくなるなんて、たえらんないって思ったの。ヨウちゃんには、どうしても元気で、ここにいてほしかったの」
「……綾……。オレだって……同じなんだぞ……」
ヨウちゃんの両手のひらがのびてきて、向かいからあたしの両手の甲を包み込んだ。
「綾には元気で笑っていてほしい。だから、おまえがりんぷんをつかうのを、ずっと、とめてきたんだ。
もう……やめような。もう……あんなふうに、命をおびやかされるような、ギリギリの戦闘。二度とするのやめような。
オレたちは英雄じゃない。討ち死になんかする必要ない。ただの、へいぼんな中学生でじゅうぶんだよ……」
「……うん」
硬い手のひらの熱が、あたしの手の甲をじんじんさせる。
「鵤さんがヤドリギに閉じ込められたとき、とうさんに会ったんだ」
「……え?」
ヨウちゃんが、口元を少しほころばせた。
「鵤さんは、とうさんから、オレへのメッセージを預かってた。そのメッセージの中で、オレ、とうさんに言われたよ。フェアリー・ドクターは継がなくてもいい、オレはオレの好きなように生きろって」
「……ヨウちゃんは……ヨウちゃんの好きなように……?」
「ああ。けど。好きなことしろって、急に言われてもな……」
ヨウちゃんはあたしの左手から手をはなして、自分の首後ろをさすった。
「ここ一年ほど、ずっと、書斎で文献あさったり、薬ばっかりつくってたから、ほかのことが見えてこなくてさ。
やることがなくなって、とまどって。また図書室で妖精系の本、さがしたりして。そしたら、卯月先輩につかまって、綾を不安がらせるし。なにやってんだって、話だよな……。
で、とりあえず、部活に入ることにした。綾……オレ、バスケ部に入ろうと思ってる……」
「……そっか。うん、ヨウちゃんらしくて、すごくいいよ。やっぱりヨウちゃんは、体動かしてるときが、一番カッコイイもん」
パッと、あたしの右手からも、ヨウちゃんの手がはなれた。
「あれ?」と思ったら、ヨウちゃんは、きょとんとあたしを見おろしてる。
「……ごめん、綾。もう一回、言って」
「え? なにが? ヨウちゃんらしくていいよって?」
「……じゃなくて……そのあと……。オレが……その、体動かしてるときがどうだとか……」
「えっと……。あ、『カッコイイ』?」
「うわ……」
ヨウちゃんは、自分の口を手のひらで隠した。
「綾っ! オレ、やるからっ! マジでやってやるからっ! バスケしまくって、大会の選手になってやるっ! そしたら綾、ぜったいに応援しに来いよっ!! 」
「う、うん。行く!」
あたしは、ぐっと両手のこぶしに力を込めた。
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