ナイショの妖精さん

くまの広珠

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3 ナイショの特訓

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「それでは、体育祭のリレー選手を決めます」


 学級委員の有香ちゃんが、黒板にカツカツと字を書いていく。

「赤」「青」「黄色」「緑」。


「うちの中学は生徒数が少ないので、学年も男女も混合リレーです。このクラスから選ばれる選手は各色につき、男女ひとりずつ。一年から三年まで同じ色でチームを組んで、合計六人で走ります。

そんなわけで、クラスメイトでも、色がちがうチームとは、敵同士です。それでは選手を、男子四人、女子四人選抜してください。立候補はどうぞ。推薦も受けつけます」


「あ~、ひとりはオレに、けってーね」


 有香ちゃんの横で、大岩が教卓にほおづえをつきながら、手をあげた。大岩は男子の学級委員。足はヨウちゃんの次に速いから、だれも文句を言わない。


「あと、葉児もけってーな。ほかにだれか、やりたい人~」


「ちょっと待て! なんで、オレまで決定なんだよっ!!」


 窓際の一番後ろの席で、ヨウちゃんが、ガタンと立ちあがった。


「そりゃ、オレがおまえと対戦したいからに決まってんだろ。今度こそ負けねぇかんな。で、女子で一番足が速いのはだれだっけ? 倉橋くらはしか~?」

「え~? わたし、出るの~? 髪の毛乱れるの、ヤだぁ」


 リンちゃん、ツインテールの髪を手ぐしで直してる。


「なに言ってんだよ、倉橋、いつもバスケ部で走りまくってんじゃん」

「部活は部活よ。体育祭はカレシも見に来るし~」

「だったら、なおさら、いいとこ見せるチャンスでしょ! 出てよ、リンっ!」

「永井さんも速いよね。どう? 学級委員として?」

「えっ!?  わたしっ!? 」

「そういや、誠もけっこう速かったよな? 五十メートル何秒?」

「う~んと。こないだの記録は、七秒ジャスト~」

「はえ~じゃん! 出ろよ」

「ちなみに、葉児のタイムは?」

「言わねぇ」

「こいつ、六秒六。オレ、六秒八なんだよ、くっそ~」

「大岩また、ひとりで勝手にライバル視かよ。いいかげんにしろ~」


 わいわいもりあがる教室。

 あたしは、廊下側の一番前の席で、ぼんやり上の空。

 きょうはぽかぽか陽気で、教室に太陽の光がさしこんできているし。お昼を食べたばっかりで、眠いんだもん。

 それに、あたしが運動オンチだってこと、クラスのみんなが知ってるし。

 みんなの「出ろ出ろ」コールにおされて、ヨウちゃんがため息をついた。


「わかったよ。出てやってもいいけど、ひとつ条件出していい? 綾も同じチームな」


「ほ、ほえっ!? 」


 あたし、思わずイスから立ちあがった。

 みんなの視線が、あたしの席に集中する。


「な、なんでっ!?  ヨウちゃん、なんであたしっ!? 」


「オレのカノジョだから」


「えええ~っ!?  なにその理由~っ!? 」


 だけどヨウちゃんは、冷めた目のまま、イスにふんぞり返って、腕を組んでる。


「葉児、うっぜ~。カップルのイチャつく口実かよ?」

「しかも和泉さんて、クラスで一番、走るの遅いじゃん」

「まぁ、勝手にすれば。和泉さんといっしょになって苦労するのは、同じチームになった先輩たちなんだし」

「つ~か、葉児! オレにそこまでハンデあたえるって、おまえ、オレのことなめてんだろっ  ちくしょ~。見てろよ、ぜったいに勝ってやるからな~っ!! 」


 大岩、ひとりで絶叫。


「はい。のこり二名。立候補ないなら、推薦して~」


 有香ちゃんが、黒板の「黄色」の下に、ヨウちゃんの名前とあたしの名前を書いた。


「待って、有香ちゃんっ! あたし、やるなんてまだ、一言もっ!」

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