18 / 646
2 妖精のお医者さん
13
しおりを挟む
坂はどんどん急になる。
きのう山登りしたふくらはぎは、パンッパンでもう破裂寸前!
だけど、前を歩くムカつくほど長い足は、ぜんぜんスピードをゆるめない。
ペンション風の三角屋根の家が建つ高台を、よたよたとのぼっていくと、ひときわ白い横板壁の家が見えてきた。
高台の斜面に、海にせり出して建てられていて、崖に足場を組んで、下から家を支えている。
「ここ、オレんち」
ウソぉ……。
あたしはアホ毛をゆらして、立ちつくした。
屋根を見あげれば、風見鶏。門には、ピンクのバラのアーチ。
庭はモスグリーンの形のちがう葉っぱでいっぱい。稲っぽい葉っぱだったり。丸っこい葉っぱだったり。そのあちこちに、うす紫や白や水色の小花が咲いている。
め、メルヘン……絵本の世界に迷い込んじゃったみたい。
なのに、葉っぱの間の小路を歩くのは、中条。
うう……メルヘン台無しっ!
小路の先に、石レンガづくりのポーチが近づいてきた。
「つむじ風」っていう看板と、白いペンキで塗られたメニューの立て看板。白木のドアには、「本日定休日」っていうプレートがさがってる。
「あれ? 中条んちって、お店屋さん?」
「かあさんが最近、自宅カフェをはじめたんだ。ここらへんに植わってんのはみんな、店でつかうハーブな」
なにそれ、ズルイ。
自家栽培のハーブをつかったケーキやティーなんて、おいしいに決まってんじゃんっ!
「これで、中条の家でさえなければ……」
「どういう意味だよ」
ランドセルから家の鍵を出して。ドアを開けて、中条は中にあごをしゃくった。
「店のことは、学校のヤツらに話すなよ。家におしかけられると、めんどうだから」
「え~? なんで? お客さんがあつまったほうがいいんじゃないの?」
「うるさいのはイヤなんだよ。年がら年中キャアキャア言われてたら、気が休まらないだろ?」
「なによ。学校じゃ、女子たちにかこまれて、ニヤけてるくせに」
「そりゃ、うれしいに決まってんだろ、オトコなんだから。別格みたいで気分いいし」
なにこの人、サイアクっ!
「モテモテの自分」を人に見られるのは大好きだけど、みんなのいないとこじゃ、「ほっといてくれ」ってこと?
やっぱり、女子たちを、にぎやかしぐらいにしか思ってないじゃん。
「ヒドイ、中条。リンちゃんたちは、本気で中条のことが好きなのに……」
「……べつに。だれも、本気でオレのことを好きなわけじゃねぇだろ。アレだよ。ドラマとかマンガのオトコにオレを重ねあわせて。勝手に妄想ふくらませて、楽しんでるってヤツ」
……冷めてる……。
玄関にあがったら、廊下の横にお店の入り口があって、中には、脚がくるんと丸まったテーブルとイスが、たくさんならんでいた。
お店は休みで、だれもいない。
ふいごの置いてある薪ストーブ。壁からぶらさがるドライハーブ。海に面したテラスには、白いパラソルがアサガオの花みたいに開いてる。
「かあさんはまだ、買出し中だな」
中条はカウンターの中に入っていって、ごそごそなにかやってる。
「……ねぇ、女子たちの気持ちがわかっててさ。中条はむなしくならないの?」
「べつに。いいんじゃねぇの? 利害が一致してるんだから」
……それはそうなんだけど。
な~んか、もやもや。
きのう山登りしたふくらはぎは、パンッパンでもう破裂寸前!
だけど、前を歩くムカつくほど長い足は、ぜんぜんスピードをゆるめない。
ペンション風の三角屋根の家が建つ高台を、よたよたとのぼっていくと、ひときわ白い横板壁の家が見えてきた。
高台の斜面に、海にせり出して建てられていて、崖に足場を組んで、下から家を支えている。
「ここ、オレんち」
ウソぉ……。
あたしはアホ毛をゆらして、立ちつくした。
屋根を見あげれば、風見鶏。門には、ピンクのバラのアーチ。
庭はモスグリーンの形のちがう葉っぱでいっぱい。稲っぽい葉っぱだったり。丸っこい葉っぱだったり。そのあちこちに、うす紫や白や水色の小花が咲いている。
め、メルヘン……絵本の世界に迷い込んじゃったみたい。
なのに、葉っぱの間の小路を歩くのは、中条。
うう……メルヘン台無しっ!
小路の先に、石レンガづくりのポーチが近づいてきた。
「つむじ風」っていう看板と、白いペンキで塗られたメニューの立て看板。白木のドアには、「本日定休日」っていうプレートがさがってる。
「あれ? 中条んちって、お店屋さん?」
「かあさんが最近、自宅カフェをはじめたんだ。ここらへんに植わってんのはみんな、店でつかうハーブな」
なにそれ、ズルイ。
自家栽培のハーブをつかったケーキやティーなんて、おいしいに決まってんじゃんっ!
「これで、中条の家でさえなければ……」
「どういう意味だよ」
ランドセルから家の鍵を出して。ドアを開けて、中条は中にあごをしゃくった。
「店のことは、学校のヤツらに話すなよ。家におしかけられると、めんどうだから」
「え~? なんで? お客さんがあつまったほうがいいんじゃないの?」
「うるさいのはイヤなんだよ。年がら年中キャアキャア言われてたら、気が休まらないだろ?」
「なによ。学校じゃ、女子たちにかこまれて、ニヤけてるくせに」
「そりゃ、うれしいに決まってんだろ、オトコなんだから。別格みたいで気分いいし」
なにこの人、サイアクっ!
「モテモテの自分」を人に見られるのは大好きだけど、みんなのいないとこじゃ、「ほっといてくれ」ってこと?
やっぱり、女子たちを、にぎやかしぐらいにしか思ってないじゃん。
「ヒドイ、中条。リンちゃんたちは、本気で中条のことが好きなのに……」
「……べつに。だれも、本気でオレのことを好きなわけじゃねぇだろ。アレだよ。ドラマとかマンガのオトコにオレを重ねあわせて。勝手に妄想ふくらませて、楽しんでるってヤツ」
……冷めてる……。
玄関にあがったら、廊下の横にお店の入り口があって、中には、脚がくるんと丸まったテーブルとイスが、たくさんならんでいた。
お店は休みで、だれもいない。
ふいごの置いてある薪ストーブ。壁からぶらさがるドライハーブ。海に面したテラスには、白いパラソルがアサガオの花みたいに開いてる。
「かあさんはまだ、買出し中だな」
中条はカウンターの中に入っていって、ごそごそなにかやってる。
「……ねぇ、女子たちの気持ちがわかっててさ。中条はむなしくならないの?」
「べつに。いいんじゃねぇの? 利害が一致してるんだから」
……それはそうなんだけど。
な~んか、もやもや。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで
猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。
※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。
※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。
※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。
※2026.1.5に完結しました! 修正中です。
にゃんとワンダフルDAYS
月芝
児童書・童話
仲のいい友達と遊んだ帰り道。
小学五年生の音苗和香は気になるクラスの男子と急接近したもので、ドキドキ。
頬を赤らめながら家へと向かっていたら、不意に胸が苦しくなって……
ついにはめまいがして、クラクラへたり込んでしまう。
で、気づいたときには、なぜだかネコの姿になっていた!
「にゃんにゃこれーっ!」
パニックを起こす和香、なのに母や祖母は「あらまぁ」「おやおや」
この異常事態を平然と受け入れていた。
ヒロインの身に起きた奇天烈な現象。
明かさられる一族の秘密。
御所さまなる存在。
猫になったり、動物たちと交流したり、妖しいアレに絡まれたり。
ときにはピンチにも見舞われ、あわやな場面も!
でもそんな和香の前に颯爽とあらわれるヒーロー。
白いシェパード――ホワイトナイトさまも登場したりして。
ひょんなことから人とネコ、二つの世界を行ったり来たり。
和香の周囲では様々な騒動が巻き起こる。
メルヘンチックだけれども現実はそう甘くない!?
少女のちょっと不思議な冒険譚、ここに開幕です。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
人災派遣のフレイムアップ
紫電改
経済・企業
貧乏大学生・亘理陽司の裏の顔は、異能で企業の厄介事を処理するエージェント。
武闘家美少女・七瀬真凛をアシスタントに危険なミッションに挑戦する!
立ち塞がるのはサイボーグ、陰陽師、ミュータント、武術の達人、吸血鬼……ライバル企業が雇ったエージェントたち。
現代社会の裏側で繰り広げられる、ルール無用の異能力バトル!
ミッションごとに1話完結形式、全7話
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる