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しおりを挟む一つ一つのあなには、それぞれ、何かが入っています。
服の入ったあながありました。
黄色いドレスに、キクの花のししゅうの着物。ひらひらのついた、あかちゃん用の、ぼうしもあります。
そのとなりのあなには、ぬいぐるみがたくさん入っていました。
うさぎさんにねこさん、くまさんのぬいぐるみ。どのぬいぐるみも、毛がごわごわしています。顔がつぶれたかんじのぬいぐるみもあります。
人形の入ったあなもありました。
ピンク色のとんがりぼうしをかぶった、ミルクのみ人形。黒いおかっぱ頭の日本人形。それに、おひなさまと、おだいりさま。
「きゃあっ!」
先のあなをのぞきこんだ、みのりちゃんが、もねにしがみつきました。
「わあっ!」
もねも、みのりちゃんにしがみつきました。
あなの中に入っていたのは、男の子でした。
もねたちよりは、少し小さいくらいです。ヤンキースのぼうしをかぶって、ひざをかかえています。
「あの、な、なにしてるの?」
もねは、男の子にたずねました。
男の子は、まぶしそうに、もねたちを見あげました。
それから、口をとがらせて言いました。
「おねえちゃんたちこそ、なにしてるの? 早く、あいてるあなに入りなよ」
「え?」
男の子は、ひざにだいたプラスチックケースをもちあげてみせました。
「ぼくのカメのイチローが、死んじゃったんだ。だから、イチローの家をもってきたんだ。おねえちゃんたちも、ホタルまつりのために、それ、もってきたんでしょ?」
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