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18 初デート
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彼が言うデートをするために、昨日の服屋でオススメしてもらったサロンへ向かう。化粧や髪のセットなど着ている服に合わせて貰い、ついでに周辺の観光名所などを教えてもらった。
(ちょっと時間かかっちゃったな)
サロンの人はみんな素敵ですよと褒めちぎってくれたが、自分の慣れない姿にソワソワしてしまう。
待ち合わせ場所まで行くと、髪を切ってガラリと雰囲気が変わったミハイルが、周囲の注目を一気に浴びながら待っていた。
愛する人を待ち焦がれるような彼の表情は、誰しもの心を射止めている。
(ちょっと近寄り難いな・・・)
遠くから人に紛れて眺めていると、ミハイルは私に気付き、早足で駆け寄ってくる。
「見ていたなら、声かけてよ」
「ごめん・・・髪切ったんだね」
「マールに気に入って貰いたくて・・・どうかな?」
ミハイルは照れながらも、私に見てもらうように顔を近づける。
目の前にいるのは、私の好きな小説に出てくる、理想の王子様の姿をした彼そのものだった。
キラキラと輝く目の前の王子様に見惚れてしまい、思わず息をのむ。
「に、似合ってるよ」
「・・・マールもすっごく綺麗だね」
愛おしそうに私を熱く見つめると、耳元に顔を寄せそっと囁く。
「誰にも見せたくない」
自分たちの世界に入ってしまい、気が付くと周りには人だかりが出来ていた。
「さあ、行こうか」
ミハイルは私の手を取ると、そこから抜け出すように歩き出した。
サロンでオススメして貰った、地元の特産品が買える賑やかな市場にやって来ていた。
ミハイルと楽しく話しながら屋台を色々と見ていると、カラフルな果実が刺さった串の屋台に目を惹かれる。
(これは異国の特産品かな、美味しそう・・・)
「気になる?買ってくるから、あそこで座って待っててね」
私の視線に気付くと、果実串を買いに並んでくれている。
少し離れた椅子に座り、ミハイルの後ろ姿に見惚れていると、突然視界が遮られ目の前に男が立つ。
「ここではあんまり見ない髪色だね、1人で何してるの?」
そういうと私の隣に腰掛ける。
「人を待ってるだけなんで」
私が立ち上がろうとすると、男に掴まれそうになる。
「じゃあ、待ッーーーー」
手を伸ばした男がいきなり、人形のように固まる。
遠くから果実串を手に持つミハイルが男に魔法を使ったみたいだ。私は慌てて彼に駆け寄る。
「彼女に声をかけた事を後悔するまで、このままゆっくり体内から凍っていくがいい」
「ちょっと、やり過ぎだよ!あのままだと死んじゃう・・・早く魔法を解いて!」
「さあ、数時間したら溶けるんじゃない?」
全く動じないミハイルに苛立つ。
国王陛下が用意してくれた旅行で問題を起こす訳には行かない。
周りに注目される前に人通りが少ない場所に彼を連れ込んだ。
「あそこまで、する必要はなかった!」
「マールに触れようとした。もっと苦しめてもよかったな」
さらに魔法をかけに行こうとする彼を全力で止める。
「待って!」
腕を掴まれたミハイルは素直に止まってくれた。
私の方へ振り向くと、無表情で言い放つ。
「やっぱりこんなに魅力的な君は、僕に閉じ込められるべきだ」
冗談なのか、本気なのかミハイルの雰囲気に身の危険を感じ、そのまま彼の手首を掴んで、人気の無い路地から抜け出すために歩き出す。
咄嗟に話題を変えることにした。
「さっ・・・さすが国王陛下からのプレゼントだね!こんな素敵な旅行初めてだよ。国王陛下は、私たちの結婚を祝福してくれてるのかな・・・」
何気ない会話のつもりだった。
「そうだね・・・君は国王陛下とあまり接する機会が無いから、伝えておくよ」
まだ抜け出せていない路地の間で、ピタリと足を止めるとミハイルは説明する。
「王族には代々魔力を持つ者はない。
魔力の魅力に気づき、魔力持ちと王族が結婚し子供が生まれるも、魔力のない子供しか生まれなかった。何度も何度も繰り返して、やっと魔力持ち同士しか魔力を持つ子供が産まれないことがわかったんだ。王族の血は絶やせない。だから王族は魔力を持つことを諦めたんだ。魔力持ちに横柄なのは、ないものねだりなんだろうね。僕たち魔力持ちがいなければ、まともな生活が送れないことに嫉妬した国王は、この結婚に自分が実現できない理想を押し付けているんだ」
「僕はエソーで一番の魔力持ちとして生まれ、昔から王宮で働くために育て上げられた。だけど、この国のことを学ぶうちに、魔力持ちの扱いにあまり好ましく思えなくてね。実際にこの国に貢献すればするほど、余計に嫌になった」
彼の表情が一気に冷たくなった。
「王族が使用する魔力で出来たものは、献上する前に全て僕が目を通すことになっている。こっそり僕が確認した印として、少し僕の魔力を吹き込んでいるんだよ」
「僕がその魔力を全て消したらどうなると思う?」
なんの悪びれもなく笑う彼に、恐怖で体が竦む。
「この国に務めてから、君と結婚できることしか感謝していない」
「でも...」
黒いオーラを纏うかのように光のない目が笑う。
「もし、国王の気が変わって僕達の結婚に手を出すなら、迷わず消すね」
「たとえ国を滅ぼしても、僕はもう君を手離さないけど」
(・・・この人は、なに・・・言ってるの)
彼の言っていることに鳥肌が立ち、理解出来なかった。
「まるで僕を怪物みたいに見る君の顔も・・・とっても魅力的だね」
うっとりと私の顔を眺める。その顔が綺麗に輝き、余計に恐怖に震えた。
目の前にいる彼のドロドロとした支配欲の塊に飲み込まれそうになり、無意識に後ずさると背中が壁にぶつかる。
もう話し終わったという顔で、気にせずミハイルは上機嫌に果実串を1口食べると
恐怖に固まる私にゆっくりと近付く。
逃さないとばかりに顎を掴まれ、果実串を口元に差し出した。
グッ
「美味しいよ、食べて」
ギラギラと光る紫の瞳にじっと見下ろされたままかぶりつく。
ーーカプッ
口の中に広がる果実の味は分からず、甘い毒を飲み干すように、果実を飲み込んだ。
ゴクっ...り
口の横から、飲み込めず溢れた果汁が垂れる。
ぞくっとするほど艶かしい目線で果汁が垂れているのを見られていると、顎を掴んだままの彼に顔を寄せられ、舐め取られる。
果汁をすくい上げる彼の熱い舌が私の唇の端に触れた。
じゅる......っちゅ
「甘いね」
満足したのか、私の手に触れると指を絡めてぎゅっと握る。
そのまま手を引かれ、明るい場所に出た。
(ちょっと時間かかっちゃったな)
サロンの人はみんな素敵ですよと褒めちぎってくれたが、自分の慣れない姿にソワソワしてしまう。
待ち合わせ場所まで行くと、髪を切ってガラリと雰囲気が変わったミハイルが、周囲の注目を一気に浴びながら待っていた。
愛する人を待ち焦がれるような彼の表情は、誰しもの心を射止めている。
(ちょっと近寄り難いな・・・)
遠くから人に紛れて眺めていると、ミハイルは私に気付き、早足で駆け寄ってくる。
「見ていたなら、声かけてよ」
「ごめん・・・髪切ったんだね」
「マールに気に入って貰いたくて・・・どうかな?」
ミハイルは照れながらも、私に見てもらうように顔を近づける。
目の前にいるのは、私の好きな小説に出てくる、理想の王子様の姿をした彼そのものだった。
キラキラと輝く目の前の王子様に見惚れてしまい、思わず息をのむ。
「に、似合ってるよ」
「・・・マールもすっごく綺麗だね」
愛おしそうに私を熱く見つめると、耳元に顔を寄せそっと囁く。
「誰にも見せたくない」
自分たちの世界に入ってしまい、気が付くと周りには人だかりが出来ていた。
「さあ、行こうか」
ミハイルは私の手を取ると、そこから抜け出すように歩き出した。
サロンでオススメして貰った、地元の特産品が買える賑やかな市場にやって来ていた。
ミハイルと楽しく話しながら屋台を色々と見ていると、カラフルな果実が刺さった串の屋台に目を惹かれる。
(これは異国の特産品かな、美味しそう・・・)
「気になる?買ってくるから、あそこで座って待っててね」
私の視線に気付くと、果実串を買いに並んでくれている。
少し離れた椅子に座り、ミハイルの後ろ姿に見惚れていると、突然視界が遮られ目の前に男が立つ。
「ここではあんまり見ない髪色だね、1人で何してるの?」
そういうと私の隣に腰掛ける。
「人を待ってるだけなんで」
私が立ち上がろうとすると、男に掴まれそうになる。
「じゃあ、待ッーーーー」
手を伸ばした男がいきなり、人形のように固まる。
遠くから果実串を手に持つミハイルが男に魔法を使ったみたいだ。私は慌てて彼に駆け寄る。
「彼女に声をかけた事を後悔するまで、このままゆっくり体内から凍っていくがいい」
「ちょっと、やり過ぎだよ!あのままだと死んじゃう・・・早く魔法を解いて!」
「さあ、数時間したら溶けるんじゃない?」
全く動じないミハイルに苛立つ。
国王陛下が用意してくれた旅行で問題を起こす訳には行かない。
周りに注目される前に人通りが少ない場所に彼を連れ込んだ。
「あそこまで、する必要はなかった!」
「マールに触れようとした。もっと苦しめてもよかったな」
さらに魔法をかけに行こうとする彼を全力で止める。
「待って!」
腕を掴まれたミハイルは素直に止まってくれた。
私の方へ振り向くと、無表情で言い放つ。
「やっぱりこんなに魅力的な君は、僕に閉じ込められるべきだ」
冗談なのか、本気なのかミハイルの雰囲気に身の危険を感じ、そのまま彼の手首を掴んで、人気の無い路地から抜け出すために歩き出す。
咄嗟に話題を変えることにした。
「さっ・・・さすが国王陛下からのプレゼントだね!こんな素敵な旅行初めてだよ。国王陛下は、私たちの結婚を祝福してくれてるのかな・・・」
何気ない会話のつもりだった。
「そうだね・・・君は国王陛下とあまり接する機会が無いから、伝えておくよ」
まだ抜け出せていない路地の間で、ピタリと足を止めるとミハイルは説明する。
「王族には代々魔力を持つ者はない。
魔力の魅力に気づき、魔力持ちと王族が結婚し子供が生まれるも、魔力のない子供しか生まれなかった。何度も何度も繰り返して、やっと魔力持ち同士しか魔力を持つ子供が産まれないことがわかったんだ。王族の血は絶やせない。だから王族は魔力を持つことを諦めたんだ。魔力持ちに横柄なのは、ないものねだりなんだろうね。僕たち魔力持ちがいなければ、まともな生活が送れないことに嫉妬した国王は、この結婚に自分が実現できない理想を押し付けているんだ」
「僕はエソーで一番の魔力持ちとして生まれ、昔から王宮で働くために育て上げられた。だけど、この国のことを学ぶうちに、魔力持ちの扱いにあまり好ましく思えなくてね。実際にこの国に貢献すればするほど、余計に嫌になった」
彼の表情が一気に冷たくなった。
「王族が使用する魔力で出来たものは、献上する前に全て僕が目を通すことになっている。こっそり僕が確認した印として、少し僕の魔力を吹き込んでいるんだよ」
「僕がその魔力を全て消したらどうなると思う?」
なんの悪びれもなく笑う彼に、恐怖で体が竦む。
「この国に務めてから、君と結婚できることしか感謝していない」
「でも...」
黒いオーラを纏うかのように光のない目が笑う。
「もし、国王の気が変わって僕達の結婚に手を出すなら、迷わず消すね」
「たとえ国を滅ぼしても、僕はもう君を手離さないけど」
(・・・この人は、なに・・・言ってるの)
彼の言っていることに鳥肌が立ち、理解出来なかった。
「まるで僕を怪物みたいに見る君の顔も・・・とっても魅力的だね」
うっとりと私の顔を眺める。その顔が綺麗に輝き、余計に恐怖に震えた。
目の前にいる彼のドロドロとした支配欲の塊に飲み込まれそうになり、無意識に後ずさると背中が壁にぶつかる。
もう話し終わったという顔で、気にせずミハイルは上機嫌に果実串を1口食べると
恐怖に固まる私にゆっくりと近付く。
逃さないとばかりに顎を掴まれ、果実串を口元に差し出した。
グッ
「美味しいよ、食べて」
ギラギラと光る紫の瞳にじっと見下ろされたままかぶりつく。
ーーカプッ
口の中に広がる果実の味は分からず、甘い毒を飲み干すように、果実を飲み込んだ。
ゴクっ...り
口の横から、飲み込めず溢れた果汁が垂れる。
ぞくっとするほど艶かしい目線で果汁が垂れているのを見られていると、顎を掴んだままの彼に顔を寄せられ、舐め取られる。
果汁をすくい上げる彼の熱い舌が私の唇の端に触れた。
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