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49 幼なじみ
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あれからどうやって家の前まで辿り着いたのか分からないが、アルノーが家の前まで送ってくれた。
「じゃあ、先輩また明日」
「あ、ありがとう、また明日・・・」
さっきの態度とは違い、いつも通りのアルノーに戻っていて夢だったのではと錯覚する。弟のような親友のような心が許せるいい後輩だと思っていたのに、告白をされてこれからどう接していいのか分からなくなった。
家の前でぼんやりとアルノーの後ろ姿を見つめていると、家から出てきたミハイルに声をかけられる。
「遅い!ティータイムどころか夕食の時間を過ぎている!」
「あ、ごめん」
家の中に入るとミハイルはまた私についてくる。
「今日アイツと何かあったのか」
「・・・なんでもないよ」
「堂々と浮気か」
「ちが・・・う」
「一昨日、僕と結婚すると言ったのに君はアイツに乗り換えるのか、この浮気者!」
(今日のことは浮気になるのかな・・・)
上手いこと答えられないでいると、壁側に立っていた私は彼の両腕に囲われる。
「どうなんだ・・・」
急に彼との距離が近くなり、目の前にある胸板からクラクラする色気が溢れている。
ミハイルを思い出しそうで、どうにか逃げ出す言葉を探した。
「私のこと、好きじゃないんでしょ。どうしてこんなに構うの」
「ああ、好きじゃない」
「だったら、・・・っ」
ミハイルは私の耳元に顔を寄せる。
「好きじゃないのに、君の全てが気になって仕方ないんだ・・・今日してるこのピアスだって気に食わない」
チャリっ...
ピアスをしている耳を唇で弾く。
「んっ・・・やめて」
「僕は君に嫌われているが、この結婚をやめるつもりは無い」
ミハイルは耳元からゆっくり私の顔の前まで来ると、私の視線を捉える。
「諦めろ」
そっと離れると彼は夕食の支度をしてくるといい、キッチンに入っていった。
私は立ちすくむ足をなんとか動かし、部屋に入る。
(なに・・・あれ・・・)
魔法にかかったミハイルでもない、元のミハイルに心臓の音が鳴り止まらなかった。
簡単に着替えると、ピアスを隠すように髪を解き1階へ降りる。
食卓には豪勢な食事が並んでいた。
「すごい、あなたって料理上手だったんだね・・・」
(魔法にかかったミハイルも同じだったな)
「ああ、僕は自分の作る物しか信用しないんだ」
「そうなんだ」
「僕に好意を持っている女性がどうしても僕を振り向かせたかったらしい。店ぐるみで食事に色々と盛られてな。それが1度ではなかった」
「人気者も大変だね。でも結婚相手には困らなかったんじゃない?」
「そんな相手を好きになるはずがない」
「そうだね、食べていい?」
「はあ、君は本当に僕に興味が無いな」
彼の言葉を無視して、目の前にあるビーフシチューを食べる。
(!!)
愛しい顔が私を覗き込む。
「どうした」
「美味しい・・・」
「当然だ。僕が作ったんだからな」
(ミハイルと同じ味付けで、胸が苦しくなる)
「ほら、これも食べろ」
どんどん私によそってくれる。
「潔癖症なのに、私とご飯食べて大丈夫なの?」
「ああ、僕の作った食事だからな」
「別に、無理して貰わなくていいよ。今回だけで大丈夫」
そう言いつつも、おかわりを貰う。
「そんなに気に入ったのなら、これからは僕が食事を用意してもいい」
「いや、大丈夫」
「よくこの状況で断れるな・・・」
(正直ありがたいけど、ミハイルを思い出して辛いのが本音かな・・・)
ずっと気になっていた、食卓の上の花を眺める。
私の好きなピンクの可愛らしい花が飾られていた。
(たまにミハイルもこうして飾ってくれたな・・・)
私が花を見つめていたら、向かいに座る彼が満足そうに笑う顔に胸が打たれる。
「綺麗だろう」
「そうだね・・・どうしたの?」
「僕は君に嫌われているから、少しでも紛れたらと思ってな」
「・・・よく好みが分かったね」
(今日の料理も全部私が好きなものだった)
「ああ、幼なじみだからな。嫌われているが・・・」
私が俯くと、彼の悲しそうに笑う声が聞こえた。
お腹が落ち着くと、一気に眠気に襲われる。
(今日は色々ありすぎた・・・)
ミハイルは片付けをしてくれてるみたいで、寝ることを伝えに行く。
「片付けてくれてありがとう。夕食美味しかった。じゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ」
彼は私の方へ振り返ると少し笑った気がした。
またドキリと胸が跳ね、少し苦しくなる。
部屋に戻り、やっと1人になれた。
「はあーーっ」
魔法が解けたミハイルが帰って来てから、気持ちの整理をする暇なく休みが終わってしまった。
この2日間の休みで、ミハイルには好きじゃないと言われたのに構われ続け、アルノーには告白された。
一体何が起きているのか分からなくなり、私は逃げるようにピアスの箱を開けた。
チャリ・・・
彼のモチーフのピアスにそっと触れる。
貴方はもういない。
この2日間、ミハイルとアルノーに痛いほど思い知らされた。
それでも私は、貴方が好き。
「じゃあ、先輩また明日」
「あ、ありがとう、また明日・・・」
さっきの態度とは違い、いつも通りのアルノーに戻っていて夢だったのではと錯覚する。弟のような親友のような心が許せるいい後輩だと思っていたのに、告白をされてこれからどう接していいのか分からなくなった。
家の前でぼんやりとアルノーの後ろ姿を見つめていると、家から出てきたミハイルに声をかけられる。
「遅い!ティータイムどころか夕食の時間を過ぎている!」
「あ、ごめん」
家の中に入るとミハイルはまた私についてくる。
「今日アイツと何かあったのか」
「・・・なんでもないよ」
「堂々と浮気か」
「ちが・・・う」
「一昨日、僕と結婚すると言ったのに君はアイツに乗り換えるのか、この浮気者!」
(今日のことは浮気になるのかな・・・)
上手いこと答えられないでいると、壁側に立っていた私は彼の両腕に囲われる。
「どうなんだ・・・」
急に彼との距離が近くなり、目の前にある胸板からクラクラする色気が溢れている。
ミハイルを思い出しそうで、どうにか逃げ出す言葉を探した。
「私のこと、好きじゃないんでしょ。どうしてこんなに構うの」
「ああ、好きじゃない」
「だったら、・・・っ」
ミハイルは私の耳元に顔を寄せる。
「好きじゃないのに、君の全てが気になって仕方ないんだ・・・今日してるこのピアスだって気に食わない」
チャリっ...
ピアスをしている耳を唇で弾く。
「んっ・・・やめて」
「僕は君に嫌われているが、この結婚をやめるつもりは無い」
ミハイルは耳元からゆっくり私の顔の前まで来ると、私の視線を捉える。
「諦めろ」
そっと離れると彼は夕食の支度をしてくるといい、キッチンに入っていった。
私は立ちすくむ足をなんとか動かし、部屋に入る。
(なに・・・あれ・・・)
魔法にかかったミハイルでもない、元のミハイルに心臓の音が鳴り止まらなかった。
簡単に着替えると、ピアスを隠すように髪を解き1階へ降りる。
食卓には豪勢な食事が並んでいた。
「すごい、あなたって料理上手だったんだね・・・」
(魔法にかかったミハイルも同じだったな)
「ああ、僕は自分の作る物しか信用しないんだ」
「そうなんだ」
「僕に好意を持っている女性がどうしても僕を振り向かせたかったらしい。店ぐるみで食事に色々と盛られてな。それが1度ではなかった」
「人気者も大変だね。でも結婚相手には困らなかったんじゃない?」
「そんな相手を好きになるはずがない」
「そうだね、食べていい?」
「はあ、君は本当に僕に興味が無いな」
彼の言葉を無視して、目の前にあるビーフシチューを食べる。
(!!)
愛しい顔が私を覗き込む。
「どうした」
「美味しい・・・」
「当然だ。僕が作ったんだからな」
(ミハイルと同じ味付けで、胸が苦しくなる)
「ほら、これも食べろ」
どんどん私によそってくれる。
「潔癖症なのに、私とご飯食べて大丈夫なの?」
「ああ、僕の作った食事だからな」
「別に、無理して貰わなくていいよ。今回だけで大丈夫」
そう言いつつも、おかわりを貰う。
「そんなに気に入ったのなら、これからは僕が食事を用意してもいい」
「いや、大丈夫」
「よくこの状況で断れるな・・・」
(正直ありがたいけど、ミハイルを思い出して辛いのが本音かな・・・)
ずっと気になっていた、食卓の上の花を眺める。
私の好きなピンクの可愛らしい花が飾られていた。
(たまにミハイルもこうして飾ってくれたな・・・)
私が花を見つめていたら、向かいに座る彼が満足そうに笑う顔に胸が打たれる。
「綺麗だろう」
「そうだね・・・どうしたの?」
「僕は君に嫌われているから、少しでも紛れたらと思ってな」
「・・・よく好みが分かったね」
(今日の料理も全部私が好きなものだった)
「ああ、幼なじみだからな。嫌われているが・・・」
私が俯くと、彼の悲しそうに笑う声が聞こえた。
お腹が落ち着くと、一気に眠気に襲われる。
(今日は色々ありすぎた・・・)
ミハイルは片付けをしてくれてるみたいで、寝ることを伝えに行く。
「片付けてくれてありがとう。夕食美味しかった。じゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ」
彼は私の方へ振り返ると少し笑った気がした。
またドキリと胸が跳ね、少し苦しくなる。
部屋に戻り、やっと1人になれた。
「はあーーっ」
魔法が解けたミハイルが帰って来てから、気持ちの整理をする暇なく休みが終わってしまった。
この2日間の休みで、ミハイルには好きじゃないと言われたのに構われ続け、アルノーには告白された。
一体何が起きているのか分からなくなり、私は逃げるようにピアスの箱を開けた。
チャリ・・・
彼のモチーフのピアスにそっと触れる。
貴方はもういない。
この2日間、ミハイルとアルノーに痛いほど思い知らされた。
それでも私は、貴方が好き。
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