45 / 83
45 喪失 ②
しおりを挟む
家の前で足を止める。
「家、ここだから。アルノー今日はありがとうね」
「また明日、昼前に迎えに来ます」
「そこまでして貰わなくていいよ」
「明日はもう少しマシな顔で、出てきてくださいね」
(2人に言われるってことは相当酷んだ・・・)
アルノーはスタスタと歩いて行ってしまった。
今日は誰にも会いたくない気分だったけど、アルノーには救われたな・・・
明日はお礼にお昼ご馳走しないとね
ガチャーー
なんて考えて家に入ると、ミハイルが玄関に立っていた。
「びっくりした・・・あの、今から出かけるの?」
「家の前で話し声が聞こえたから気になっただけだ」
(ミハイルに出迎えられたのかと思った・・・)
「ああ・・・お昼を食べに行ったらたまたま後輩に出会って、私が疲れてるのを見かねて家まで送ってくれたの」
「そんな状態なら家から出るな」
「はいはい、すいません」
私は彼の横を通り抜けると、水を飲むためにキッチンへ向かう。
「水、飲むのか。ならコップはその上にある棚のを使え」
何故か私の後ろについてくる彼の一言一言にうんざりした。
「うるさいなあ、どのコップ使っても同じじゃない!どうせ洗うんだし好きなのを使わせてよ」
私は眠気に襲われ、イライラが止まらなかった。
「う、うるさい!?・・・君が帰ってきたら話すように言ったからこうして・・・」
「はいはい、すいませんでした。あなたの言う通り酷い顔をしてるので、今日はもう休ませて貰います」
「おい、水は飲まなくていいのか」
「面倒くさくなったからもういい」
自暴自棄に近い態度になりながら、フラフラと部屋へ向かおうとするとグッっと腕を掴まれる。
「ほら、水だ、飲め」
口元までコップを持って来る。
「・・・自分で飲めるから」
コップ受け取ると一気に飲み干す。
「洗うよ」
「いい、休め」
「潔癖症じゃん、嫌でしょ」
彼は黙って私の手からコップを奪い取るとそのまま流しで洗ってくれている。
睡魔の限界が来ていた私は言われた通り休むことにした。
目が覚めると夜中だっだ。
ぐっすり眠れたのか、頭もスッキリ冴えている。
ぐぅうう
「ああ、お腹空いた・・・・でもこんな時間だからお店もやってないし」
とりあえず空腹を誤魔化すために、水を飲みに下へ降りることにした。
(流石に、彼ももう寝てるよね)
音を立てないように部屋を出ると、1階の共有スペースにはまだ明かりが付いていた。
(あれ、まだ起きてるのか)
とりあえず下に降りると彼はソファーにもたれ掛かり目を瞑っている。
(寝てる・・・の)
黙っていると、私の愛したミハイルそのものだった。
そっと近付き顔を見る。
魔力持ちは恋に落ちにくい。だけど恋に落ちると、とことん一途に深く愛するのだとミハイルに教えてもらった。
(アルノーには自分を好きになる魔法にかかったミハイルに惚れただけって言われたけど・・・それでも)
「愛してる」
私はそっと離れると、自分の部屋に戻った。
ミハイルに会えた気がして、心が満たされる。
いつの間にか空腹は気にならなくなっていた。
「家、ここだから。アルノー今日はありがとうね」
「また明日、昼前に迎えに来ます」
「そこまでして貰わなくていいよ」
「明日はもう少しマシな顔で、出てきてくださいね」
(2人に言われるってことは相当酷んだ・・・)
アルノーはスタスタと歩いて行ってしまった。
今日は誰にも会いたくない気分だったけど、アルノーには救われたな・・・
明日はお礼にお昼ご馳走しないとね
ガチャーー
なんて考えて家に入ると、ミハイルが玄関に立っていた。
「びっくりした・・・あの、今から出かけるの?」
「家の前で話し声が聞こえたから気になっただけだ」
(ミハイルに出迎えられたのかと思った・・・)
「ああ・・・お昼を食べに行ったらたまたま後輩に出会って、私が疲れてるのを見かねて家まで送ってくれたの」
「そんな状態なら家から出るな」
「はいはい、すいません」
私は彼の横を通り抜けると、水を飲むためにキッチンへ向かう。
「水、飲むのか。ならコップはその上にある棚のを使え」
何故か私の後ろについてくる彼の一言一言にうんざりした。
「うるさいなあ、どのコップ使っても同じじゃない!どうせ洗うんだし好きなのを使わせてよ」
私は眠気に襲われ、イライラが止まらなかった。
「う、うるさい!?・・・君が帰ってきたら話すように言ったからこうして・・・」
「はいはい、すいませんでした。あなたの言う通り酷い顔をしてるので、今日はもう休ませて貰います」
「おい、水は飲まなくていいのか」
「面倒くさくなったからもういい」
自暴自棄に近い態度になりながら、フラフラと部屋へ向かおうとするとグッっと腕を掴まれる。
「ほら、水だ、飲め」
口元までコップを持って来る。
「・・・自分で飲めるから」
コップ受け取ると一気に飲み干す。
「洗うよ」
「いい、休め」
「潔癖症じゃん、嫌でしょ」
彼は黙って私の手からコップを奪い取るとそのまま流しで洗ってくれている。
睡魔の限界が来ていた私は言われた通り休むことにした。
目が覚めると夜中だっだ。
ぐっすり眠れたのか、頭もスッキリ冴えている。
ぐぅうう
「ああ、お腹空いた・・・・でもこんな時間だからお店もやってないし」
とりあえず空腹を誤魔化すために、水を飲みに下へ降りることにした。
(流石に、彼ももう寝てるよね)
音を立てないように部屋を出ると、1階の共有スペースにはまだ明かりが付いていた。
(あれ、まだ起きてるのか)
とりあえず下に降りると彼はソファーにもたれ掛かり目を瞑っている。
(寝てる・・・の)
黙っていると、私の愛したミハイルそのものだった。
そっと近付き顔を見る。
魔力持ちは恋に落ちにくい。だけど恋に落ちると、とことん一途に深く愛するのだとミハイルに教えてもらった。
(アルノーには自分を好きになる魔法にかかったミハイルに惚れただけって言われたけど・・・それでも)
「愛してる」
私はそっと離れると、自分の部屋に戻った。
ミハイルに会えた気がして、心が満たされる。
いつの間にか空腹は気にならなくなっていた。
1
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
完【恋愛】婚約破棄をされた瞬間聖女として顕現した令嬢は竜の伴侶となりました。
梅花
恋愛
侯爵令嬢であるフェンリエッタはこの国の第2王子であるフェルディナンドの婚約者であった。
16歳の春、王立学院を卒業後に正式に結婚をして王室に入る事となっていたが、それをぶち壊したのは誰でもないフェルディナンド彼の人だった。
卒業前の舞踏会で、惨事は起こった。
破り捨てられた婚約証書。
破られたことで切れてしまった絆。
それと同時に手の甲に浮かび上がった痣は、聖痕と呼ばれるもの。
痣が浮き出る直前に告白をしてきたのは隣国からの留学生であるベルナルド。
フェンリエッタの行方は…
王道ざまぁ予定です
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
花の精霊はいじわる皇帝に溺愛される
アルケミスト
恋愛
崔国の皇太子・龍仁に仕える女官の朱音は、人間と花仙との間に生まれた娘。
花仙が持つ〈伴侶の玉〉を龍仁に奪われたせいで彼の命令に逆らえなくなってしまった。
日々、龍仁のいじわるに耐えていた朱音は、龍仁が皇帝位を継いだ際に、妃候補の情報を探るために後宮に乗り込んだ。
だが、後宮に渦巻く、陰の気を感知した朱音は、龍仁と共に後宮の女性達をめぐる陰謀に巻き込まれて……
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる