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エピローグⅡ
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その日の夜。
なんだか母さんとお義父さんがソワソワしているなーと思っていたら、突然フウキと二人で呼ばれた。
「どうしたの? いきなり話だなんて」
約一ヶ月前のレストランと違い、母さんとお義父さんは隣同士に座り、俺とフウキが隣の席になっていた。
二人とも帰ってからずっとソワソワしているし、この空気。……うん、多分そういう事だよね。
俺とフウキ。二人とも血の繋がっている家族が増えたんだ。
「お父様? 改まってどうしたんですか?」
「えーと、そうだね。二人にとっては今更だと思うのだけど、とある話を聞いてしまってね。それならちゃんと言うべきだと思ったんだ」
どうやらフウキは気が付いていないみたいだね。家族を集めてする報告。それにずっとソワソワしている二人。
俺はそれしかないと思うけど。
「あ、あのね? 偶然聞いちゃったのよー」
「聞いたって何を?」
「そ、それはその……」
黙ってしまう母さん。
あれ? 聞いた何かがこの集まりの理由なの? えっ、それじゃあ母さんが妊娠したわけじゃないのか?
それなら……何を聞いた? 何を知ってしまったんだ?
「カイリさん、ここは私が」
「そ、そうねー。お願いするわー」
お義父さんは一度咳払いをした後、真剣な顔で俺たちにとって最大級の爆弾を投下した。
「二人は中学時代に付き合っていたそうだね」
「「——っ!?」」
この状況においてそれはあまりにも最大級の爆弾だった。
どうして? どこからバレた? いや、犯人探しなんてしている場合じゃない。どうにかして誤魔化さないと!
「その反応、本当なんだね」
「い、いやそれは!」
腕を組み俯くお義父さん。
やばい、これはやばいぞ!?
フウキは顔を真っ青にして固まっている。これは俺がどうにかするしかない!
「お、お義父さん! それは——」
「ふふっ、安心してくれて良いよ。私たちは怒っているわけではないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
顔を上げたお義父さんは優しい笑みを浮かべていた。
「むしろ嬉しい……というのは流石におかしいね」
嬉しい? どういう事?
ただわかるのは二人とも否定的に捉えてないって事だけど……でも、複雑だ。
そんな俺たちの気持ちに気が付いているのかいないのかわからないけど、二人は視線を交わして笑い合っていた。
「カイリさん。念の為だったけれど、どうやら私たちは良い判断をしたみたいだね」
「うふふっ、そうねー。まさかハイジとフウキちゃんが恋人だったなんてねー」
「私は薄々気が付いていたよ? 転勤が決まった時のフウキはあまりにも絶望していたからね。その理由は友人との別れだと言っていたけど、その相手がハイジ君だとわかり、これはもしかすると、とね」
「あらあら、ソウゴさんは推理力があるのねー」
「ふふっ」
何故か盛り上がっている二人。心の底から楽しそうだ。
だけど勘違いは訂正するべきだ。なんせもう俺たちの仲は……そう、終わって変わったんだから。
「お義父さん、母さん。確かに俺とフウキは中学時代に付き合ってたけれど、もう別れたんだ。それにその、当時の俺たちは本当に子供で……その……」
「どうしたんだい?」
男としてハッキリさせるべき事。俺はそう考えているけどフウキはどうだ? そもそも親とはいえ明かすべき事か?
どうする? 言うか? 本当に言うのか? だけどお義父さんはフウキの父親だ。こういう事ははっきりさせるべきだよね。
「その、当時の俺たちはキスすらしていないお付き合いだったんです。だからその、互いに恋人ごっこに近かったと思うんです」
嘘ではない。付き合っていた頃にキスをした事はないからね。
罪悪感? ……少しだけ。
「なるほど、つまり中学生だったハイジ君は、フウキとキスがしたいと思った事はないって事なのかな?」
「いや、そういう話ではなくてですね! 今の俺とフウキは恋人ではなくて、兄妹だって事です!」
俺とフウキは兄妹。家族なんだ。
兄妹が恋人になるなんてありえない。法律が許してくれない。
だから俺たちはあの日、誓い合ったんだ。
俺たちは恋人ではなく兄妹だと。
この気持ちは恋愛ではなく、家族愛だと。そういう事にしたんだ。
「なるほど。ハイジ君の言いたい事はわかったよ。その上で言っても良いかな?」
「は、はい」
笑顔のお義父さん。
一体何を言われるんだ? よし、覚悟を決めろ。
「実は私とカイリさんは籍を入れていないんだ」
「「えっ……」」
あまりの衝撃に固まる俺とフウキ。
「勿論私はカイリさんの事を愛しているよ」
「うふふっ、私もソウゴさんの事を愛してるわー」
「ありがとうカイリさん。つまり私たちは事実婚という事だね」
事実婚。
ただ籍を入れていないだけ、法律的には結婚していないというだけで、他は結婚と変わらない状態だって事だ。
……あれ、それじゃあ。
「法律的にハイジ君とフウキは兄妹ではない、他人なんだよ」
「「……」」
完全に俺たちは言葉を失った。
こんなにも兄妹だと強く心に刻んで来たのに、実は兄妹ではない?
「つまりよー。ハイジとフウキちゃんの結婚を妨げるものは何もないって事よー」
「「……えっ」」
母さん? ななな、何を言っていらっしゃるので?
「ふふっ、カイリさんそれは早いんじゃないかな。ただ二人ともこれだけはわかって欲しい。もしも二人の中に兄妹という枷があったのだとすれば、そんなものは何処にも存在しないとね」
「「……」」
ダメだ。頭の処理が追い付かない。
言葉にならない。
「うふふっ、もしも二人がやり直したいと思ったのなら、私たちは反対しないわよー」
母さんの言葉に優しく頷くソウゴさん。
それってつまり、二人とも許可しているって事?
……えっ? それじゃあ、それじゃあ。
「ふふっ、勿論関係を強制するつもりはないよ。ただ、私とカイリさん、二人の再スタートが子供たちの未来を奪ってはならない。そう思っているだけだよ」
優しい顔をしてソウゴさんはそう言い終えると、静かに立ち上がった。
「少し二人で話すといいわー」
楽しそうにそう言い終えると、お義父さんの後を追い掛けていなくなる母さん。
「「……」」
無言のまま座り尽くす俺とフウキ。
どちらからともなく、俺たちは顔を見合わせた。
「「……」」
そして無言のまま、目を逸らした。
つい見てしまったフウキの唇。バレてないよね?
「は、ハイジ君」
「な、なんだ?」
「その、こんな事になりましたけど、これからよろしくお願いしますね」
「あ、ああ、こちらこそよろしくな」
兄妹ではないとしても、同じ家で暮らしていく事に変わりはない。
これから俺たちの生活はどうなってしまうんだ!?
なんだか母さんとお義父さんがソワソワしているなーと思っていたら、突然フウキと二人で呼ばれた。
「どうしたの? いきなり話だなんて」
約一ヶ月前のレストランと違い、母さんとお義父さんは隣同士に座り、俺とフウキが隣の席になっていた。
二人とも帰ってからずっとソワソワしているし、この空気。……うん、多分そういう事だよね。
俺とフウキ。二人とも血の繋がっている家族が増えたんだ。
「お父様? 改まってどうしたんですか?」
「えーと、そうだね。二人にとっては今更だと思うのだけど、とある話を聞いてしまってね。それならちゃんと言うべきだと思ったんだ」
どうやらフウキは気が付いていないみたいだね。家族を集めてする報告。それにずっとソワソワしている二人。
俺はそれしかないと思うけど。
「あ、あのね? 偶然聞いちゃったのよー」
「聞いたって何を?」
「そ、それはその……」
黙ってしまう母さん。
あれ? 聞いた何かがこの集まりの理由なの? えっ、それじゃあ母さんが妊娠したわけじゃないのか?
それなら……何を聞いた? 何を知ってしまったんだ?
「カイリさん、ここは私が」
「そ、そうねー。お願いするわー」
お義父さんは一度咳払いをした後、真剣な顔で俺たちにとって最大級の爆弾を投下した。
「二人は中学時代に付き合っていたそうだね」
「「——っ!?」」
この状況においてそれはあまりにも最大級の爆弾だった。
どうして? どこからバレた? いや、犯人探しなんてしている場合じゃない。どうにかして誤魔化さないと!
「その反応、本当なんだね」
「い、いやそれは!」
腕を組み俯くお義父さん。
やばい、これはやばいぞ!?
フウキは顔を真っ青にして固まっている。これは俺がどうにかするしかない!
「お、お義父さん! それは——」
「ふふっ、安心してくれて良いよ。私たちは怒っているわけではないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
顔を上げたお義父さんは優しい笑みを浮かべていた。
「むしろ嬉しい……というのは流石におかしいね」
嬉しい? どういう事?
ただわかるのは二人とも否定的に捉えてないって事だけど……でも、複雑だ。
そんな俺たちの気持ちに気が付いているのかいないのかわからないけど、二人は視線を交わして笑い合っていた。
「カイリさん。念の為だったけれど、どうやら私たちは良い判断をしたみたいだね」
「うふふっ、そうねー。まさかハイジとフウキちゃんが恋人だったなんてねー」
「私は薄々気が付いていたよ? 転勤が決まった時のフウキはあまりにも絶望していたからね。その理由は友人との別れだと言っていたけど、その相手がハイジ君だとわかり、これはもしかすると、とね」
「あらあら、ソウゴさんは推理力があるのねー」
「ふふっ」
何故か盛り上がっている二人。心の底から楽しそうだ。
だけど勘違いは訂正するべきだ。なんせもう俺たちの仲は……そう、終わって変わったんだから。
「お義父さん、母さん。確かに俺とフウキは中学時代に付き合ってたけれど、もう別れたんだ。それにその、当時の俺たちは本当に子供で……その……」
「どうしたんだい?」
男としてハッキリさせるべき事。俺はそう考えているけどフウキはどうだ? そもそも親とはいえ明かすべき事か?
どうする? 言うか? 本当に言うのか? だけどお義父さんはフウキの父親だ。こういう事ははっきりさせるべきだよね。
「その、当時の俺たちはキスすらしていないお付き合いだったんです。だからその、互いに恋人ごっこに近かったと思うんです」
嘘ではない。付き合っていた頃にキスをした事はないからね。
罪悪感? ……少しだけ。
「なるほど、つまり中学生だったハイジ君は、フウキとキスがしたいと思った事はないって事なのかな?」
「いや、そういう話ではなくてですね! 今の俺とフウキは恋人ではなくて、兄妹だって事です!」
俺とフウキは兄妹。家族なんだ。
兄妹が恋人になるなんてありえない。法律が許してくれない。
だから俺たちはあの日、誓い合ったんだ。
俺たちは恋人ではなく兄妹だと。
この気持ちは恋愛ではなく、家族愛だと。そういう事にしたんだ。
「なるほど。ハイジ君の言いたい事はわかったよ。その上で言っても良いかな?」
「は、はい」
笑顔のお義父さん。
一体何を言われるんだ? よし、覚悟を決めろ。
「実は私とカイリさんは籍を入れていないんだ」
「「えっ……」」
あまりの衝撃に固まる俺とフウキ。
「勿論私はカイリさんの事を愛しているよ」
「うふふっ、私もソウゴさんの事を愛してるわー」
「ありがとうカイリさん。つまり私たちは事実婚という事だね」
事実婚。
ただ籍を入れていないだけ、法律的には結婚していないというだけで、他は結婚と変わらない状態だって事だ。
……あれ、それじゃあ。
「法律的にハイジ君とフウキは兄妹ではない、他人なんだよ」
「「……」」
完全に俺たちは言葉を失った。
こんなにも兄妹だと強く心に刻んで来たのに、実は兄妹ではない?
「つまりよー。ハイジとフウキちゃんの結婚を妨げるものは何もないって事よー」
「「……えっ」」
母さん? ななな、何を言っていらっしゃるので?
「ふふっ、カイリさんそれは早いんじゃないかな。ただ二人ともこれだけはわかって欲しい。もしも二人の中に兄妹という枷があったのだとすれば、そんなものは何処にも存在しないとね」
「「……」」
ダメだ。頭の処理が追い付かない。
言葉にならない。
「うふふっ、もしも二人がやり直したいと思ったのなら、私たちは反対しないわよー」
母さんの言葉に優しく頷くソウゴさん。
それってつまり、二人とも許可しているって事?
……えっ? それじゃあ、それじゃあ。
「ふふっ、勿論関係を強制するつもりはないよ。ただ、私とカイリさん、二人の再スタートが子供たちの未来を奪ってはならない。そう思っているだけだよ」
優しい顔をしてソウゴさんはそう言い終えると、静かに立ち上がった。
「少し二人で話すといいわー」
楽しそうにそう言い終えると、お義父さんの後を追い掛けていなくなる母さん。
「「……」」
無言のまま座り尽くす俺とフウキ。
どちらからともなく、俺たちは顔を見合わせた。
「「……」」
そして無言のまま、目を逸らした。
つい見てしまったフウキの唇。バレてないよね?
「は、ハイジ君」
「な、なんだ?」
「その、こんな事になりましたけど、これからよろしくお願いしますね」
「あ、ああ、こちらこそよろしくな」
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