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第九話 認識の違い
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昼休みが終わる前に教室へと戻ったオレは、自席で教科書を読んでいた。選んだ教科は歴史だ。異国で育ったオレにとっては最難関の教科だからな。任務のために成績が優秀である必要はないが、悪いよりかは良いだろう。
それに、たったの七年でここまで成長した異常の正体を知る、そのきっかけが書かれているかもしれないからな。
「おいタルト! どういうつもりだよ!」
頬杖を付きながら気ままに教科書を読み進めていると、荒々しい開門音と共に知っている男子の声、ほぼ叫び声が轟いた。
「どうした涼樹?」
「どうしたじゃないよー」
覇気を纏ってやって来たのは涼樹だけじゃなかった。
彼以上の覇気を、というより怒気が滲む雰囲気をした少女、真王の姿もあった。
「わっちゃ言ったよねー? 危ないよーって」
口調は変わらずゆったりとしているけれど、目付きが違う。怒っているのは一目瞭然だ。
「二人にオレの苦手なものを教えてやろう」
「……なんだよそれ」
「我慢」
「そう言うと思ったっ!」
なんという反応の素早さ。予めオレがなんて言うか想定していたな?
「それに聞こえたぞ! 模擬戦って早過ぎるだろ! 魔装具ってのはタルトが思っている以上に危険なんだからな!」
涼樹の言葉からは強い意志が感じ取れた。おそらくはこの一ヶ月間の実体験に基づく考えなんだろう。
「大丈夫だって、こう見えてオレは強いぞ?」
「それは魔装具を手に入れる前の話だろ!?」
涼樹の言葉からはわかりやすいほどに焦りが滲み出ていた。それだけオレの事を心配してくれているんだろうな。
「ねー、タルタル? 悪い事は言わないから、ごめんなさい、しよー?」
「嫌だね」
「……こんな事は言いたくないけどー、タルタルはわっちゃたちの事を舐めてるよー」
「別にそんな事——」
「あるよ。タルタルはわっちゃたち魔装師を舐めてる」
普段の語尾が泳ぐのんびりとした口調ではなく、ハッキリとした強い言葉だった。
「タルタル聞いて。確かにわっちゃたちはタルタルの強さを知らない。だから本当に強いのかもしれないよ。でもね、それは国外のレベルでしかないんだ。魔装具は他の既存武器を遥かに超える性能を有しているんだ。それを使い熟す魔装師のレベルはそれを使わない人が束になっても勝てないほど。それほどの武器性能があるんだよ」
「……オレだって——」
あまりにも真剣な表情で話す真王に怯みそうになりながらも、魔装具を持っているのは同じだと、そう言おうとして遮られた。
「タルタルはまだ魔装師見習いですらないよ。魔装具はただの展開武器じゃない。使い続ける事によってその性能をより引き出す事が出来る。言い換えるなら魔装具は使い続けるほどに強くなる武具だよ」
使い続ける事で性能が上がる。ある意味、進化する武器か。成長するだなんてまるで生きているかのようだな。
「タルタルが戦おうとしている彼の名前は酒井君。鈴宮さんの強さに魅せられ、共に強さを追い求めている本物の魔装師。学校全体で一桁順位の実力者。同じクラスだから、実際に見てるからわかる……タルタルじゃ絶対に勝てないんだよ。だから……ごめんなさい、しよ?」
オレの手を両手で包み込む真王。その手は、震えていた。
二人とも良い奴だな。
だけど、それを聞いたからには尚更引けない。
酒井とやらがそれほどまでの実力者だというのならば、生贄にはちょうど良い。
「悪いな真王」
「タルタルっ!」
いつの間にか俯いていた頭を上げて叫ぶ真王。そんな彼女の目には、溢れんばかりの涙が溜まっていた。
——会って一日どころか、数分前の関係でしかない。それでここまで感情的になってくれるのか。……優しいな。オレには眩しいくらいだよ。
そんな心温まる友人を、オレは抱き締めた。
「た、タルタル?」
「ありがとう。でも、ごめんな」
腕を緩め、彼女の目に溜まった涙を指先で取った。
困惑している少女に、オレは出来るだけ優しい声で語り掛ける。
「オレは戦う」
「だめ——」
「本当に大丈夫だって、真王が思っている数十倍強いから」
不安になっている少女の口を伸ばした指で塞ぎ、オレは続ける。
「それに、真王こそ舐め過ぎだぞ。決してこの国が最強ってわけじゃない。発展速度は凄まじいけど、それでも例外的な強さを有している奴らをオレは知っている」
嫌になるくらいに知っている。多少の事では恐怖を覚える事がなくなるほどに、理不尽の化身たちを知っている。
真王の言う本物の魔装師の実力は知らない。オレの想像を超えているのかもしれない。だけどとても思えないんだ。
あの程度の男が、あの理不尽を超えるだなんて。
「見せてやるよ。国外の地獄で磨き上げられた刃の実力をさ」
凝り固まった魔装師の常識。見習いたちの驕り。
オマエたちの脳をぐちゃぐちゃにしてやる。
「……わかった。んー、タルタルの事、信じるよー」
「サンキュー」
真王の頭を一撫でした後、ムスッとした顔をしている友人へと顔を向けた。
「オマエはどうだ?」
「……ずるいぞタルト。そんな事言われたら信じるしかないじゃんか」
「サンキュー。大丈夫。ちゃんと見せてやるから」
何万、何十万という人間を虐殺した血族。
その穢れた血を受け継ぐ呪われた娘の力、その一端を。
それに、たったの七年でここまで成長した異常の正体を知る、そのきっかけが書かれているかもしれないからな。
「おいタルト! どういうつもりだよ!」
頬杖を付きながら気ままに教科書を読み進めていると、荒々しい開門音と共に知っている男子の声、ほぼ叫び声が轟いた。
「どうした涼樹?」
「どうしたじゃないよー」
覇気を纏ってやって来たのは涼樹だけじゃなかった。
彼以上の覇気を、というより怒気が滲む雰囲気をした少女、真王の姿もあった。
「わっちゃ言ったよねー? 危ないよーって」
口調は変わらずゆったりとしているけれど、目付きが違う。怒っているのは一目瞭然だ。
「二人にオレの苦手なものを教えてやろう」
「……なんだよそれ」
「我慢」
「そう言うと思ったっ!」
なんという反応の素早さ。予めオレがなんて言うか想定していたな?
「それに聞こえたぞ! 模擬戦って早過ぎるだろ! 魔装具ってのはタルトが思っている以上に危険なんだからな!」
涼樹の言葉からは強い意志が感じ取れた。おそらくはこの一ヶ月間の実体験に基づく考えなんだろう。
「大丈夫だって、こう見えてオレは強いぞ?」
「それは魔装具を手に入れる前の話だろ!?」
涼樹の言葉からはわかりやすいほどに焦りが滲み出ていた。それだけオレの事を心配してくれているんだろうな。
「ねー、タルタル? 悪い事は言わないから、ごめんなさい、しよー?」
「嫌だね」
「……こんな事は言いたくないけどー、タルタルはわっちゃたちの事を舐めてるよー」
「別にそんな事——」
「あるよ。タルタルはわっちゃたち魔装師を舐めてる」
普段の語尾が泳ぐのんびりとした口調ではなく、ハッキリとした強い言葉だった。
「タルタル聞いて。確かにわっちゃたちはタルタルの強さを知らない。だから本当に強いのかもしれないよ。でもね、それは国外のレベルでしかないんだ。魔装具は他の既存武器を遥かに超える性能を有しているんだ。それを使い熟す魔装師のレベルはそれを使わない人が束になっても勝てないほど。それほどの武器性能があるんだよ」
「……オレだって——」
あまりにも真剣な表情で話す真王に怯みそうになりながらも、魔装具を持っているのは同じだと、そう言おうとして遮られた。
「タルタルはまだ魔装師見習いですらないよ。魔装具はただの展開武器じゃない。使い続ける事によってその性能をより引き出す事が出来る。言い換えるなら魔装具は使い続けるほどに強くなる武具だよ」
使い続ける事で性能が上がる。ある意味、進化する武器か。成長するだなんてまるで生きているかのようだな。
「タルタルが戦おうとしている彼の名前は酒井君。鈴宮さんの強さに魅せられ、共に強さを追い求めている本物の魔装師。学校全体で一桁順位の実力者。同じクラスだから、実際に見てるからわかる……タルタルじゃ絶対に勝てないんだよ。だから……ごめんなさい、しよ?」
オレの手を両手で包み込む真王。その手は、震えていた。
二人とも良い奴だな。
だけど、それを聞いたからには尚更引けない。
酒井とやらがそれほどまでの実力者だというのならば、生贄にはちょうど良い。
「悪いな真王」
「タルタルっ!」
いつの間にか俯いていた頭を上げて叫ぶ真王。そんな彼女の目には、溢れんばかりの涙が溜まっていた。
——会って一日どころか、数分前の関係でしかない。それでここまで感情的になってくれるのか。……優しいな。オレには眩しいくらいだよ。
そんな心温まる友人を、オレは抱き締めた。
「た、タルタル?」
「ありがとう。でも、ごめんな」
腕を緩め、彼女の目に溜まった涙を指先で取った。
困惑している少女に、オレは出来るだけ優しい声で語り掛ける。
「オレは戦う」
「だめ——」
「本当に大丈夫だって、真王が思っている数十倍強いから」
不安になっている少女の口を伸ばした指で塞ぎ、オレは続ける。
「それに、真王こそ舐め過ぎだぞ。決してこの国が最強ってわけじゃない。発展速度は凄まじいけど、それでも例外的な強さを有している奴らをオレは知っている」
嫌になるくらいに知っている。多少の事では恐怖を覚える事がなくなるほどに、理不尽の化身たちを知っている。
真王の言う本物の魔装師の実力は知らない。オレの想像を超えているのかもしれない。だけどとても思えないんだ。
あの程度の男が、あの理不尽を超えるだなんて。
「見せてやるよ。国外の地獄で磨き上げられた刃の実力をさ」
凝り固まった魔装師の常識。見習いたちの驕り。
オマエたちの脳をぐちゃぐちゃにしてやる。
「……わかった。んー、タルタルの事、信じるよー」
「サンキュー」
真王の頭を一撫でした後、ムスッとした顔をしている友人へと顔を向けた。
「オマエはどうだ?」
「……ずるいぞタルト。そんな事言われたら信じるしかないじゃんか」
「サンキュー。大丈夫。ちゃんと見せてやるから」
何万、何十万という人間を虐殺した血族。
その穢れた血を受け継ぐ呪われた娘の力、その一端を。
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