鎖血のタルト 〜裏切られた王女は復讐をやめた〜

狐隠リオ

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第十四話 タルトの魔装具

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 会場はオールバック眼鏡君が手配した室内訓練場。ついさっき授業で使った部屋の半分くらいの広さだった。

「まずは逃げなかったその勇気を賞賛しよう」
「何様だお前。格付けまだなのに格上ムーブはダサいぞ? この後何も出来ずに負けるわけだし、後から辛くなるからやめときなー」
「——っ……ふう、君は本当に礼儀を知らないらしい」
「何言ってんだ? 同級生に礼儀も何もないだろ。オマエはどこぞのお貴族様か? それならオレはお姫様だぞ」

 冷静さを保とうと努力しているらしいお貴族様に、オレは嗤い掛ける。理由? その存在そのものが苛つくからだけど?
 それにしても、思っていたよりも観客がいるな。

 食堂という人が集まる場所でやらかしたからな、噂は随分と広がったらしい。訓練室の壁際を埋め尽くす程のギャラリーが集まっていた。
 オレが知っている顔といえば、涼樹と真王。それからクソビッチと、意外な事にあの二人、羽森と天照の姿もあった。

(もしかして気が付いてくれたのか?)

 期待なしのアイコンタクトだったが、ここにいるという事は興味を引く事が出来たという事になるからな。
 ラッキー。儲け儲けっと。

「そういえばまだ名乗っていなかったね。僕の名前は酒井駆狼《さかいくろう》。鈴宮さんと共に強さを求める一団[フィアスタ]の副代表をしている」

 ……えっ、何それ。[フィアスタ]って何? クソビッチ……怖っ。

「……えーと、駆狼だっけ? なんか毎日が大変そうだな。そういう星の元に産まれたんじゃないか?」

 現にオレという厄介者の相手をしているわけだしな。

「なんてつまらないギャグだ。知能の低さが見て取れるよ」
「なんてテラってるオールバックだ。適量を知らないらしいな」

 あの髪型を維持するために大量の液を馴染ませているんだろうな。ハゲより眩しい頭をしているぞ。
 さて、一生悪口を言える自信があるし、そろそろ始めるか。

「えーと、魔装師見習い先輩? そろそろ始めようよ」
「……そうだね」

 オレは戦闘狂じゃない。
 だけど……あの二人の戦いは脳裏に張り付いていた。
 戦いたい。暴れたい。その一心が溢れ出していた。

「へいへいっ! 二人ともやる気満々だね! それじゃあ行くよ! 北炒の名の下に魔装具完全使用許可戦闘を始めます! 三々、二々、一々、ゴーっ!」

 申請戦闘の場に必須な先生の一人、北炒先生の言葉によって戦いが始まった。

「「【展開】」」

 両者共に指に嵌められた魔装具に光を灯し、各々の武装を展開する。
 苦労人が身に纏ったのはこの学校の制服であるブレザーとは対を成している服装、学ランだった。そして両手にそれぞれ握られているのは、拳銃。

(二丁拳銃か。魔装具にする必要あるのか?)

 突撃銃《アサルト》や狙撃銃《スナイプ》なら魔装具《小型化》する意味もあるだろうけど、元々携帯が容易な拳銃を魔装具にする意味はない。と、午前のオレならそう考えるだろうな。
 魔装具の利点は小型化だけではなく、天照の弓がそうだったように、本来ならあり得ない改造を施せる拡張性の高さだ。

 あの二丁拳銃にも何かしらの仕込みがあると考えるべきだろう。
 学ランに二丁拳銃。黒系統に統一されたその姿は中々の威圧感を放っている。
 対してオレの姿はどうだ?

「……随分と……」

 言葉を濁しながら眼鏡の位置を直す苦労君。
 言いたい事はわかる。オレも一応は女だからな。男としてこの姿に思う事があるんだろう。
 現在身に纏っているのはショートパンツと、完全に腰を露出させた上衣だった。
 ショートパンツに関しては言う事がない。そのままだ。太腿から足首まで素肌を晒しているけれど、そこに羞恥心はない。別にこれくらいは普通だろ? 意識しちゃう奴の頭がドピンクなんだ。
 ……でも、上衣は違う。

「あんまり見るな。変態」
「す、すまない」

 半分くらいは冗談だったんだけど、随分と素直だな。
 腰回りは完全に露出したヘソ出しスタイル。そこから上の露出はなく、先が広がった袖は長くて手元を隠している。
 イメージ的には天照と真逆だな。
 上半身が晒で露出度の高い彼女に対し、オレは下半身が露出している。ヘソ出しだし。

「へえ、ウブだねえ。ほら、そろそろ始めるぞ」
「……武器は良いのかい?」
「ああ、大丈夫。これがオレのスタイルだ」

 オレの両手には何も握られていない。その事を心配しているみたいだけど、不要だ。
 ちゃんと武器は準備完了だ。

 さあ、始めよう。


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