鎖血のタルト 〜裏切られた王女は復讐をやめた〜

狐隠リオ

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第二十五話 友達の実力

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 捨てた故郷。センズファスト。
 両親を処刑した奴らは死んだ。だが、子供が生きているらしい。
 表向きは死んだとされているが、実際には生きている。それを聞いた時、俺は歓喜した。
 そして誓ったんだ。
 必ず、必ずこの手で殺す。
 赤髪の塔怪《とうかい》を。

   ☆ ★ ☆ ★

 六月の頭。となれば午後に行われる授業は明らかだ。

「さあさあさあ! 今月もついに始まったね! 今月の成長ポイントを明らかにする実技授業・模擬戦のお時間だーっ!」

 北炒先生の声に合わせ、男女の叫び声がこだました。今日も先生は人気者だな。

「そして! 今回からはみんなが注目しているニューフェイスであるタルト・ドルマーレちゃんも参戦するぞーっ!」

 二度目のこだま。正直言って耳が痛い。

「一ヶ月前に行われた公式模擬戦を見たって人はどれくらいいるのかなー? って聞くまでもなくみんなだよねーっ! シングルで特権持ちのスーパーボーイ、酒井君と魔装具ありの激戦を繰り広げたタルトちゃん! その勝敗はなんとなんとタルトちゃんの勝利! しかもあの感じじゃ絶対に手の内を隠しているなーっ!? さあさあ! 今日はタルトちゃんの本気をこの目にする事が出来るのか! 楽しみだね! 楽しみだよね! ちなみにボクはもう我慢出来ません! のでので! 最初に戦う二人はこいつらだーっ!」

 いつもに増してテンション増し増しでほぼ叫び続けている北炒先生。なんというか、先生としてそれで良いのか?

 一応公式の模擬戦として記録が残っているけど、他クラスの生徒の負けをこんなにも堂々と宣言するなんて……まあ、多少の優しさは見えたけど、その後の言葉が台無しにしてたな。
 あの戦いを見ていた誰もが思ったであろう圧勝という言葉は飲み込んでいた。でも、手の内を隠しているとかダメだろ。舐めプしていたのが大々的にバレた。北炒先生の言葉ならそれが事実でも勘違いでも関係ない。クラスメイトたちのオレに対する印象は……まあ、化物みたいなもんだろうな。

 それだけ酒井は、シングルは強者として君臨していたんだ。

「エントリーナンバーワーン! 期待の新人、タルト・ドルマーレ! そして相手をするエントリーナンバーツーは、こちらも実は新人だったりする男! 高根涼樹だーっ!」
「——っ!?」

 対戦相手については聞かされていなかった。だけど驚いているのはオレだけで、隣に立っている涼樹は平然としていた。

「オマエ、知ってたのか?」
「ああ、俺から頼んだからな」
「は? 勝てると思ってるのか?」
「さあ? どうだろうな。普段のお前が相手なら無理かもしれないけど、今のお前になら勝てると思うぞ?」

 そう言ってニヤリとした笑みを浮かべる涼樹。

「なんだそりゃ。別に病み上がりじゃないけど?」
「……まあ、そうなんだろうな。だから思いっきり身体を動かそうぜ」

 何かを言いたそうにしているけど、どうしたんだ?

「さあさあ! 両者見合って! 月始恒例模擬戦・第一試合! 勝負開始っ!」

 既にオレの魔装具はこの場にいる全員に知られている。だから躊躇いはない。

「「【展開】」」

 下腹部から露出の激しいヘソ出し短パン姿へと変わるのと同時に、右腕を振るって鎖を飛ばした。

「いきなりだなっ!」

 開始速攻のために最短距離で伸ばした鎖が、不自然に空中で弾かれていた。

(何をされた? いや、考える必要はない。ゴリ押す!)

 謎の現象によって弾かれた鎖を引き戻し、制御権を取り戻してからすぐに攻撃へと転じさせた。
 初撃のような直線的な軌道ではなく、波打った軌道でターゲットへと突き進む鎖。対してあいつは鎖に意識を向ける事なく、ただオレの事を見ていた。
 そして、両腕を振り上げていた。

(——っ攻撃される!)

 今までに蓄積された戦闘経験が警報を脳内に鳴り響かせる。それと同時にオレは回避行動へと移っていた。

「【貫千護陵《かせんごりょう》】」

 涼樹が握っている黒染のロングソードが振り下ろされるのと同時に、鋒から放たれる攻撃。
 それは地面に深々と亀裂を走らせながら突き進み、サイドステップを終えていたオレの真横を通り過ぎていた。

(今のは[斬弾《ざんだん》]か!?)

 斬撃そのものを弾丸のように飛ばす複合高等技。それを涼樹が習得しているのか!?
 いや、違う。それはありえない。祝福なしで出来るような技じゃない。となれば答えは一つしかない。
 それがあの魔装具の機能か。

 魔装具を展開した涼樹は漆黒のロングコートに身を包み、その手には刃まで黒く染まったロングソードが握られている。
 ロングコートとロングソード。確かにその姿はオレと比べれば普通で地味だけど、想像通りならその性能は高いぞ。
 振るう事で斬撃が放たれる魔装具。銃の下位互換だと言う奴もいるだろうが、組織で教えられている[斬弾]を知る者としては脅威に映った。

「少しはマシな顔になったじゃん」
「何の話だ?」
「さあ、何だろうな!」

 咆哮と共に今度は刃を横薙ぎに振るう涼樹。突然刀剣の間合いではない。とならば、また来るっ!

 基本的に威力が一定的な銃とは違い[斬弾]の威力は使い手によって大きく変わる。攻撃範囲、射程、威力、貫通性能。その全てが使い手の実力によって別次元に変化するんだ。

 初撃が全力だったのだと過小評価はしない。アレで様子見だと判断したオレは、二撃目を全力で受け止める事にしていた。

「【鎖塊流星】」

 鎖を固めて作り出した特大鉄球を流星の如く振り下ろす技。その軌道を振り下ろすのではなく、迫る斬撃に向かって放った。
 斬撃と鎖塊が正面からぶつかり合い、凄まじい激音を鳴り響かせる。

「マジかよ、斬れないとかなんて固さだよ」
「こっちの台詞だ。オマエごと叩き潰すつもりだったんだぞ」

 斬撃が鎖塊を断ち切り、オレの元にまで届く事はなかった。だけど同時にオレの放った鎖塊もまたその勢いを失って地に落ちてしまっていた。

「はあ、まさかオマエがここまでやるとは思ってなかった。褒美だ、見せてやる。理不尽な強さをな」
「ああ、来いタルトっ!」
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