Cactus

ぱり

文字の大きさ
5 / 11

好きなんです。

しおりを挟む
「ははは…そっか、そうなんですね。はい、はい、へ~。あっ、もうこんな時間ですね。それじゃぁまた…はい、じゃぁ…はい、おやすみなさい」

スマホを耳から離してはーーとため息をつく雉真匠。最近よく見る姿だ。

「さぼぼ、今回の人もなんかクセ強かったよ…。小説好きって言うから話が合うかと思ったのにラノベとかオタク系ばっかりだったよ…なんか疲れた」

雉真匠は缶チューハイを一気に煽った。私のところにも小さなカップに少しだけ酎ハイを注いでくれている。手も口もないので飲むことはできないが、雉真匠の優しさが嬉しい。一緒に晩酌している気分にはなる。

「なかなかいい人ってのはいないよね~、いいね。は来てくれるけど、すごく若いか、すごく上か、って感じだし…」
ちょうどいい人でも何故かみんなクセが強いんじゃ…とテレビに映ってた人の口調を真似して雉真匠は言った。
そう言いながらまた雉真匠はスマホを触っている。どうやらそこに雉真匠とやりとりをする人間がいて、会話をしたりするらしい。しかし雉真匠の意中に止まる人はいないようだ。
「はー、めんどくさくなってきた。とりあえず風呂入ろ」
ここにちょうどいいサボテンがいますよ。と心の中で語りかけるが、雉真匠は風呂場のほうへスタスタ行ってしまった。残念。

まだスマホは光っており、その画面に人間の女の人が何人か写っている。よく知らないがみんな美人に見えるのに、雉真匠はタイプが偏っているのか、外見より中身を気にする性格なのかもしれない。

あー天の神様とかそういうのが私を擬人化してくれればいいのに。
トゲは抜いておかないと大変そうだから、がんばってつるつるのお肌にしよう。そうしたら雉真匠はサボテン、もとい擬人化つるつるサボテンの私を抱きしめてくれるかもしれない…

そんなことを考えているうちにいつの間にか雉真匠はお風呂から上がっていた。パンツくらいは履いた方がいいと思うといつも思う。

「ふはーー、気持ちよかった。
あれ、またいいね来てる…」
ちょっとめんどくさそうにスマホを触り出す雉真匠。めんどくさいなら見なきゃいいのに。早くパンツ履きなよ。

気持ちが通じたのかパンツやら服やらを着ながら目はスマホを見ている。器用な人だ。

「あ…なんかこの人いいかも」

雉真匠はスマホをじっと見ながらふんふんと言っている。

その数ヵ月後に実際にその画面に写っていた人が目の前に現れた。

名前を安藤 智慧ちえというらしい。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

〈完結〉デイジー・ディズリーは信じてる。

ごろごろみかん。
恋愛
デイジー・ディズリーは信じてる。 婚約者の愛が自分にあることを。 だけど、彼女は知っている。 婚約者が本当は自分を愛していないことを。 これは愛に生きるデイジーが愛のために悪女になり、その愛を守るお話。 ☆8000文字以内の完結を目指したい→無理そう。ほんと短編って難しい…→次こそ8000文字を目標にしますT_T

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

処理中です...