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笑顔で
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安藤智慧はいつの間にか雉真匠の家に住みはじめていた。
自然と安藤智慧とサボテンとの接点も増える。
安藤智慧はサボテンにただのサボテンらしからぬ雰囲気を感じとっており、サボテンをライバルとして認めていた。
雉真匠が家を留守にしている時、安藤智慧は慎重にサボテンに近付き、話しかけはじめた。
「…これから多分私もこの家に住み始めると思うけど…お手柔らかにね」
サボテンは人間を雉真匠しかほぼ知らない。雉真匠もサボテンにはよく話しかけるので、人間とはそういうものなのだと理解していた。
だから安藤智慧がこんな変な行動をとっても冷静に受け止めているのだった。
「はぁ、しかしうまくやれるかな…。なにかアドバイスとかある?」
…風呂上がりは全裸で出てくるから気をつけて。
サボテンも安藤智慧に心を許しつつあったので、簡単なアドバイスをした。
しかし経験上こちらが何か答えても伝わらないことを知っていた。
「…分かった。お風呂のタオルは共用より個人で使う派なのね」
何かズレているがサボテンは少なからず驚いた。安藤智慧は変わり者だが何か自分と通じるものがあるらしい。
雉真匠がおかしくなった。
それにいち早く気づいたのはサボテンだった。
ある日を境に明らかにおかしい。雉真匠は誕生日を迎え、安藤智慧にも祝ってもらい、洒落たブレスレットをもらって幸せそうだった。
その数週間後から雉真匠は明らかにおかしくなった。
いつもイライラとしている様だし、スマホを見ては何かを気にしている。サボテンにも、安藤智慧にも話かけなくなった。
さすがに安藤智慧も不安になったが原因が分からない。
原因はその数日後判明した。
その日は2人とも仕事でいなかった。平日の昼間は大体そうなる。家にいるのはサボテンだけだ。
なのにその日は雉真匠の鍵を開けようとするガチャガチャという音が響いた。
階段を上がってくる足音も雉真匠のものだ。しかし、今日はもう一つ足音があった。それは安藤智慧の音ではなく…
「どうぞ、狭いけど上がって」
部屋に入ってきたのは化粧の濃い髪の長い女だった。服装も露出が多く、安藤智慧とは正反対の雰囲気だった。
サボテンは身じろぎをした。近づきたくない雰囲気が女から溢れていた。
サボテンは直感で感じた。雉真匠がおかしいのはこの厚化粧女のせいだ。
「大丈夫なの?ここ、彼女さんも一緒に住んでるんでしょ」
女はそう言いながら不安な様子は微塵も感じさせず、雉真匠に絡みついた。
サボテンは鳥肌を立てんばかりにトゲを立ててぞっとした。離れなさいよ!気持ち悪い!
「大丈夫、今仕事中だし」
「悪い人だわ…」
女の顔が雉真匠の顔に近づく。ひぃ、もう見てられない!
その時ピンポーンとインターホンが鳴った。雉真匠は慌てて外の様子を確認しに行った。
取り残された女はため息をつき、その場に座った。サボテンを見つけると「ひっ」と短い悲鳴をあげた。「サボテンじゃない…こわっ…」
女は窓際にいるサボテンから距離をとって座った。
雉真匠がこんな女と一緒にいるだけで寒気が走る。かと言ってサボテンの身の自分はただ眺めることしかできない…
ギリっと歯を食いしばるように葉緑体を一箇所に集める。そうだ、安藤智慧もきっと同じ気持ちになってくれるはずだ。私と安藤智慧は通じるものがあるのだから。
サボテンはどうやって安藤智慧にこの女の存在を教えればいいのか頭を悩ませた。
「ごめん、今日火災報知器の点検があるのすっかり忘れてて」
雉真匠は女に詫びていた。こんな女に頭なんぞ下げなくてもいいのに。
「えーそうなの?…分かった。今日は帰る」
そう言って女は部屋を出て行った。雉真匠も続いて外に出る。見ると女の座っていたところに何か落ちているのを見つけた。ふわふわした、タオルのような、あれはハンカチだった。
これだ!このハンカチを安藤智慧が見つければいい!サボテンは安藤智慧の帰りを待った。幸いにも雉真匠はそのハンカチに気づかなかった。
自然と安藤智慧とサボテンとの接点も増える。
安藤智慧はサボテンにただのサボテンらしからぬ雰囲気を感じとっており、サボテンをライバルとして認めていた。
雉真匠が家を留守にしている時、安藤智慧は慎重にサボテンに近付き、話しかけはじめた。
「…これから多分私もこの家に住み始めると思うけど…お手柔らかにね」
サボテンは人間を雉真匠しかほぼ知らない。雉真匠もサボテンにはよく話しかけるので、人間とはそういうものなのだと理解していた。
だから安藤智慧がこんな変な行動をとっても冷静に受け止めているのだった。
「はぁ、しかしうまくやれるかな…。なにかアドバイスとかある?」
…風呂上がりは全裸で出てくるから気をつけて。
サボテンも安藤智慧に心を許しつつあったので、簡単なアドバイスをした。
しかし経験上こちらが何か答えても伝わらないことを知っていた。
「…分かった。お風呂のタオルは共用より個人で使う派なのね」
何かズレているがサボテンは少なからず驚いた。安藤智慧は変わり者だが何か自分と通じるものがあるらしい。
雉真匠がおかしくなった。
それにいち早く気づいたのはサボテンだった。
ある日を境に明らかにおかしい。雉真匠は誕生日を迎え、安藤智慧にも祝ってもらい、洒落たブレスレットをもらって幸せそうだった。
その数週間後から雉真匠は明らかにおかしくなった。
いつもイライラとしている様だし、スマホを見ては何かを気にしている。サボテンにも、安藤智慧にも話かけなくなった。
さすがに安藤智慧も不安になったが原因が分からない。
原因はその数日後判明した。
その日は2人とも仕事でいなかった。平日の昼間は大体そうなる。家にいるのはサボテンだけだ。
なのにその日は雉真匠の鍵を開けようとするガチャガチャという音が響いた。
階段を上がってくる足音も雉真匠のものだ。しかし、今日はもう一つ足音があった。それは安藤智慧の音ではなく…
「どうぞ、狭いけど上がって」
部屋に入ってきたのは化粧の濃い髪の長い女だった。服装も露出が多く、安藤智慧とは正反対の雰囲気だった。
サボテンは身じろぎをした。近づきたくない雰囲気が女から溢れていた。
サボテンは直感で感じた。雉真匠がおかしいのはこの厚化粧女のせいだ。
「大丈夫なの?ここ、彼女さんも一緒に住んでるんでしょ」
女はそう言いながら不安な様子は微塵も感じさせず、雉真匠に絡みついた。
サボテンは鳥肌を立てんばかりにトゲを立ててぞっとした。離れなさいよ!気持ち悪い!
「大丈夫、今仕事中だし」
「悪い人だわ…」
女の顔が雉真匠の顔に近づく。ひぃ、もう見てられない!
その時ピンポーンとインターホンが鳴った。雉真匠は慌てて外の様子を確認しに行った。
取り残された女はため息をつき、その場に座った。サボテンを見つけると「ひっ」と短い悲鳴をあげた。「サボテンじゃない…こわっ…」
女は窓際にいるサボテンから距離をとって座った。
雉真匠がこんな女と一緒にいるだけで寒気が走る。かと言ってサボテンの身の自分はただ眺めることしかできない…
ギリっと歯を食いしばるように葉緑体を一箇所に集める。そうだ、安藤智慧もきっと同じ気持ちになってくれるはずだ。私と安藤智慧は通じるものがあるのだから。
サボテンはどうやって安藤智慧にこの女の存在を教えればいいのか頭を悩ませた。
「ごめん、今日火災報知器の点検があるのすっかり忘れてて」
雉真匠は女に詫びていた。こんな女に頭なんぞ下げなくてもいいのに。
「えーそうなの?…分かった。今日は帰る」
そう言って女は部屋を出て行った。雉真匠も続いて外に出る。見ると女の座っていたところに何か落ちているのを見つけた。ふわふわした、タオルのような、あれはハンカチだった。
これだ!このハンカチを安藤智慧が見つければいい!サボテンは安藤智慧の帰りを待った。幸いにも雉真匠はそのハンカチに気づかなかった。
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