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第1章 ロフミリアの3つの国
第23話 鉄の扉みたいなやつ
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「失礼しまーす……」
ロフニスは丁寧に挨拶しながら塔の扉を開けた。
中は薄暗く、二つの窓から僅かな光が差し込むのみ。
「ユイ、気を付けてね」
「うん」
ゆっくりとした足取りで中に入るロフニス。
そのすぐ後ろから優衣が続く。
そこは、外から見た塔の形そのままの円い広間になっていて、テーブルや椅子などの家具類は一切置かれていない。
ただ、壁には所々絵が掛けてあり、壁沿いの床に壺などの調度品がポツポツと置いてあった。
「ここって何なの?」
優衣の素朴な疑問だったが、ロフニスも前情報を持ってやってきたわけではない上、部屋にはここがどのような場所なのかを指し示すようなものが何も見当たらなかったため、
「うーん……ごめん全然わかんない! 」
と返すだけ。
「そっか。……って、あれ、もしかして階段かな?」
前方を指差し優衣。
壁沿いに作られたらせん階段。
少しずつ暗さに目が慣れてきて、インスタントカメラの写真が徐々にはっきりすようにじわじわと、部屋の様子が明確になっていく。
「うん。階段だ! とりあえず行ってみよう!」
ロフニスはその階段に向かってゆっくり歩き出した。
が、数歩進んだ所で「ん?」と声を漏らす。
「どうしたの?」
「うん……これなんだけど……」
優衣が駆け寄り声を掛けると、ロフニスは床に目を落としていた。
円い部屋の中央あたり。
その床に何かの模様。
マンホールサイズの丸い線、その中に動物か魔物か何かを表したような絵。
「この絵? 知ってるの?」
「うん。知ってるというか、僕の家の紋章なんだけど」
ロフニスは小首を傾げながら答えた。
なんでこんな所に……といった様子。
「紋章? って、家紋みたいな感じ?」
「うん。そんな感じ……かな。でも、なんでまたそれがここに……」
「えっ、だって、ここの鍵をロフニスんちの倉庫で見つけたんでしょ? だったら、全然不思議じゃなくない?」
「ああ、確かにそうだよね! ごめんごめん、気にさせちゃって。さあ、それより階段だ」
「うん!」
そう言いつつ、ロフニスはまだ紋章について引っかかってる様子だったが、それをここで立ち止まってうだうだと悩み続けても何にも解決しないとばかりに、階段のある壁へと進み始めた。
さっき見た時はもしかしてそうかも……ぐらいの感覚だったが、近づくにつれはっきりとそれが階段だと分かった。
それじゃこの階は2階に上がる階段があるだけの部屋じゃん……と、優衣が心の中で呟いたその時。
「うわっ! で、出た!」
ロフニスが急に立ち止まった。
「なに!?」
後から付いてきていた優衣は思わずロフニスの背中にぶつかりそうになった。
「ま、魔物だ!!」
「えっ?」
まだ目の前にロフニスの背中しか見えなかった優衣は、その背中に手を置いて顔だけ横にずらしてみた。
「……おっ、ホントだ! えっ、でも、この部屋誰も居なかったじゃん。どこから出てきたの??」
「いや、僕も分からない。ずっと床の紋章見てて、歩きながら顔を上げたらもうそこに居て……」
「そっか。って、どうする? 倒すっきゃない感じ?」
優衣はすばやくロフニスの横に並びながら、ピンクゴールドの剣を両手で構えた。
「ベーカベカ!!」
優衣の動きに呼応するように奇妙な鳴き声を上げた魔物は、今まで遭遇したスライムやオオネズミのやつとは全く違う姿形をしていた。
体は縦長の長方形で、その中央部分に目や口などのパーツが集約されており、両側に短い腕、長方形の底辺部分に短い足がちょこんと付いている。
この部屋の暗さにもかかわらず、体の表面には若干の光沢が見えた。
皮膚……というより、どちらかといったら金属に近い雰囲気。
「これってもしかして……めっちゃ強い?」
優衣は、率直な思いを伝えた。
「うん……たしかコイツは、とにかくめっちゃくちゃ硬い魔物だったような気がする。図鑑でしか見たことないけど」
ロフニスは苦み走った顔で答えた。
見た目といい、硬いってこといい、まるで鉄の扉の化け物みたい……と、優衣は思った。
どこかの部屋の扉が何かの拍子に外れて、手足が生えてここまで歩いてきたみたいな風貌だ。
「なんかめっちゃ強そうだけど、どーする? わたしたちで倒せると思う?」
「うーん、どうだろ──」
ロフニスが言いかけた途端。
「ベーカベカァァァ!」
みすみす作戦会議なんか進ませないとばかりに、鉄扉の魔物がふたり目がけて突進してきた。
短い手足をバタバタと動かしながら走ってくる様子はある意味可愛らしくもあったが、そんな風に感じ取れるほど二人に余裕は無い。
「うわっ!」
「うおっ!」
同時に叫びながら、揃って右方向に体をすらして突進を避ける。
優衣がすかさず体を反転させて後ろを向くと、そこには魔物の背中。
鉄のような前面とは打って変わって、その背中は何とも柔らかそうに見えた。
「ねえ、ロフニス」
小声で囁く。
「なに?」
「もしかしてコイツ、背中が弱点……とかじゃない?」
「あ……そういえば、図鑑には『前面に比べて背面はかなり柔らかい皮膚が露出している』とか書いてあった気がする!」
「おお! じゃあ、いまチャンスじゃん! とりゃー!」
剣を構えたまま、がら空きの背中に向かって駆け出す優衣。
ロフニスも自分の剣を抜いてそれに続く。
が、しかし。
「ベ~カ」
声を出しながら、鉄扉の魔物はまさに回転扉のようにくるんと体を反転させ、カチカチの前面を二人の方に向けた。
「あっ、やばっ!」
すでに攻撃態勢に入っていた優衣は、魔物に向けて振り下ろす剣の勢いを止めることはできなかった。
カツンッ!
部屋に鳴り響く金属音。
「いててててっ!」
ガッチガチの前面部分に剣での攻撃を食らわしてしまった優衣の手は、ジーンとしびれていた。
ダメージを表す煙はまさかの0。
「ユイ、大丈夫!?」
「うん。ちょっとビリビリきてるけど」
優衣は頑張って笑顔を作りながら、サササッと後ずさりしてロフニスの隣に戻った。
「お帰り」
「ただいま」
「さて、どうしたものか?」
ロフニスは、まさに鉄壁を誇る魔物の姿をジッと見据える。
さっきのオオネズミには『11』のダメージを食らわせた優衣の攻撃が全く通用しなかったことで、この魔物の前面に突破口は無いと思い知らされた。
しかも、今の突進により配置が入れ替わり、出口が魔物の後ろに隠れてしまったため、逃げるという選択肢は潰されている。
残されたカードはバトルの勝利のみ。
しかし、どうすればあの鉄壁を崩すことができるのか……
「ねえ、なんとかしてアイツの背中に攻撃できないかな? チラッと見えたあの後ろの感じなら、いけそうな気がするんだけど」
「うん。僕もそれ考えてた。でさあ、こういうのはどうかな……」
ロフニスはそっと優衣に耳打ちして伝えた。
切羽詰まった状況ゆえに、少し荒くなっていたロフニスの息が耳の中に入ってくすぐったそうにする優衣。
「ぷぷっ……ぷはっ」
「あっ、ごめん!」
「いいよいいよ。って、その作戦良さそう!」
「うん! まあ、すごく単純だけど」
「ははっ、たしかに!」
こんな状況にもかかわらず、二人は楽しそうに笑い合った。
それを羨ましく思って……かどうかは分からないが、鉄扉の魔物はその様子をジッと見つめている。
一見するとどっしり構えているように見えるのだが、ロフニスの見方は違っていた。
この魔物は、卓越した防御力を備えている代わりに攻撃に関しては突進するぐらいしか出来ないんじゃないか、と睨んでいたのだ。
そして、そこにこそ勝機があるんじゃないか……と。
「よし、じゃあ……作戦開始!」
「おー!」
二人は魔物を挑発するようにわざと大声を出し、まずロフニスが剣を構えながら魔物に向かっていく。
「ベカベカ!」
魔物は威嚇するように声を張り上げた。
そして、横綱のようにどっしり構えてロフニスの攻撃を正面から受ける体勢を取っている。
と、次の瞬間、真っ直ぐ駆け寄っていくロフニスが、魔物の手前で突然右に方向転換。
「ベカッ!?」
焦る魔物の隙を突いて背後に回り込もうとするロフニス。
「おおっ!」
剣を構えたままジッと見守っていた優衣が歓声を上げる。
ロフニスが攻撃する姿を優衣が見たのはこれが初めてだったのだが、なかなかやるじゃん、と感心していた。
見事な身のこなしで魔物の側面に回り込んだロフニスは、その勢いのまま弱点と思しき背中に向けて攻撃を……仕掛けようとした瞬間。
クルッ、と扉が90度回転してロフニスの方を向いた。
「くっ!」
ロフニスは一旦立ち止まり、剣を構えたままジリジリと後ずさりせざるを得なくなった。
「ベカベカベカ!」
薄暗い広間に、魔物の高笑いが鳴り響く。
また膠着状態に逆戻り……では無かった。
元の位置から動いていなかった優衣の目には、魔物の横っ腹が映っていたのだ。
「よっしゃー、スキあり!!」
優衣はニヤッと笑いながら、左側から回り込むようにして魔物に向かって駆け出す。
「ベ……ベカベ……!」
魔物はそれに気付かないわけないのだが、いま優衣の攻撃に備えて体を回転させると、こんどはロフニスに背中を向けることになってしまう。
かといって、そのまま動かなければ、優衣の攻撃を背中で食らってしまうことになる……と、完全に詰み状態。
「とりゃ!」
優衣は、がら空きの背中に向けて容赦なく剣を振り下ろした。
「ベカァァァァァァ!!! ベ……ベカ……」
断末魔の叫びとともに、魔物の背中から『23』の煙が飛び出した。
「やったぁ!」
「ナイス!」
ハイテンションで大喜びの優衣とロフニス。
魔物の姿がスーッと消え、代わりに宝箱が姿を現した。
「えっ、銀貨じゃなくて?」
優衣が宝箱に対してツッコミを入れたその時。
ズッチャ、ズッチャ。
シャン、シャン、シャン♪
ズッチャチャ、ズチャチャ。
ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪
突然、どこからとも無く賑やかな音楽が鳴り響きだした。
ロフニスは丁寧に挨拶しながら塔の扉を開けた。
中は薄暗く、二つの窓から僅かな光が差し込むのみ。
「ユイ、気を付けてね」
「うん」
ゆっくりとした足取りで中に入るロフニス。
そのすぐ後ろから優衣が続く。
そこは、外から見た塔の形そのままの円い広間になっていて、テーブルや椅子などの家具類は一切置かれていない。
ただ、壁には所々絵が掛けてあり、壁沿いの床に壺などの調度品がポツポツと置いてあった。
「ここって何なの?」
優衣の素朴な疑問だったが、ロフニスも前情報を持ってやってきたわけではない上、部屋にはここがどのような場所なのかを指し示すようなものが何も見当たらなかったため、
「うーん……ごめん全然わかんない! 」
と返すだけ。
「そっか。……って、あれ、もしかして階段かな?」
前方を指差し優衣。
壁沿いに作られたらせん階段。
少しずつ暗さに目が慣れてきて、インスタントカメラの写真が徐々にはっきりすようにじわじわと、部屋の様子が明確になっていく。
「うん。階段だ! とりあえず行ってみよう!」
ロフニスはその階段に向かってゆっくり歩き出した。
が、数歩進んだ所で「ん?」と声を漏らす。
「どうしたの?」
「うん……これなんだけど……」
優衣が駆け寄り声を掛けると、ロフニスは床に目を落としていた。
円い部屋の中央あたり。
その床に何かの模様。
マンホールサイズの丸い線、その中に動物か魔物か何かを表したような絵。
「この絵? 知ってるの?」
「うん。知ってるというか、僕の家の紋章なんだけど」
ロフニスは小首を傾げながら答えた。
なんでこんな所に……といった様子。
「紋章? って、家紋みたいな感じ?」
「うん。そんな感じ……かな。でも、なんでまたそれがここに……」
「えっ、だって、ここの鍵をロフニスんちの倉庫で見つけたんでしょ? だったら、全然不思議じゃなくない?」
「ああ、確かにそうだよね! ごめんごめん、気にさせちゃって。さあ、それより階段だ」
「うん!」
そう言いつつ、ロフニスはまだ紋章について引っかかってる様子だったが、それをここで立ち止まってうだうだと悩み続けても何にも解決しないとばかりに、階段のある壁へと進み始めた。
さっき見た時はもしかしてそうかも……ぐらいの感覚だったが、近づくにつれはっきりとそれが階段だと分かった。
それじゃこの階は2階に上がる階段があるだけの部屋じゃん……と、優衣が心の中で呟いたその時。
「うわっ! で、出た!」
ロフニスが急に立ち止まった。
「なに!?」
後から付いてきていた優衣は思わずロフニスの背中にぶつかりそうになった。
「ま、魔物だ!!」
「えっ?」
まだ目の前にロフニスの背中しか見えなかった優衣は、その背中に手を置いて顔だけ横にずらしてみた。
「……おっ、ホントだ! えっ、でも、この部屋誰も居なかったじゃん。どこから出てきたの??」
「いや、僕も分からない。ずっと床の紋章見てて、歩きながら顔を上げたらもうそこに居て……」
「そっか。って、どうする? 倒すっきゃない感じ?」
優衣はすばやくロフニスの横に並びながら、ピンクゴールドの剣を両手で構えた。
「ベーカベカ!!」
優衣の動きに呼応するように奇妙な鳴き声を上げた魔物は、今まで遭遇したスライムやオオネズミのやつとは全く違う姿形をしていた。
体は縦長の長方形で、その中央部分に目や口などのパーツが集約されており、両側に短い腕、長方形の底辺部分に短い足がちょこんと付いている。
この部屋の暗さにもかかわらず、体の表面には若干の光沢が見えた。
皮膚……というより、どちらかといったら金属に近い雰囲気。
「これってもしかして……めっちゃ強い?」
優衣は、率直な思いを伝えた。
「うん……たしかコイツは、とにかくめっちゃくちゃ硬い魔物だったような気がする。図鑑でしか見たことないけど」
ロフニスは苦み走った顔で答えた。
見た目といい、硬いってこといい、まるで鉄の扉の化け物みたい……と、優衣は思った。
どこかの部屋の扉が何かの拍子に外れて、手足が生えてここまで歩いてきたみたいな風貌だ。
「なんかめっちゃ強そうだけど、どーする? わたしたちで倒せると思う?」
「うーん、どうだろ──」
ロフニスが言いかけた途端。
「ベーカベカァァァ!」
みすみす作戦会議なんか進ませないとばかりに、鉄扉の魔物がふたり目がけて突進してきた。
短い手足をバタバタと動かしながら走ってくる様子はある意味可愛らしくもあったが、そんな風に感じ取れるほど二人に余裕は無い。
「うわっ!」
「うおっ!」
同時に叫びながら、揃って右方向に体をすらして突進を避ける。
優衣がすかさず体を反転させて後ろを向くと、そこには魔物の背中。
鉄のような前面とは打って変わって、その背中は何とも柔らかそうに見えた。
「ねえ、ロフニス」
小声で囁く。
「なに?」
「もしかしてコイツ、背中が弱点……とかじゃない?」
「あ……そういえば、図鑑には『前面に比べて背面はかなり柔らかい皮膚が露出している』とか書いてあった気がする!」
「おお! じゃあ、いまチャンスじゃん! とりゃー!」
剣を構えたまま、がら空きの背中に向かって駆け出す優衣。
ロフニスも自分の剣を抜いてそれに続く。
が、しかし。
「ベ~カ」
声を出しながら、鉄扉の魔物はまさに回転扉のようにくるんと体を反転させ、カチカチの前面を二人の方に向けた。
「あっ、やばっ!」
すでに攻撃態勢に入っていた優衣は、魔物に向けて振り下ろす剣の勢いを止めることはできなかった。
カツンッ!
部屋に鳴り響く金属音。
「いててててっ!」
ガッチガチの前面部分に剣での攻撃を食らわしてしまった優衣の手は、ジーンとしびれていた。
ダメージを表す煙はまさかの0。
「ユイ、大丈夫!?」
「うん。ちょっとビリビリきてるけど」
優衣は頑張って笑顔を作りながら、サササッと後ずさりしてロフニスの隣に戻った。
「お帰り」
「ただいま」
「さて、どうしたものか?」
ロフニスは、まさに鉄壁を誇る魔物の姿をジッと見据える。
さっきのオオネズミには『11』のダメージを食らわせた優衣の攻撃が全く通用しなかったことで、この魔物の前面に突破口は無いと思い知らされた。
しかも、今の突進により配置が入れ替わり、出口が魔物の後ろに隠れてしまったため、逃げるという選択肢は潰されている。
残されたカードはバトルの勝利のみ。
しかし、どうすればあの鉄壁を崩すことができるのか……
「ねえ、なんとかしてアイツの背中に攻撃できないかな? チラッと見えたあの後ろの感じなら、いけそうな気がするんだけど」
「うん。僕もそれ考えてた。でさあ、こういうのはどうかな……」
ロフニスはそっと優衣に耳打ちして伝えた。
切羽詰まった状況ゆえに、少し荒くなっていたロフニスの息が耳の中に入ってくすぐったそうにする優衣。
「ぷぷっ……ぷはっ」
「あっ、ごめん!」
「いいよいいよ。って、その作戦良さそう!」
「うん! まあ、すごく単純だけど」
「ははっ、たしかに!」
こんな状況にもかかわらず、二人は楽しそうに笑い合った。
それを羨ましく思って……かどうかは分からないが、鉄扉の魔物はその様子をジッと見つめている。
一見するとどっしり構えているように見えるのだが、ロフニスの見方は違っていた。
この魔物は、卓越した防御力を備えている代わりに攻撃に関しては突進するぐらいしか出来ないんじゃないか、と睨んでいたのだ。
そして、そこにこそ勝機があるんじゃないか……と。
「よし、じゃあ……作戦開始!」
「おー!」
二人は魔物を挑発するようにわざと大声を出し、まずロフニスが剣を構えながら魔物に向かっていく。
「ベカベカ!」
魔物は威嚇するように声を張り上げた。
そして、横綱のようにどっしり構えてロフニスの攻撃を正面から受ける体勢を取っている。
と、次の瞬間、真っ直ぐ駆け寄っていくロフニスが、魔物の手前で突然右に方向転換。
「ベカッ!?」
焦る魔物の隙を突いて背後に回り込もうとするロフニス。
「おおっ!」
剣を構えたままジッと見守っていた優衣が歓声を上げる。
ロフニスが攻撃する姿を優衣が見たのはこれが初めてだったのだが、なかなかやるじゃん、と感心していた。
見事な身のこなしで魔物の側面に回り込んだロフニスは、その勢いのまま弱点と思しき背中に向けて攻撃を……仕掛けようとした瞬間。
クルッ、と扉が90度回転してロフニスの方を向いた。
「くっ!」
ロフニスは一旦立ち止まり、剣を構えたままジリジリと後ずさりせざるを得なくなった。
「ベカベカベカ!」
薄暗い広間に、魔物の高笑いが鳴り響く。
また膠着状態に逆戻り……では無かった。
元の位置から動いていなかった優衣の目には、魔物の横っ腹が映っていたのだ。
「よっしゃー、スキあり!!」
優衣はニヤッと笑いながら、左側から回り込むようにして魔物に向かって駆け出す。
「ベ……ベカベ……!」
魔物はそれに気付かないわけないのだが、いま優衣の攻撃に備えて体を回転させると、こんどはロフニスに背中を向けることになってしまう。
かといって、そのまま動かなければ、優衣の攻撃を背中で食らってしまうことになる……と、完全に詰み状態。
「とりゃ!」
優衣は、がら空きの背中に向けて容赦なく剣を振り下ろした。
「ベカァァァァァァ!!! ベ……ベカ……」
断末魔の叫びとともに、魔物の背中から『23』の煙が飛び出した。
「やったぁ!」
「ナイス!」
ハイテンションで大喜びの優衣とロフニス。
魔物の姿がスーッと消え、代わりに宝箱が姿を現した。
「えっ、銀貨じゃなくて?」
優衣が宝箱に対してツッコミを入れたその時。
ズッチャ、ズッチャ。
シャン、シャン、シャン♪
ズッチャチャ、ズチャチャ。
ギュイン、ギュイン、ギュイイイイン♪
突然、どこからとも無く賑やかな音楽が鳴り響きだした。
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