8 / 24
第二章 忘れ去られた王国
第7話 再開と出会い
しおりを挟む
俺を見るなり大きなため息をついたゴーストは、よくよく見ると半透明ながらも整った服装の初老の男性であることがわかった。
「あなたはゴーストですよね? 俺を襲わないんですか?」
「襲う? そんな馬鹿げたことするはずないだろ! そこらにいるゴーストと一緒にしないでくれ! 私はこのラクスベルク王国を統べる王家に代々仕えている執事のゴードンだ」
「王国? ここは王国なんですか?」
今俺がいる場所は薄暗い建物の中だけど、外に出れば城があるのだろうか。それにラクスベルクなんて名前は初めて聞いたけど、本当に実在する王国なんだろうか。
「もちろんだ。ここがまさにラクスベルクで最も由緒正しい建物でもあるラクスベルク城だ! ……まぁ今はかつての面影もないが。ときに人間よ、その後ろにいるのは君のお仲間なのかね?」
ゴードンさんに言われ後ろを振り向くと、そこには先程追いかけてきていたゾンビとゴーストの姿があった。話に夢中になっていて、すぐ後ろまで来ていることに気づかなかった。
「!? あれ? 俺を襲わない?」
「君は彼らに心当たりはないのかね?」
「いえ、俺にアンデッドの知り合いはいないはずですけど……」
そう言われたて改めてよく見てみると、ゾンビの方は見覚えのある鎧を来ていて、ゴーストの方は羽が生えていて……。
「もしかして……。ファイスさんとサクリさんなの!?」
「オォオウ!」
「フー! フー!」
「なんだか反応して話してくれてるみたいなんだけど、ゴードンさんはなんて話しているかわかりますか?」
「彼らは『そうだよ!』と言っておるぞ」
「そうなんだ……! ファイスさんとサクリさんだったんだね! また会えて本当に嬉しいよ……!」
アンデッドになってしまっていたのは悲しかったけど、今はそんな事どうでも良かった。もう絶対会えないと思っていた二人にまた会えたことが何より嬉しくてたまらなかった。
「ふむ……。何やら事情があるみたいだな。本来人間に干渉すること自体避けるべきなのだが、そこのゾンビとゴーストに免じて話だけでも聞いてやろう。ここから出ると大きな広場があるからまずはそこに向かうぞ」
「ありがとうございます!」
俺達はとりあえずゴードンさんについていくことにした。半透明でわかりにくかったけど、ゴードンさんの表情がちょつと柔らかくなっているようだった。
「ここもかつては緑豊かで綺麗な庭園だったのだが……。まぁいい。椅子も何も用意してやれんが、ここで今まで何があったのかを話してくれないか? そうすれば私の方も君たちがここに来た理由について話してやろう」
俺達がここに来た理由も知りたかったし、今まであった事を誰かに話したいという気持ちも強かったので、俺達の自己紹介とラントリールで起きたことから今までの経緯をゴードンさんに話した。全てを話し終えるとゴードンさんはしばらくの間考え込んでしまった。
「……なるほどな。話をしてくれてありがとうラルフ、おかげで色んな事に納得がいきそうだ。となると私の方の話をする前に確認しておきたいことがあるんだが、ちょっとこっちに来てくれないか?」
ゴードンさんの後ろを付いていくと小屋のような場所にたどり着いた。
「君たちはあそこにいる人間の女の子に見覚えはないか?」
そこにいたのはボロボロの服を来た俺と同じくらいの年齢の女の子で、俺達の中の誰の知り合いでもなかった。
「君達が来る少し前に現れた娘でな、何か君たちと関係があると思ったんだが知り合いではないんだな。私が近寄ると怯えて逃げてしまうんだ。ラルフ、代わりに話をしてきてくれないか?」
「わかりました、ちょっと彼女が何者なのか話を聞いてきますね」
俺は小屋の隅で縮こまっている女の子の元にそっと歩いていった。
「……君はあのゴースト達と一緒に来たけど、私と同じ人間、だよね? ゴーストとかじゃないよね?」
「うん、俺は人間だよ。俺の名前はラルフ。君の名前は?」
「私の名前はアオイよ」
「これからよろしくねアオイ。ちなみにあそこにるゴーストも悪い人たちじゃないから安心して」
「そうなの? 魔族って皆悪い奴らじゃないの?」
「そんなことないよ。もしかして君は今まであまり魔族と関わったことがないの?」
「ええ、私の世界には魔族なんていなかったから」
アオイの別世界から来たような口ぶりには覚えがあった。
「もしかしてアオイはコウイチ達と同じ世界から来たの?」
「ラルフ! コウイチ達と会ったの!? 何か酷いこととかされなかった!?」
コウイチの名前を出した瞬間、アオイは急に目の色を変えて質問をしてきた。内容からして知り合いではあるようだけど、コウイチ達と同じようなことをしてくる様子はなかった。
「詳しいことは向こうの広場で話すよ」
アオイを連れて再び広場に戻り、アオイにコウイチ達の事を話した。
「なんてことなの……! あいつら本当に好き勝手なことをするなんて……! 謝って済む話じゃないけど本当にごめんなさい!」
「事情はよく知らないけど、アオイは悪くないよ?」
「いいえ私があいつらを止めることが出来なかったから……!」
「よかったらアオイの知ってる話を俺達に聞かせてくれないかな?」
その後アオイから聞いた話は想像を絶する内容だった。どうやらアオイとコウイチ達は元々同じ仲間だったようで、別世界の日本という国から、アーカスによってこの世界に召喚されたらしい。そして国王からこの世界にいる悪い魔王を討伐するために旅に出てほしいと言われたものの、この世界でやりたい放題するつもりだったコウイチ達やさせるつもりだったアーカスと意見が食い違い、仲間から追い出されたということだった。その時アーカスに強力な僧侶の能力や装備や道具も全て奪われ、野宿をしていたところ、目を覚ますとここにいたという。
「別世界の人たちは皆コウイチ達のような野蛮な人たちなのかなと思ってたけど、アオイみたいなまともな人もいるんだね」
「確かにコウイチ達の様な考えを持った人は他にもいるけど、普通は皆我慢するのよ。コウイチ達も向こうの世界では特別強い力を持っているわけでもなく普通だったの。でもこの世界に来てチート能力を手に入れた瞬間、人が変わってしまったの」
俺はアーカスに襲われたあの時、ただ力が欲しいと願ったけど、アオイの話を聞いてたとえ強力な力を手に入れたとしても使い方を間違えないようにしようと誓った。
「アオイの話を聞いて全て納得がいったよ。では私からここに君たちが呼ばれた理由について話すとしよう」
「あなたはゴーストですよね? 俺を襲わないんですか?」
「襲う? そんな馬鹿げたことするはずないだろ! そこらにいるゴーストと一緒にしないでくれ! 私はこのラクスベルク王国を統べる王家に代々仕えている執事のゴードンだ」
「王国? ここは王国なんですか?」
今俺がいる場所は薄暗い建物の中だけど、外に出れば城があるのだろうか。それにラクスベルクなんて名前は初めて聞いたけど、本当に実在する王国なんだろうか。
「もちろんだ。ここがまさにラクスベルクで最も由緒正しい建物でもあるラクスベルク城だ! ……まぁ今はかつての面影もないが。ときに人間よ、その後ろにいるのは君のお仲間なのかね?」
ゴードンさんに言われ後ろを振り向くと、そこには先程追いかけてきていたゾンビとゴーストの姿があった。話に夢中になっていて、すぐ後ろまで来ていることに気づかなかった。
「!? あれ? 俺を襲わない?」
「君は彼らに心当たりはないのかね?」
「いえ、俺にアンデッドの知り合いはいないはずですけど……」
そう言われたて改めてよく見てみると、ゾンビの方は見覚えのある鎧を来ていて、ゴーストの方は羽が生えていて……。
「もしかして……。ファイスさんとサクリさんなの!?」
「オォオウ!」
「フー! フー!」
「なんだか反応して話してくれてるみたいなんだけど、ゴードンさんはなんて話しているかわかりますか?」
「彼らは『そうだよ!』と言っておるぞ」
「そうなんだ……! ファイスさんとサクリさんだったんだね! また会えて本当に嬉しいよ……!」
アンデッドになってしまっていたのは悲しかったけど、今はそんな事どうでも良かった。もう絶対会えないと思っていた二人にまた会えたことが何より嬉しくてたまらなかった。
「ふむ……。何やら事情があるみたいだな。本来人間に干渉すること自体避けるべきなのだが、そこのゾンビとゴーストに免じて話だけでも聞いてやろう。ここから出ると大きな広場があるからまずはそこに向かうぞ」
「ありがとうございます!」
俺達はとりあえずゴードンさんについていくことにした。半透明でわかりにくかったけど、ゴードンさんの表情がちょつと柔らかくなっているようだった。
「ここもかつては緑豊かで綺麗な庭園だったのだが……。まぁいい。椅子も何も用意してやれんが、ここで今まで何があったのかを話してくれないか? そうすれば私の方も君たちがここに来た理由について話してやろう」
俺達がここに来た理由も知りたかったし、今まであった事を誰かに話したいという気持ちも強かったので、俺達の自己紹介とラントリールで起きたことから今までの経緯をゴードンさんに話した。全てを話し終えるとゴードンさんはしばらくの間考え込んでしまった。
「……なるほどな。話をしてくれてありがとうラルフ、おかげで色んな事に納得がいきそうだ。となると私の方の話をする前に確認しておきたいことがあるんだが、ちょっとこっちに来てくれないか?」
ゴードンさんの後ろを付いていくと小屋のような場所にたどり着いた。
「君たちはあそこにいる人間の女の子に見覚えはないか?」
そこにいたのはボロボロの服を来た俺と同じくらいの年齢の女の子で、俺達の中の誰の知り合いでもなかった。
「君達が来る少し前に現れた娘でな、何か君たちと関係があると思ったんだが知り合いではないんだな。私が近寄ると怯えて逃げてしまうんだ。ラルフ、代わりに話をしてきてくれないか?」
「わかりました、ちょっと彼女が何者なのか話を聞いてきますね」
俺は小屋の隅で縮こまっている女の子の元にそっと歩いていった。
「……君はあのゴースト達と一緒に来たけど、私と同じ人間、だよね? ゴーストとかじゃないよね?」
「うん、俺は人間だよ。俺の名前はラルフ。君の名前は?」
「私の名前はアオイよ」
「これからよろしくねアオイ。ちなみにあそこにるゴーストも悪い人たちじゃないから安心して」
「そうなの? 魔族って皆悪い奴らじゃないの?」
「そんなことないよ。もしかして君は今まであまり魔族と関わったことがないの?」
「ええ、私の世界には魔族なんていなかったから」
アオイの別世界から来たような口ぶりには覚えがあった。
「もしかしてアオイはコウイチ達と同じ世界から来たの?」
「ラルフ! コウイチ達と会ったの!? 何か酷いこととかされなかった!?」
コウイチの名前を出した瞬間、アオイは急に目の色を変えて質問をしてきた。内容からして知り合いではあるようだけど、コウイチ達と同じようなことをしてくる様子はなかった。
「詳しいことは向こうの広場で話すよ」
アオイを連れて再び広場に戻り、アオイにコウイチ達の事を話した。
「なんてことなの……! あいつら本当に好き勝手なことをするなんて……! 謝って済む話じゃないけど本当にごめんなさい!」
「事情はよく知らないけど、アオイは悪くないよ?」
「いいえ私があいつらを止めることが出来なかったから……!」
「よかったらアオイの知ってる話を俺達に聞かせてくれないかな?」
その後アオイから聞いた話は想像を絶する内容だった。どうやらアオイとコウイチ達は元々同じ仲間だったようで、別世界の日本という国から、アーカスによってこの世界に召喚されたらしい。そして国王からこの世界にいる悪い魔王を討伐するために旅に出てほしいと言われたものの、この世界でやりたい放題するつもりだったコウイチ達やさせるつもりだったアーカスと意見が食い違い、仲間から追い出されたということだった。その時アーカスに強力な僧侶の能力や装備や道具も全て奪われ、野宿をしていたところ、目を覚ますとここにいたという。
「別世界の人たちは皆コウイチ達のような野蛮な人たちなのかなと思ってたけど、アオイみたいなまともな人もいるんだね」
「確かにコウイチ達の様な考えを持った人は他にもいるけど、普通は皆我慢するのよ。コウイチ達も向こうの世界では特別強い力を持っているわけでもなく普通だったの。でもこの世界に来てチート能力を手に入れた瞬間、人が変わってしまったの」
俺はアーカスに襲われたあの時、ただ力が欲しいと願ったけど、アオイの話を聞いてたとえ強力な力を手に入れたとしても使い方を間違えないようにしようと誓った。
「アオイの話を聞いて全て納得がいったよ。では私からここに君たちが呼ばれた理由について話すとしよう」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる