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第38話 バルランド王国の現状

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「この薄汚い奴隷風情が!!」

 広場に駆けつけ、まず最初に聞こえてきたのはそんな言葉だった。

「この私の視界に入るとはッ!何様のつもりだ?」

「も、申し訳ございません・・・!!貴族さま・・・どうかお許しを・・・どうか」

「黙れ!」

 奴隷に突っかかっている理由はまぁ幼稚なものだった、しかも相手は子供の奴隷だ。

「まあいい、しつけのなっていないガキにはお仕置きが必要だな・・・クックッ!」

「ひぃ、誰か助けて・・・!」

「おい!アレを持ってこい!」

 くそ!人が邪魔でなかなか止めにいけない、子供をムチで殴る気か!?

 男はムチを振り上げると泣いてうずくまっている子供に向けて容赦なく振り下ろそうとする。

「“短距離転移”(テレポート)!不快だ、その辺りでやめてもらおうか?」

 本当は人前で使うのは控えたかったが仕方がない、俺は男の後ろに転移し振り下ろそうとしている手を掴み上げる。

「きっ、貴様!一体どこから!!?は、離せ!この私を誰だと思っている!」

 泣いている奴隷達を見ているとついつい手に力が入りギリギリと無意識に男の手を締め上げてしまっていた。

「大人しくこの場から去るか?それとも手を使い物にならないようにしてほしいか?」

 メキメキと骨が軋む感覚を感じ取った男が怯えながら懇願する。

「ヒィ!わ、分かった、大人しくこの場から去る!だから助け・・・」

 男が助けを求める声言い切る前にバキ・・・と手を折ると今まで味わったことのないであろう激痛に叫んだ。

「ぎぃ!?ぎゃあぁあぁあぁぁ!!?腕がッ!!」

「これに懲りたら二度とこんな真似をするな」

「き、貴様ぁ!!こんなことをしてタダで済むと思うなよ・・・覚えていろ!」

 いかにも小物が言いそうな捨て台詞だな、それよりも奴隷たちを保護しなければ・・・。

「君たち、無事か?」

「あ、ありがとうございます!騎士様・・・大丈夫です!ゴホッ!ゴホッ!」

 !?吐血か・・・どう見ても大丈夫ではない、俺はエルフの少女の背中をさすりながらステータスの確認をおこなう。

「“状態感知”(ステータス・フロウ)!“魔栓病”」

 魔栓病・・・この世界の病気か、病名からして魔力が関係してそうな病ではあるが・・・。

「き、騎士様・・・お気になさらないでください、私達は不治の病で捨てられた奴隷なので長くはもちません」

「でも、最後に騎士様ような方にかばって頂いたのはとっても嬉しかったです・・・ゴホッ!」

 絶対に死なせはしないぞ、まずは状態異常の解除と微量だが体力とスタミナを回復するスキルから。

「安心してくれ、すぐに楽になる・・・“気功回復術”(オーラ・ブレス)!」

「ハァ・・・ハァ、騎士様・・・この病は治せません・・・王宮に仕える神官さまほどの奇跡がなくては・・・え?」

 どうだ?治せたか・・・?これは“拳闘師”(モンク)のスキル、これで大抵の状態異常は治るはずだ。

「苦しくなくなった・・・!?騎士様!これは一体!」

「うそ・・・まさか治ったの?」

 なんとか上手くいったか“状態感知”(ステータス・フロウ)にも反応がなくなったし治ったか。

「君たちを保護したいと考えているのだがそれで良いか?」

「ヴァルディ殿!一体なにがあったのですか!?この子たちは?」

 リゼ達は必死に走ってきたのか額に汗を浮かび上がらせながら状況を聞いてきた。

「実はな・・・」

 状況を説明し終えたところで今日のところは、奴隷たちと一緒に宿屋を探すことになったのだが・・・。

「あ、あんた昼間の!すまないが帰ってくれ!あんた達を泊めたら貴族様になんと言われるか・・・!」

 こんな具合で貴族に楯突いた者を泊まらせてくれる宿は見つからなかった。

「ヴァルディ殿・・・」

「ああ、分かっているよ、もうじき日が暮れるな・・・」

 広場で途方に暮れていると1人話しかけてくる年配の女性がいた。

「あんたかい?昼間、貴族どもと大立ち回りをした騎士ってのは?どうだい私の宿なら人数分空いてるよ!」

「貴女は怖くないのか?貴族達に報復されるかもしれないぞ?」

「ハハッ!貴族が怖くて宿屋がやってられるかってね!それに奴隷を助けるために飛び入るなんざ胸がすく話じゃないか!」

 最悪シグの村に帰ればいいと思っていたが、せっかくの遠征だそれではつまらないからな・・・ありがたい。

 せっかくなのでその宿屋に泊まることとなり奴隷達からこの国の情報と囚われていた場所を教えてもらうことになった・・・その前に・・・。

「亭主殿!ありったけの食べ物を持ってきてくれ!」    

「ほら!持ってきたよ!急いで作ったんだ!チップの一つでも弾んでもらわないとね!ハハッ!」

「ありがとう、支払いには期待していてくれ」

 とにかく、情報を引き出すよりも先にお腹いっぱいになってもらわないと、今までろくに食べさせてもらえなかったみたいだし・・・。

「さあ、好きなだけ食べるといい、リゼ殿たちも疲れただろう?」

「無理をさせてしまったからな、今日は私が奢らせてもらう」

「やったニャ!ヴァルディさんありがとうニャ~♪亭主さん!お酒もたくさん持ってきてほしいニャ!」

「ノワルさん、ダメですよ少しは遠慮しないと・・・」

 流石に人の金で奢るわけにもいかないから国王から貰った路銀には手をつけないけど・・・足りるかな・・・。


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