異世界生活の送り方を間違えている気がする?

香奈恵

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三章 メグリ

六十五話 メグリ

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今、何の魔法が使えるのか…、わからないけど。
学校で習ったように。でも何の魔法を使えば…火?

「うわっっ!……熱いっ!!」

そう考えた瞬間、メグリの直線上に爆音と共に青い炎が出現し絨毯を燃やす。老人は咄嗟に避けるが、油断していたのか服の裾を焦がした。

「…! なにが、急にこいつ……」

「だめだ…制御しないと!」

燃え盛る炎は広がり続け、こちらにも向かってくる。消さないと…!!
またそう思った瞬間地面から巨大な氷が炎を包み、ジュッという音がして火は消えた。

「上手くいかない! これじゃあ…」

…クロメも巻き込んでしまう。
地面に倒れた身体は動かない。このままやり続けたらいつか私だって危険だ。

「抑えて……抑えないと。マッチの火くらい…少しの…!」

ゴオッと音がして、さっきよりは小さいが勢いのついた炎が正面一体に広がった。

「だめだだめだ…!! 上手くいかない!」

「…そうか、そうか」

老人はメグリのすぐ先に立ち、炎を防ぎながら口角を上げた。

「儂を楽しませてくれるのは、お前だったのだな。見かけによらず随分なバネを持っているものだ」

「バネ…?」

「魔法の威力や効果を決める、生まれつきの能力の事だ。大魔術師並のモノを持っていながら制御しきれないとはな」

「なんだそれ…」

「儂を倒すか、自身の魔法で自らを滅ぼすか」
「魅せてくれよな」

「…ッ!!」

老人がその身体に似合わずこちらに突進し、拳を突き出した。防ぎきれず、後方へ吹っ飛ばされる。
魔法を使えばまたどうなるかわからない…。クロメさんも私も死んだら本末転倒だ。

間髪入れず老人は正面へ移動し、拳を振り上げた。
防御…防いで…それで!

さっきの炎がメグリの眼前に現れ、迫る拳を焦がしたが老人は咄嗟に横へ避けた。
炎の熱で目に激痛が走り、肌に火傷を負った。

「いたぁっ…!! くそおっ…!」



「……メグリちゃん」

灰色に滲んだ視界の向こうに、青い炎とメグリの影が見える。メグリの握りしめた拳は震え、体力を失った身体は倒れそうだ。

……情けない。メグリちゃんが命を賭して私を守ってくれてるのに…! なにも…私は…!
…本当に、情けない…!!

クロメがメグリの服を掴み、掠れた声で言った。
途切れ途切れだが、強い意志を持った声で。

「クロメさん…?」

「メグリ、ちゃん…」
「私は大丈夫だから……、魔力に…身を、任せて…。私を気にしないで」

「でも……! 魔法も使えないのに」

「大丈夫だから!! 私は死なないよ。あなたも…、こんな所で、死なない…でしょ?」

「………分かりました」
「信じますからね……!!!」

あの老人を倒して…私とクロメさんで生き残る。
目を閉じ、そして頭の中にはっきりと思い浮かべる。全ての魔法の制限を解放して…、ただ一つ、単純な目的の為に。

「あの人を…、倒します!」
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