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三章 メグリ
六十七話 メグリ
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「それで、何があったんだ」
樹林の様にそびえ立つ鉱石の柱の表面が、パリパリと剥がれ落ち地面に当たって砕ける。ぐったりと力の入っていないメグリを担いで、部屋の外へ出た。
クロメはゆっくりと話しながら、外に取り付けられていた階段を上っていく。振り向くと、崖下から突き出した柱は城を半分破壊して尖った上部が飛び出ていた。
「…だからやっぱり、メグリちゃんは魔法の才能がなかったんじゃなくて誰かに魔力を出せないようにされてたって事、だと思う」
「でもあいつ、時を戻せるじゃないか」
「そうなのよね。憶測だけど…体内に残った少しのエリクサーで魔力を補ってるのかも」
「ええ、あの状況を見るに、メグリさんは魔力のバネが大き過ぎて、少しの魔力を使おうとしてもそれ以上の威力が出てしまうのでしょう」
「そうよね、タイムリープなんて魔法、普通のバネじゃあ魔力消費が大きすぎる」
「だとしたら常に制限されてる理由も説明できますね」
「実際、バネが大きすぎる故に制御できてなかった。制限してなかったら危険すぎるもの…」
目の前でよく分からない話が展開されている。とりあえずメグリは才能があったって事、それと…
「あの時石使われてたら…俺死んでたのか」
余裕たっぷりに見下していた相手。こいつが魔法を制御できるようになりでもしたら、俺を超えるのなんて簡単な事なのだろう。
「今はその負荷による身体の麻痺状態でしょうね」
「多分…意識はありますよ」
「いつから…?」
「ずっとだと思います。気が休まった瞬間麻痺状態になる場合が多いので」
「うう…急に恥ずかしくなってきた…」
喉から石を取り出した時のことを思い出してクロメが頬を手で覆う。
「なるほど…じゃあ今耳元で怪談話でもしたら拷問だな」
「やめてあげて下さい…」
「怪談話はともかく…、話しかけるのは重要よ。本人に動きたいという意思がどれだけあるかで回復速度も変わるもの」
「あっクロメ様!」
城に入っていた魔王軍が門の前に集まっており、4人の姿を見かけると駆け寄ってきた。
「一体あれは…」
「話すと長いから後で説明するわ。とりあえずご苦労。この子を連れ帰ってくれる?」
「了解しました!」
メグリを引き渡し、クルトも同行させて魔王城へと馬車は走り出した。
「さて、と」
「まだ調べてないところがあれば調査は続行! それと、誰か頭良い人かもん!!」
魔王がそう叫ぶと、2人程こちらに来た。
「…まだ続けるのか」
「ええ。財政難だもの。でも…」
「あの鉱石の柱なんだけどね、魔法で生み出されたものだとしたら純度がとても高い可能性があるの」
「あれを売るつもりか? 崩れそうだが」
「酸化されてってるのでしょうね。援軍を呼んでなるべく多く取る。純度は高ければ高い程値段も高くなるから」
「じゃあ当分資金は確保出来るのか」
「そうね。良かったわ」
ニッと笑い、さっきの階段を2人引き連れてまた降りてゆく。男の死体を過ぎ鉱石の柱の間を抜けると、崩れた壁の奥に廊下と扉を見つけた。
「まだあったのね」
「こいつの部屋か?」
「さあ…、あの老人、私達がここに来るの分かってたみたいだから。待ち構えてたのかも」
扉を開けるとむっとしたカビの匂いがした。扉の先すぐに大きな本棚、そこに大量の本と資料が置かれていた。
その向こう側に更に本棚と扉の外れた棚、そして火の灯った蝋燭の置かれた大きな机が置かれていた。
「ひゃあ…これはすごい」
「かなり昔の文献だわ…! 魔王城にあるのより古いのもある」
「このミズリケルンの古城は昔、書物庫とも呼ばれた程古代の文献を保管している場所として有名でした」
付いてきたうちの1人が、本棚を見上げながら言う。
「大半は持ち運ばれたり盗まれたりしましたが、ここのように隠された場所の書物はそのままだったのでしょう」
「そっかぁ…、これ早く帰って読みたいわ…!!」
「ふーん…」
ツバキは本棚の端に置かれていた紙を何気なく手に取る。『××年、大虐殺事件発生直後町の中心にて、突如グロウリーが発生。被害者数は約1000万とされる。グロウリーは王国軍により無力化された』
「グロウリー…」
あの地下水路で戦った化物だ。周囲に毒を撒き散らす化物、そんな奴が町に現れたらその被害は尋常ではない。
「とりあえず帰還援軍呼んで、それでこれ、全部持って帰るわよ!」
クロメはニコニコしながら飛び跳ね、まだ痛みの少なそうな書物をカバンに入れて外へ出た。
樹林の様にそびえ立つ鉱石の柱の表面が、パリパリと剥がれ落ち地面に当たって砕ける。ぐったりと力の入っていないメグリを担いで、部屋の外へ出た。
クロメはゆっくりと話しながら、外に取り付けられていた階段を上っていく。振り向くと、崖下から突き出した柱は城を半分破壊して尖った上部が飛び出ていた。
「…だからやっぱり、メグリちゃんは魔法の才能がなかったんじゃなくて誰かに魔力を出せないようにされてたって事、だと思う」
「でもあいつ、時を戻せるじゃないか」
「そうなのよね。憶測だけど…体内に残った少しのエリクサーで魔力を補ってるのかも」
「ええ、あの状況を見るに、メグリさんは魔力のバネが大き過ぎて、少しの魔力を使おうとしてもそれ以上の威力が出てしまうのでしょう」
「そうよね、タイムリープなんて魔法、普通のバネじゃあ魔力消費が大きすぎる」
「だとしたら常に制限されてる理由も説明できますね」
「実際、バネが大きすぎる故に制御できてなかった。制限してなかったら危険すぎるもの…」
目の前でよく分からない話が展開されている。とりあえずメグリは才能があったって事、それと…
「あの時石使われてたら…俺死んでたのか」
余裕たっぷりに見下していた相手。こいつが魔法を制御できるようになりでもしたら、俺を超えるのなんて簡単な事なのだろう。
「今はその負荷による身体の麻痺状態でしょうね」
「多分…意識はありますよ」
「いつから…?」
「ずっとだと思います。気が休まった瞬間麻痺状態になる場合が多いので」
「うう…急に恥ずかしくなってきた…」
喉から石を取り出した時のことを思い出してクロメが頬を手で覆う。
「なるほど…じゃあ今耳元で怪談話でもしたら拷問だな」
「やめてあげて下さい…」
「怪談話はともかく…、話しかけるのは重要よ。本人に動きたいという意思がどれだけあるかで回復速度も変わるもの」
「あっクロメ様!」
城に入っていた魔王軍が門の前に集まっており、4人の姿を見かけると駆け寄ってきた。
「一体あれは…」
「話すと長いから後で説明するわ。とりあえずご苦労。この子を連れ帰ってくれる?」
「了解しました!」
メグリを引き渡し、クルトも同行させて魔王城へと馬車は走り出した。
「さて、と」
「まだ調べてないところがあれば調査は続行! それと、誰か頭良い人かもん!!」
魔王がそう叫ぶと、2人程こちらに来た。
「…まだ続けるのか」
「ええ。財政難だもの。でも…」
「あの鉱石の柱なんだけどね、魔法で生み出されたものだとしたら純度がとても高い可能性があるの」
「あれを売るつもりか? 崩れそうだが」
「酸化されてってるのでしょうね。援軍を呼んでなるべく多く取る。純度は高ければ高い程値段も高くなるから」
「じゃあ当分資金は確保出来るのか」
「そうね。良かったわ」
ニッと笑い、さっきの階段を2人引き連れてまた降りてゆく。男の死体を過ぎ鉱石の柱の間を抜けると、崩れた壁の奥に廊下と扉を見つけた。
「まだあったのね」
「こいつの部屋か?」
「さあ…、あの老人、私達がここに来るの分かってたみたいだから。待ち構えてたのかも」
扉を開けるとむっとしたカビの匂いがした。扉の先すぐに大きな本棚、そこに大量の本と資料が置かれていた。
その向こう側に更に本棚と扉の外れた棚、そして火の灯った蝋燭の置かれた大きな机が置かれていた。
「ひゃあ…これはすごい」
「かなり昔の文献だわ…! 魔王城にあるのより古いのもある」
「このミズリケルンの古城は昔、書物庫とも呼ばれた程古代の文献を保管している場所として有名でした」
付いてきたうちの1人が、本棚を見上げながら言う。
「大半は持ち運ばれたり盗まれたりしましたが、ここのように隠された場所の書物はそのままだったのでしょう」
「そっかぁ…、これ早く帰って読みたいわ…!!」
「ふーん…」
ツバキは本棚の端に置かれていた紙を何気なく手に取る。『××年、大虐殺事件発生直後町の中心にて、突如グロウリーが発生。被害者数は約1000万とされる。グロウリーは王国軍により無力化された』
「グロウリー…」
あの地下水路で戦った化物だ。周囲に毒を撒き散らす化物、そんな奴が町に現れたらその被害は尋常ではない。
「とりあえず帰還援軍呼んで、それでこれ、全部持って帰るわよ!」
クロメはニコニコしながら飛び跳ね、まだ痛みの少なそうな書物をカバンに入れて外へ出た。
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