73 / 145
三章 メグリ
六十九話 メグリ
しおりを挟む
「終わったのか」
「ええ、結構回復早かったわよ」
ツバキは台所に立ち、クルトと共に夕飯の支度をしていた。
「あいつ固めのもの食えるかな?」
「え? どうかしら…問題は無さそうだけど」
「一応控えとくか」
右手に持っていた四角の肉を下に下ろす。
「じゃあ行くか」
「ええ」
報告書を書きに、古城に行った者達が講堂に集まる予定だった。
いつも大量に人の集まる講堂には数十人程度しかいなく、ペンが机に当たる音が広い空間に響いていた。
「ーーーーという事で、発生した鉱石の柱によって当分はなんとかなりそうです」
一通りの報告をし終えると皆から安堵のため息が出た。メグリも緊張が解かれた様に椅子に背を預けた。
「人間側にも売るとしたら、大変そうだけど頑張って貰わないとね」
そう言って正面に座る、黒の髪を後ろで結んだ女の子に声をかける。
人間世界での取引など、魔物が直接関われない仕事を請け負う役職の人で、急遽この報告会に呼ばれたのだった。
彼女、メグリと同じくらいの年に見えるが…こんな重要なポストに付いてるんだな。あいつとは大違いだ。
「もちろんです。最近はあまりお仕事出来てなかったので…頑張ります!」
「うん。ありがとう」
「それと古城の調査は進んでる? あそこ隠し部屋もいくつかありそうだけど」
「ええその事ですが…、仰る通り、現在見つかってるだけでも4部屋です。一つ目は魔王様達が入られた資料庫、そして残りの3つのうち2つは同様の資料庫、もう1つは武器庫でした」
「武器庫…、使えそう?」
「錆の激しいものもありまして、いざ使うとなると点検が必要かと」
「そっか…、引き続き頼むわね」
「了解致しました」
調査隊のリーダーである丸眼鏡をかけた男が言った。服についた泥から忙しさが伺える。
「じゃあこれで報告会は終わり。それぞれ一段落したら一週間程度休暇取ってね。一段落してなくても大変だったら遠慮なく、ね」
各自が資料をまとめて席を立ち、それ似合わせてツバキも椅子を引いた。
俺何もしてないけど休んでいいのかな…?
基本は調査隊の護衛など、敵対する者が現れそうな任務に付いていく仕事をしていたが、財政難からか最近はしていなかった。
「ちょっといいかな?」
考えながら席を立つと、後ろから声を掛けられた。振り返ると、さっきの黒髪の女の子だった。
「何?」
「鉱石の柱を作った方について少し話を伺いたいのだけど、大丈夫?」
「それって秘密事項じゃ?」
「ここに集まった一部の人には知らされてるんだよ。一人の女の子が作ったって。それで、みんなで行くのもなんだからって、私が代表で」
「俺は構わないけど、会うかどうかは彼女次第だぞ」
「ありがと。私はユメ。よろしくね」
2人でメグリ達のいる家へ向かう。
彼女によると、鉱石の純度や密度は魔力がどの程度使われたかで変わるらしく、メグリの現在の身体の麻痺度でそれがあらかた分かるらしい。
「まあ、でも単にあんな物を作る魔術師さんを見てみたいってのもあるんだよね」
「期待に添えるといいがな」
「ええ、結構回復早かったわよ」
ツバキは台所に立ち、クルトと共に夕飯の支度をしていた。
「あいつ固めのもの食えるかな?」
「え? どうかしら…問題は無さそうだけど」
「一応控えとくか」
右手に持っていた四角の肉を下に下ろす。
「じゃあ行くか」
「ええ」
報告書を書きに、古城に行った者達が講堂に集まる予定だった。
いつも大量に人の集まる講堂には数十人程度しかいなく、ペンが机に当たる音が広い空間に響いていた。
「ーーーーという事で、発生した鉱石の柱によって当分はなんとかなりそうです」
一通りの報告をし終えると皆から安堵のため息が出た。メグリも緊張が解かれた様に椅子に背を預けた。
「人間側にも売るとしたら、大変そうだけど頑張って貰わないとね」
そう言って正面に座る、黒の髪を後ろで結んだ女の子に声をかける。
人間世界での取引など、魔物が直接関われない仕事を請け負う役職の人で、急遽この報告会に呼ばれたのだった。
彼女、メグリと同じくらいの年に見えるが…こんな重要なポストに付いてるんだな。あいつとは大違いだ。
「もちろんです。最近はあまりお仕事出来てなかったので…頑張ります!」
「うん。ありがとう」
「それと古城の調査は進んでる? あそこ隠し部屋もいくつかありそうだけど」
「ええその事ですが…、仰る通り、現在見つかってるだけでも4部屋です。一つ目は魔王様達が入られた資料庫、そして残りの3つのうち2つは同様の資料庫、もう1つは武器庫でした」
「武器庫…、使えそう?」
「錆の激しいものもありまして、いざ使うとなると点検が必要かと」
「そっか…、引き続き頼むわね」
「了解致しました」
調査隊のリーダーである丸眼鏡をかけた男が言った。服についた泥から忙しさが伺える。
「じゃあこれで報告会は終わり。それぞれ一段落したら一週間程度休暇取ってね。一段落してなくても大変だったら遠慮なく、ね」
各自が資料をまとめて席を立ち、それ似合わせてツバキも椅子を引いた。
俺何もしてないけど休んでいいのかな…?
基本は調査隊の護衛など、敵対する者が現れそうな任務に付いていく仕事をしていたが、財政難からか最近はしていなかった。
「ちょっといいかな?」
考えながら席を立つと、後ろから声を掛けられた。振り返ると、さっきの黒髪の女の子だった。
「何?」
「鉱石の柱を作った方について少し話を伺いたいのだけど、大丈夫?」
「それって秘密事項じゃ?」
「ここに集まった一部の人には知らされてるんだよ。一人の女の子が作ったって。それで、みんなで行くのもなんだからって、私が代表で」
「俺は構わないけど、会うかどうかは彼女次第だぞ」
「ありがと。私はユメ。よろしくね」
2人でメグリ達のいる家へ向かう。
彼女によると、鉱石の純度や密度は魔力がどの程度使われたかで変わるらしく、メグリの現在の身体の麻痺度でそれがあらかた分かるらしい。
「まあ、でも単にあんな物を作る魔術師さんを見てみたいってのもあるんだよね」
「期待に添えるといいがな」
0
あなたにおすすめの小説
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる