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四章 椿蓮
百十七話 継承
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「こうして一人で行動するのも久しぶりね」
平原を加速魔法で駆け抜けながら、クロメは前方に見える森を捉えた。
ここから西に進めばコドン村、そして真っ直ぐ進めば例の洞窟だ。
段々と深くなってゆく森をスピードを緩めず進んでゆく。洞窟は数回行ったことがある為、迷う事は無い。
そして暫くして、低い崖の傍に暗い穴を見つけた。目印も何も無く、一見するとただの洞穴だ。
周囲に目を配り、洞窟の入口に手を掛けた。暗いが、奥に階段があるのが見える。
この真下に地下水路が通っている為か、洞窟に入った瞬間一気に湿気が肌にまとわりつく。階段は少し濡れていて、壁はぬかるんでいる。
そして階段が途切れた先、四角い部屋へ足を踏み入れた。部屋の中心には台座がある。
しかし、それよりも先に目に止まったものがあった。
「…え」
大きな身体と、大量の傷がついた鎧。その容姿には見覚えがあった。
時間の経った今でもはっきりと思い出せる。
一人の時、失敗した時いつもその人の言葉を思い出しては勇気づけられていた。懐かしいーーーーー
「……パパ…?」
仰向けにして倒れている身体に、クロメはふらふらと近づいてゆく。
一歩近づく度に、その容姿から数々の思い出が蘇ってくる。
「なんで、…ここに」
死体の傍に座り込み、錆び付いた兜の顔面部分を上げる。
間違えない。パパだ。
その身体は全体がぐっしょり濡れていて潮の香りがし、鎧には黒い血の塊がこびりついていた。
後頭部にあるらしい傷口から、僅かに鮮血が流れている。
前に来た時はいなかった。ここに来たというメグリさんとツバキからも何も聞いていない。
だとしたら、現れたのは今日か昨日辺り。
きっかけを考えた時、1つだけ思い浮かんだ。
ーーーーーああ、そっか…。
「………楽園は見れた?」
小さく、呟くようにもう動かないパパに問いかけた。
やっと分かった。パパが目指していたものと、それ故にどうなったか。
クロメは袖で涙を拭い、顔を上げた。薄汚れた台座にユリウスの剣が置かれている。
「魔王の剣」そう呼ばれる由来は、単に継承者が魔王の一族であるからだけではない。この剣の持つ能力が他を傷付けるという行為を象徴している事、そして争いの象徴も、魔王なのだ。
だけど、私はそうは思っていない。
パパは常に、軍のために戦っていた。それはツバキも同じで、争いを求めて剣を降っていたわけではなかった。
きっとこれは、自己犠牲の象徴だ。
傷付けられても手を伸ばす者に、この剣は力を与える。それがユリウスだ。
「……おかえり」
ユリウスを握り、パパの遺体に背を向けた。
名残惜しさを振り払うように階段へ走りだした。
平原を加速魔法で駆け抜けながら、クロメは前方に見える森を捉えた。
ここから西に進めばコドン村、そして真っ直ぐ進めば例の洞窟だ。
段々と深くなってゆく森をスピードを緩めず進んでゆく。洞窟は数回行ったことがある為、迷う事は無い。
そして暫くして、低い崖の傍に暗い穴を見つけた。目印も何も無く、一見するとただの洞穴だ。
周囲に目を配り、洞窟の入口に手を掛けた。暗いが、奥に階段があるのが見える。
この真下に地下水路が通っている為か、洞窟に入った瞬間一気に湿気が肌にまとわりつく。階段は少し濡れていて、壁はぬかるんでいる。
そして階段が途切れた先、四角い部屋へ足を踏み入れた。部屋の中心には台座がある。
しかし、それよりも先に目に止まったものがあった。
「…え」
大きな身体と、大量の傷がついた鎧。その容姿には見覚えがあった。
時間の経った今でもはっきりと思い出せる。
一人の時、失敗した時いつもその人の言葉を思い出しては勇気づけられていた。懐かしいーーーーー
「……パパ…?」
仰向けにして倒れている身体に、クロメはふらふらと近づいてゆく。
一歩近づく度に、その容姿から数々の思い出が蘇ってくる。
「なんで、…ここに」
死体の傍に座り込み、錆び付いた兜の顔面部分を上げる。
間違えない。パパだ。
その身体は全体がぐっしょり濡れていて潮の香りがし、鎧には黒い血の塊がこびりついていた。
後頭部にあるらしい傷口から、僅かに鮮血が流れている。
前に来た時はいなかった。ここに来たというメグリさんとツバキからも何も聞いていない。
だとしたら、現れたのは今日か昨日辺り。
きっかけを考えた時、1つだけ思い浮かんだ。
ーーーーーああ、そっか…。
「………楽園は見れた?」
小さく、呟くようにもう動かないパパに問いかけた。
やっと分かった。パパが目指していたものと、それ故にどうなったか。
クロメは袖で涙を拭い、顔を上げた。薄汚れた台座にユリウスの剣が置かれている。
「魔王の剣」そう呼ばれる由来は、単に継承者が魔王の一族であるからだけではない。この剣の持つ能力が他を傷付けるという行為を象徴している事、そして争いの象徴も、魔王なのだ。
だけど、私はそうは思っていない。
パパは常に、軍のために戦っていた。それはツバキも同じで、争いを求めて剣を降っていたわけではなかった。
きっとこれは、自己犠牲の象徴だ。
傷付けられても手を伸ばす者に、この剣は力を与える。それがユリウスだ。
「……おかえり」
ユリウスを握り、パパの遺体に背を向けた。
名残惜しさを振り払うように階段へ走りだした。
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