異世界生活の送り方を間違えている気がする？

一章 魔王城へ

二十八話 魔王城へ

【二十八話】

陽が昇った頃に森の前に着き、馬車を降りる。
馬車の中で少し寝ていたので、今はスッキリとした気分だ。

「それでは、検討をお祈りします」

そう言って馬車が遠ざかってゆく。
前にあるのは高い山、そして霧のかかった森。
この二つを抜けないと魔王城へはたどり着けない。

「行くぞ、メグリ」

「はい」

一歩踏み出した所で、小屋があるのに気が付いた。こんな場所に何故？

不思議に思い、近付いて扉を開ける。
中には老婆が座り、本を読んでいた。俺達に気付くと目を上げる。

「何の用だい？」

「別に…なんでこんな所にいるのかって」

「そりゃあワープさせるためだよ。聞いてないのかい？」

「…ワープ？」

「あんたらまさか、この山を歩いて行こうなんて思ってたんじゃないだろうね？ そんな事出来るわけないだろうが」

「え…」

「あんたら、この山を超えたいだろう？ ならワープさせるが、どうするね？」

「お願いします…」

メグリは呆然とした顔で俺を見る。
この山と森を超えるためにどれだけ作戦を立てたか。風呂で、ベッドで、馬車で。なのにワープ出来るって、聞いてない。

「なんか…複雑です」

「俺もだ。楽になるに越した事はないんだがな」

「早くしな、ほらこっちだよ」

老婆が奥の部屋へ案内する。大きな魔法陣が描かれ、その真ん中には絨毯が敷かれていた。

「じゃあ始める…目を閉じな」

目を閉じると、空気が消えたような、海に潜ったような音が聞こえた。頭がクラクラする。


そしてその音は段々と薄れていき、遠くから鳥の囀る音が聞こえてきた。
目を開けると、前には晴れた野原が広がり、遠くに薄らと大きな城が見えた。

「着いたのか？」

「みたいですね」

後ろには険しい山が見える。小屋もないし、どうやら越えたようだ。

「では、行きましょうか」

「そうだな、時間はあるし少し散策でもするか？」

「賛成です、と言っても何かありますかね？」

「あそこに建物が見える」

「じゃあとりあえず行ってみましょう！」

手に持ったロープを鞄に詰めて、歩き出す。
雲一つない青空から太陽が緑の地面を輝かせ、魔王城に近いと思えない程和かである。