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二章 魔族地方
五十三話 カムリと死屍累々
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【五十三話】
脚を怪我したカムリはよろよろと手摺に捕まる。痛みがあるのかは分からないが、弱っているのは確かだ。
「あとは俺がどうやって攻撃するか、だよな」
弱ってるとは言えど元があの強さだ。今の段階で俺より少し上くらいだろうか?
回復力がある分俺が上だろうか。
カムリから飛んできたガレキを弾き、棚の後ろに隠れる。
さっきの攻撃の威力は変わらない。だとしたら致命傷を受ける可能性もあるのだろう。
「汚いが…いけるよな?」
床に散乱したエリクサーから強化剤や回復剤を適当に引っ張り出して口に詰めて飲み込む。
少し苦しくなった所で止めた。
「ん…結構効いてるかも」
ガラス瓶をカムリへと飛ばすと、直線を描いてカムリの顔の横を掠めた。
「それと、今回だけは信じてみるか」
クルトに貰った怪しい薬、瓶を揺らすとサラサラした液体が跳ねる。
栓を開け、ぐいっと流し込んだ。変な味が喉を通るが、腹には響かない。
「…っ!? うえ…」
全身の血液が集まったように心臓が熱くなり、頭は周りの景色を歪め、その場に蹲る。
これ、やっぱりダメなものじゃないのか…っ!?
そう思ってまた隠れようとした時、心臓に集まった熱が急激に冷え、そして全身の筋肉が一斉に固まった様な感覚がした。
周りの景色はゆっくり進み、一度に沢山の情報が頭を駆け巡る。
…麻薬じゃないよな?
だが今はこれに頼るしかない。この効果がいつ切れるか分からないのだから。
ガレキを蹴飛ばして埃を撒き散らす。それと同時にカムリへと走る。カムリは柵から手を離して後ろに手を回す。矢を掴む。
この薬の目立つ効果は周りがスローモーションで見える事、そしてそれについて行けるだけの体力の向上だ。
手先から離れた剣はほぼ俺の進行方向と同じ方向に真っ直ぐ飛び、矢を掴んだ手を貫通させた。
「やっと入ったっ!」
カムリは目を見開き、自分の手を見つめ、そしてこちらを向く。
「…お兄さん」
微かにカムリの口からそう聞こえた。それは耳元で、すぐに鉄柵と肉、骨を切断する音に掻き消された。
カムリの右手が俺の後ろへと転がり、返り血は俺の手に赤い模様を付け、カムリの着た白い服には次々と鮮やかな赤い線が刻まれる。
ようやく怯んだところで胸の真ん中に蹴り飛ばした。
後方へ吹っ飛んだカムリは血を大量に流して木箱の上に突っ込む。すぐに床は赤く染まり、振り上げた手から矢が零れ落ちる。
光を失いかけた目でこちらを見つめ、口を微かに動かしながら手でそばをまさぐる。
やっと出た声に感情は感じ取れず、その言葉に何か意味があったのかは確かめようがない。
「首を…切断して………ツバキ…」
地面に剣先が擦れる高い音と共に、俺の意識も薄れてゆく。全身の感覚が麻痺した様になり、足から崩れ落ちる。
脚を怪我したカムリはよろよろと手摺に捕まる。痛みがあるのかは分からないが、弱っているのは確かだ。
「あとは俺がどうやって攻撃するか、だよな」
弱ってるとは言えど元があの強さだ。今の段階で俺より少し上くらいだろうか?
回復力がある分俺が上だろうか。
カムリから飛んできたガレキを弾き、棚の後ろに隠れる。
さっきの攻撃の威力は変わらない。だとしたら致命傷を受ける可能性もあるのだろう。
「汚いが…いけるよな?」
床に散乱したエリクサーから強化剤や回復剤を適当に引っ張り出して口に詰めて飲み込む。
少し苦しくなった所で止めた。
「ん…結構効いてるかも」
ガラス瓶をカムリへと飛ばすと、直線を描いてカムリの顔の横を掠めた。
「それと、今回だけは信じてみるか」
クルトに貰った怪しい薬、瓶を揺らすとサラサラした液体が跳ねる。
栓を開け、ぐいっと流し込んだ。変な味が喉を通るが、腹には響かない。
「…っ!? うえ…」
全身の血液が集まったように心臓が熱くなり、頭は周りの景色を歪め、その場に蹲る。
これ、やっぱりダメなものじゃないのか…っ!?
そう思ってまた隠れようとした時、心臓に集まった熱が急激に冷え、そして全身の筋肉が一斉に固まった様な感覚がした。
周りの景色はゆっくり進み、一度に沢山の情報が頭を駆け巡る。
…麻薬じゃないよな?
だが今はこれに頼るしかない。この効果がいつ切れるか分からないのだから。
ガレキを蹴飛ばして埃を撒き散らす。それと同時にカムリへと走る。カムリは柵から手を離して後ろに手を回す。矢を掴む。
この薬の目立つ効果は周りがスローモーションで見える事、そしてそれについて行けるだけの体力の向上だ。
手先から離れた剣はほぼ俺の進行方向と同じ方向に真っ直ぐ飛び、矢を掴んだ手を貫通させた。
「やっと入ったっ!」
カムリは目を見開き、自分の手を見つめ、そしてこちらを向く。
「…お兄さん」
微かにカムリの口からそう聞こえた。それは耳元で、すぐに鉄柵と肉、骨を切断する音に掻き消された。
カムリの右手が俺の後ろへと転がり、返り血は俺の手に赤い模様を付け、カムリの着た白い服には次々と鮮やかな赤い線が刻まれる。
ようやく怯んだところで胸の真ん中に蹴り飛ばした。
後方へ吹っ飛んだカムリは血を大量に流して木箱の上に突っ込む。すぐに床は赤く染まり、振り上げた手から矢が零れ落ちる。
光を失いかけた目でこちらを見つめ、口を微かに動かしながら手でそばをまさぐる。
やっと出た声に感情は感じ取れず、その言葉に何か意味があったのかは確かめようがない。
「首を…切断して………ツバキ…」
地面に剣先が擦れる高い音と共に、俺の意識も薄れてゆく。全身の感覚が麻痺した様になり、足から崩れ落ちる。
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