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僕の、好きな人 - 伊織サイド -
桜の前で出会った君
しおりを挟むその子は、春の暖かい日に、桜の前で泣いていた。
その涙がどう言った涙かは知らないけど、とてもキレイで儚くて、その涙を俺が優しく拭ってあげたいと思った。
「ゆうきー」
「はーい!」
「ゆうきー」
「ちょっと待ってくださいー」
「ゆうきー」
「もう!待ってください!」
「はぁーい…」
優樹と暮らし始めて半年。
良く、付き合うのと一緒に暮らすのとではイメージが違って別れると聞くけれど、俺たちはそんなことはなく。
なんだったら前より仲良くなってると思う。ラブラブかと言われたら、違うかもしれないけど、それでもお互いがお互いを思い合ってるのには変わりない。
「伊織さん」
「…こっちきて?」
「なんですか?」
「はいぎゅーっ」
「わっ、」
優樹は俺より小さくて華奢で可愛くて可愛くて、腕にすっぽり治っちゃって。
最近だとぎゅってすると遠慮がちだけどぎゅってし返してくれるようになった。
「ゆうきー」
「はい?」
「すきー」
「ふふ。僕もですよ」
「ちゃんと言って」
「ぅ…。あの…ぼ、ぼくも…すき、です」
「ふふ。うん。知ってる。ありがと」
高校時代は色々あったけど、それも乗り越えて今ではこの通り。
好きと言ったら恥ずかしがりながら返してくれる優樹がいる。
それがたまらなく嬉しい。
「あ、伊織さん」
「うん?」
「明日、僕サークルで帰り遅くなります」
「え…そうなの?」
「はい」
「なんで…?」
「部長がインフルになっちゃったみたいで、学祭までに終わらせないといけないものがあるんですけど、部長の変わりに一年も手伝わないと駄目になっちゃって…」
「そっかぁ…。じゃあさ、ゆうきのそれ終わるまで、俺学校のカフェにいるから、終わったら一緒に帰ろ?」
「え、悪いですよ!」
「いいの。俺が一緒に帰りたいし一緒にいたいから。ね?」
「…はい」
「ふふ。うん」
優樹は、地理地学サークルに入ってる。
まぁ、名前のままなんだけど、地理について書物を読んだり調べたり、時にはリベートしてみたり。
とにかく楽しいらしく、にこにこしながらサークルについて話してくれる優樹が可愛いのなんの。
因みに俺は、料理研究サークルに入ってる。これも名前のまま、料理したり食べたりするサークル。
「ねぇ、ゆうき」
「はい?」
「今日は一緒にお風呂入ろっか?」
「え…?」
「駄目?」
「ぅ、ぁ、の…」
「駄目?」
「ぁうっ…、い…いいです、よ?」
「ふふ。やった」
高校の時、優樹に出会って、俺は誰かに恋すると言うことを知った。
恋人がいなかったわけじゃないけど、どこか本気になれなくて。
告白されたから付き合った、みたいなノリだった。
だからあの日、優樹に会えたのは奇跡なんだと思った。
たまたまその日は掃除当番で、休み明けにあったクラスメイトといろいろ話して、一年可愛いねーなんて話ながら掃除して。
じゃんけんでゴミ捨て当番にさせられて、ゴミ捨てに行く時だったんだ。
ふ、と見たら桜の前で、上を向いて目を瞑って静かに涙を流してる優樹がいて、なんてキレイな涙を流す子なんだろうって、目を奪われてた。
それからは、なんかあの涙を流す子が気になって、見たことないから一年だよなって思いながら、一年の教室に行く友達に付き添って行くついでに、あの子のこと探したり、たまたま図書室であった時なんかは、バレないようにそばに座ったり、部活には入ってないっぽかったから、放課後はあんまり会えなかったけど、たまに下駄箱で見かけたら、心がそわそわしちゃったり。
俺、やってること変態じゃない?てか、なんでこんな気にしてるんだろう?て。
そして、そのままの気持ちで優樹のこと見続けてたら(ストーカーっぽいな)、よく同じ子と行動してるんだなぁて気づいて。気づいたのと同時に、ああ…あの背の高い子が好きなんだ、って気づいて。
気づいたと同時に、胸の中がぎゅーって締め付けられる感覚がして、その時に俺、優樹のこと好きなんだって思った。
それからは、どうしたら俺に気づいてくれるかな、とか、どうしたら可愛らしい声で話しかけてくれるのかな、とか、もうそんなことばっか考えてた。
「伊織さん」
「うん?」
「………」
「え、なに?」
「…すきです」
「っ、…うん!俺も!俺も好き!」
今、俺のそばには優樹がいてくれて、あの時思ってた、今も変わらない可愛らしい声で俺に好きって言ってくれて。
あの時の涙の理由はいまだに知らないけれど、それでも今は俺が優樹の涙を拭うことができるこのしあわせな時を、俺はずっと手放したくないと、心から思った。
END
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