星の谷の守護者

ヒトデパン

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第3話 遺物の目覚め

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リオは暗闇の中、静かに足を進めていた。霧のように漂う不気味な空気の中で、彼はひとときも立ち止まることなく、ただ前へと歩き続ける。その目は決して曇らず、心の中にある目的にただひたすらに集中していた。試練を乗り越え、ようやく谷の深層に近づいていることを感じ取っていたからだ。

その時、突然、足元がガクンと沈んだ。リオは驚き、足を踏み外しそうになったが、すぐにバランスを取り戻す。周囲を見回すと、地面が少しだけひび割れているのが見えた。どうやら、谷の底に近づくにつれて地形も変わってきたようだ。

そのまま進むと、前方にひときわ強い光が差し込んできた。リオはその光に引き寄せられるように足を速める。目の前には巨大な石の扉が現れていた。その扉の上部には古代の文字が刻まれており、青白く輝く魔法のエネルギーがそこから放たれていた。

リオは足を止め、その扉を見つめた。扉の中央には、深い闇の中から浮かび上がるように大きなシンボルが浮かんでいる。そのシンボルは、星を象ったものだった。まるで、何千年もの時を経て、今まさに目を覚まそうとしているかのようだった。

「遺物はここにあるのか?」
リオは小さく呟き、手を伸ばしてその扉に触れた。すると、扉が一瞬だけ震え、すぐに静寂が戻った。その瞬間、リオの目の前で不思議な現象が起きた。扉のシンボルが輝きを放ち、まるでそれ自体が生きているかのように動き出した。

リオは一歩下がり、息を呑んだ。扉が開くのか、それとも何か新たな試練が待ち受けているのか。どちらにせよ、遺物に辿り着くためには避けて通れない道だ。

「試練は、まだ終わっていない。」
リオの背後から、カロンの声が響いた。彼の言葉に、リオは軽く振り返り、頷いた。カロンが言っていた通り、この扉を開けること自体が、まだ大きな試練であることを感じていた。

扉の前に立ち、リオは心の中で誓った。「何が待ち受けていても、絶対に遺物を手に入れる。」その覚悟を決め、リオはもう一度扉に手を伸ばした。

その瞬間、扉がゆっくりと開き始める。ギギギ…という重い音が響き、扉が開くごとに中から強い光が漏れ出した。その光は、リオの目を射抜くように眩しく、彼の全身を包み込んだ。

「遺物…!」
リオの声が震える。目の前に現れたのは、巨大な石の祭壇。その上には、輝く水晶のような物体が浮かんでいた。その物体は、まるで星のように光を放ち、リオを引き寄せるように輝き続けていた。

だが、その水晶の周りには、黒い影が渦巻いている。影は、リオに近づくたびに膨れ上がり、まるで彼の意識を試すようにじっと見つめていた。

「お前が求める力を手に入れれば、世界はどうなるか分かっているのか?」
突然、リオの耳元で囁く声がした。リオはその声に振り向くが、周囲には誰もいなかった。だが、その声は確かに彼の内面に響いていた。

「お前はその力を使いこなせると思うか? もし、誤った使い方をしたら、この世界は闇に包まれることになる。」
声は続ける。その声はリオの恐れ、疑念を巧みに突いてきた。心の中にある不安が、声とともに膨れ上がる。

だが、リオは目を閉じて深呼吸した。自分の恐れを認め、それを乗り越えるためにここまで来たのだ。どんな困難が待ち受けようとも、彼は今、真実に向き合おうとしていた。

「私は…自分を信じる。」
リオは静かに言った。目を開けると、水晶がさらに強い光を放ち、その光は彼の体を包み込んだ。

その瞬間、リオの内なる力が目覚めた。水晶から放たれた光が彼の体内に流れ込み、まるで自分が新たな存在に生まれ変わったかのような感覚が走った。

だが、それと同時に、リオは理解した。この力を持つことの重さ、この力を使うことの危険性もまた、彼の運命として刻まれたのだと。

「遺物は、すでにお前の手の中にある。」
カロンの声が、再び響いた。
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