【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第五章 大陸戦争編

第213話 10回目の夢と謎の声

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照明を落とした部屋のスクリーンには、



地図が映し出されていた。



その前には、



作戦に参加する保安局員が椅子に座っている。



タワー上階にある作戦会議室にて、



出撃前のブリーフィングだ。



「今回の作戦は、医療局より要請を受け、



都内研究所にある研究資材の回収任務だ。



目標地点はここ、六本木。



回収目標は特殊な機械で、



対【ワーマー】用ワクチン製造にあたって、



必要不可欠なものである。



専門知識が必要なため、医療局から三名が同行、



作戦参加保安局員はこの三名の護衛を最優先任務とする」



「よろしくね~……って、堅苦しいわね、保安局は」



医療局、【ワーマー】研究室の室長、



長澤塔子は咳払いして座り直した。



「智君、続けて」



「……ここでは赤沢三佐と呼べ」



会議室には今回の作戦参加者



〝ロメオ1″〝ジュリエット4〟〝リマ2〟の十二名、



医療局から長澤と助手が二名、



計十五名が椅子に座っている。



スクリーンに映し出される地図に、



赤いマークが刺さっている。



一見オフィス街だが、研究施設はビルの地下3階にある。



俺はスクリーンの地図にレーザーポインターを当てた。



「目標地点まではヘリ二機にて侵入。



〝リマ2〟は監視、陽動。



建物屋上にてドローンによる本隊サポートだ。



〝ロメオ1″〝ジュリエット4″は医療局員の護衛。



東京のど真ん中だ。【ワーマー】はかなりの数が予想される」



赤い点を地図の上で動かし、部下を見回す。



一番近い席に座っている飛鳥は、



一点を見つめて動かない。



心ここにあらずと言った感じだ。



自分の進退を考えているのだろうか。



長澤によれば、この作戦が成功すれば、



ワクチンはより完成に近づくとのことだ。



よって失敗は出来ない。



今回、虎の子の〝ロメオ1″を使うが、



上層部の本音としては、



こいつらは危険度の低い作戦にしか出したくない。



昴の能力は戦闘時にかなりの優位性をもたらすが、



【ワーマー】のキャリアだ。



可能性は低いらしいが、発症したら万が一もあり得る。



それに昴の血液はワクチン開発に必要不可欠なものだ。



今までのストック分はかなりの量らしいが、



もし失ったら大きな損失になる。



かぐやは優秀だが素行に問題がある。



三年前には口論になった相手を刺すという傷害事件を起こし、



階級を一つ下げている。



問題は飛鳥だ。



本人の意思を尊重して段階的に話し合いを進めているが、



本音はもう二度と現場には出したくはない。



今回が最後になればいいが……。



結局〝ロメオ1″で唯一まともなのは秋人だけだ。



俺から見れば三人は人間ではない。



その中に平気でいられるのは尊敬に値する。



今回の作戦はこれまでにない危険区域への侵入だ。



昴の能力にかかっていると言っても過言ではない。



結局このチームを使うしかないのか、と小さな溜息をついた。



「俺たちは別件があるから出られん。



この作戦の現場責任者は来宮昴二尉に任命する。頼んだぞ」



「はい」



昴は感染していなければ、信頼できる優秀な部下だ。



性格も人望も運動能力も指揮能力もある。



少しおとなしいのが難点だが、



それは自らが保菌者ゆえにという理由だろう。



昔の性格はそれなりに明るかったと秋人が言っていた。



いや……感染した恋人にとどめを刺したとも聞いた……。



俺も昴の立場なら同じような状態になるかもしれない。



「出発は一九○○時。装備を整えてヘリポートに集合」



ブリーフィングは終わり、部屋が明るくなる。



それぞれが席を立ち、退室してゆく。



俺も嫁と子供を失った。



が、実際に感染した姿を見た訳でもない。



御茶ノ水の自宅に五年間帰れていないだけだ。



高い確率で家族は感染しているだろう。



昴のようにその手で愛する人の命を絶った訳ではない。



一体、どんな想いだったんだ、昴。その時お前は……。



「何か?」



目の前に立つ昴は自然体だった。



最愛の人を殺めた事も、自らが保菌者という事も、



全てを受け入れた目をしている、そう感じた。



「いや……死ぬなよ」



自分よりも重い荷物を持つ若者に、



それ以上の言葉は出てこなかった。













目を覚ますと真夜中だった。



木々の間から覗く星空を見上げる。



「……よりによって今日ガシャの夢を見るとは……



明日頭痛くなりそうだな……」



テアトラの城に飛ばされた俺は、



千里眼を駆使して人の気配がない果樹園に移動して、



夜まで隠れていた。



「薬飲んどくか……」



千里眼で状況確認をしたが、ここはとんでもなく広い城だ。



とりあえず魔素は感じないし、



広いから近くに兵士もあまりいない。



「はあ……これからどうしよ……」



ちなみに機械蜂は圏外だ。



ユウリナとはもちろん、



他の誰とも連絡を取ることは出来なかった。



俺に装備されていた機械蜂十匹のうち、



三匹をいざという時のために残し、



残り七匹を偵察に放った。



同時に千里眼をフルに使って情報収集。



おかげでここが何処だか分かった。



テアトラの南部に位置するルガリアン城内だ。



近くの古城の大広間の壁に、



この辺りの地図が描かれていた。



さてこれからどうするか……



そんなことを考えていたら、



誰もいない若木の枝の隙間から、



「お困りのようですね」



と声が聞こえてきた。



「うわあぁあっっ!!!」



びっくりしすぎて胸が痛い。



え、やだ……お化け?
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