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第五章 大陸戦争編
第226話 ビスチェ共和国戦線編 崖の上の墓
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ジョルテシア連邦内 ヨークベル盆地
山間部にあって貴重な平地が広がっているこの場所で、
南ブリムス軍と北ブリムス軍が激しく戦っていた。
広大な地は既にあちらこちらから煙が伸び、
清流は血で染まり、森は火の海と化している。
大陸を二つに分かつ大戦争の、
ここは間違いなく主戦場の一つであった。
上空では広範囲にキラキラと金属の雨が降る。
北の機械蜂と南の機械トンボが、
互いを捕食し合っていた。
その中をジョルテシア軍の有翼人兵たちが、
南の翼竜人兵と空中戦を繰り広げている。
「来た……かなり強い魔素だな」
戦域のはずれでレオンギルトは、
キトゥルセン軍が来るのを待っていた。
ざっと5000人の兵力を連れ、
標的のリリーナ率いるカサス軍と、
ミーズリー軍の混成部隊は、
北ブリムス軍の左翼に展開した。
すぐに動かず、隙が出来るまで機を待とう、
レオンギルトはそう思い、
しばらく観察を続けることにした。
北ブリムス軍に合流したキトゥルセン連邦軍は、
とてつもない量の矢を降らせ、
突撃してくる騎馬兵たちを一網打尽にした。
深緑の甲冑たちが完璧な陣形で前進、
敵陣とぶつかる。
その横から弓兵部隊が襲い掛かる。
見たことのない戦い方だ……
南ブリムス軍がみるみる削られてゆく。
なんだあの弓兵部隊は……。
しばらく経つと深緑の兵士達はカサス軍、
弓兵部隊と騎馬兵はキトゥルセン軍だとわかった。
気が付けばカサス軍の前線に魔獣がいる。
あれはガスレー王国の魔獣ワルツだ。
なぜキトゥルセン軍に味方している?
「……にしても、練度が高いな。
そりゃ北部統一するわけだ」
カサス軍の後方に標的であるリリーナを見つけた。
「あそこか」
リリーナは指揮をしている。
周りには従者と数名の護衛兵。
いけるだろうか……。
空間を止められる能力は厄介だ。
こちらの能力を白紙にしうる。
……相性は最悪だな。
上空から落としても、巨石で潰そうとしても、
空間を止められるのなら失敗する可能性が高い。
確実なのは自らの剣で心臓を刺し貫くこと。
……出来るか? 真後ろを取って一瞬で……
周りの者が動く前に姿を消せば殺られはしないだろう。
……いけるな。
前回のノーストリリア城の時とは違う。
奇襲は奇襲だが、
リリーナは瞬間移動できる敵がいるという事を既に知っている。
対策を立てられている可能性もある。
その意味では危険度は高い。
……だがリアムを殺した張本人だ。
必ず仕留めなければならない。
狙うべきはリリーナ本人が、
魔剣に手を掛けていない時だ。
満を持して、レオンギルトは、
リリーナの暗殺を実行に移した。
勝負は一瞬。
刺して、消える。それだけだ。
レオンギルトは大きく息を吸い込み、
剣を抜いてから、能力を発動。
その場から消えた。
リリーナの背後に現れたレオンギルトは、
黒いマントを羽織った小柄な背中を確認、
一気に剣を突き立てた。
「くぅっ……!!!」
痛みに顔を歪めたリリーナの横顔を確認し、
すぐに瞬間移動を試みる……が、
身体が何かに固定されたかのように、
その場から動かない。
まずい、そう思った時にはもう遅かった。
空間が止まる。
意識はあるのに口も眼球も動かない。
従者の一人が前に出る。
その手に握られているものは、
魔剣メロウウォッチだった。
「かかったな、【千夜の騎士団】」
従者の格好をしたリリーナは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「そいつは影武者だよ。
魔剣もよく出来てるだろ?」
偽物とは……。
くそ……これがカサスの女王か……。
続けて出てきたのはミーズリー、
そしてキャディッシュだった。
こちらは護衛兵の格好をしていた。
「やはり来たか……」
ミーズリーは冷たい視線を寄越す。
「魔戦力には魔戦力をぶつけるのが定石だ」
キャディッシュは兜を取る。
俺はこんなところで……
俺は死ねないんだ、ウラ……
君のために、俺は……
「バハラの仇だ」
そう言い放ち、
ミーズリーは躊躇いなくレオンギルトの心臓に剣を突き刺した。
途端、広範囲に空間が揺れ出した。
周囲の兵士たちがざわめく。
「まさかこれは……能力の暴発かっ!?」
キャディッシュが叫ぶ。
空間の振動は瞬間的に膨張、リリーナ軍全体を飲み込み……
そして弾け消える。
リリーナ軍およびミーズリー軍の一部、
約4000人は、その場から跡形もなく姿を消した。
「ここは……?」
崖の上に墓がある。
背後には森が広がっていた。
大勢の兵たちが頭を抱えながら、
呆けた顔で辺りを見回している。
リリーナの足元には、能力が解け、
血まみれで虫の息のレオンギルトがいた。
身体中に裂傷が目立つ。
何か大きな力が内側から破裂したかのような有様だ。
「貴様、何をしたっ!!」
リリーナは剣先をレオンギルトに向ける。
その怒声にミーズリーやキャディッシュが振り向いた。
「……ここはゼニア大陸さ。
お前ら……全員、魔物に喰われて……ここで死ね」
レオンギルトは笑いながら事切れた。
「うああっ!」
「おいっ!! 魔物だ!」
「剣を構えろ!!」
あちらこちらで混乱が起きている。
よく見れば森の奥には腐樹もたくさん生えていた。
ここは腐樹の森だ。
「なんてこった……」
キャディッシュは絶望の表情で呟いた。
魔物の鳴き声が響く。
山間部にあって貴重な平地が広がっているこの場所で、
南ブリムス軍と北ブリムス軍が激しく戦っていた。
広大な地は既にあちらこちらから煙が伸び、
清流は血で染まり、森は火の海と化している。
大陸を二つに分かつ大戦争の、
ここは間違いなく主戦場の一つであった。
上空では広範囲にキラキラと金属の雨が降る。
北の機械蜂と南の機械トンボが、
互いを捕食し合っていた。
その中をジョルテシア軍の有翼人兵たちが、
南の翼竜人兵と空中戦を繰り広げている。
「来た……かなり強い魔素だな」
戦域のはずれでレオンギルトは、
キトゥルセン軍が来るのを待っていた。
ざっと5000人の兵力を連れ、
標的のリリーナ率いるカサス軍と、
ミーズリー軍の混成部隊は、
北ブリムス軍の左翼に展開した。
すぐに動かず、隙が出来るまで機を待とう、
レオンギルトはそう思い、
しばらく観察を続けることにした。
北ブリムス軍に合流したキトゥルセン連邦軍は、
とてつもない量の矢を降らせ、
突撃してくる騎馬兵たちを一網打尽にした。
深緑の甲冑たちが完璧な陣形で前進、
敵陣とぶつかる。
その横から弓兵部隊が襲い掛かる。
見たことのない戦い方だ……
南ブリムス軍がみるみる削られてゆく。
なんだあの弓兵部隊は……。
しばらく経つと深緑の兵士達はカサス軍、
弓兵部隊と騎馬兵はキトゥルセン軍だとわかった。
気が付けばカサス軍の前線に魔獣がいる。
あれはガスレー王国の魔獣ワルツだ。
なぜキトゥルセン軍に味方している?
「……にしても、練度が高いな。
そりゃ北部統一するわけだ」
カサス軍の後方に標的であるリリーナを見つけた。
「あそこか」
リリーナは指揮をしている。
周りには従者と数名の護衛兵。
いけるだろうか……。
空間を止められる能力は厄介だ。
こちらの能力を白紙にしうる。
……相性は最悪だな。
上空から落としても、巨石で潰そうとしても、
空間を止められるのなら失敗する可能性が高い。
確実なのは自らの剣で心臓を刺し貫くこと。
……出来るか? 真後ろを取って一瞬で……
周りの者が動く前に姿を消せば殺られはしないだろう。
……いけるな。
前回のノーストリリア城の時とは違う。
奇襲は奇襲だが、
リリーナは瞬間移動できる敵がいるという事を既に知っている。
対策を立てられている可能性もある。
その意味では危険度は高い。
……だがリアムを殺した張本人だ。
必ず仕留めなければならない。
狙うべきはリリーナ本人が、
魔剣に手を掛けていない時だ。
満を持して、レオンギルトは、
リリーナの暗殺を実行に移した。
勝負は一瞬。
刺して、消える。それだけだ。
レオンギルトは大きく息を吸い込み、
剣を抜いてから、能力を発動。
その場から消えた。
リリーナの背後に現れたレオンギルトは、
黒いマントを羽織った小柄な背中を確認、
一気に剣を突き立てた。
「くぅっ……!!!」
痛みに顔を歪めたリリーナの横顔を確認し、
すぐに瞬間移動を試みる……が、
身体が何かに固定されたかのように、
その場から動かない。
まずい、そう思った時にはもう遅かった。
空間が止まる。
意識はあるのに口も眼球も動かない。
従者の一人が前に出る。
その手に握られているものは、
魔剣メロウウォッチだった。
「かかったな、【千夜の騎士団】」
従者の格好をしたリリーナは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「そいつは影武者だよ。
魔剣もよく出来てるだろ?」
偽物とは……。
くそ……これがカサスの女王か……。
続けて出てきたのはミーズリー、
そしてキャディッシュだった。
こちらは護衛兵の格好をしていた。
「やはり来たか……」
ミーズリーは冷たい視線を寄越す。
「魔戦力には魔戦力をぶつけるのが定石だ」
キャディッシュは兜を取る。
俺はこんなところで……
俺は死ねないんだ、ウラ……
君のために、俺は……
「バハラの仇だ」
そう言い放ち、
ミーズリーは躊躇いなくレオンギルトの心臓に剣を突き刺した。
途端、広範囲に空間が揺れ出した。
周囲の兵士たちがざわめく。
「まさかこれは……能力の暴発かっ!?」
キャディッシュが叫ぶ。
空間の振動は瞬間的に膨張、リリーナ軍全体を飲み込み……
そして弾け消える。
リリーナ軍およびミーズリー軍の一部、
約4000人は、その場から跡形もなく姿を消した。
「ここは……?」
崖の上に墓がある。
背後には森が広がっていた。
大勢の兵たちが頭を抱えながら、
呆けた顔で辺りを見回している。
リリーナの足元には、能力が解け、
血まみれで虫の息のレオンギルトがいた。
身体中に裂傷が目立つ。
何か大きな力が内側から破裂したかのような有様だ。
「貴様、何をしたっ!!」
リリーナは剣先をレオンギルトに向ける。
その怒声にミーズリーやキャディッシュが振り向いた。
「……ここはゼニア大陸さ。
お前ら……全員、魔物に喰われて……ここで死ね」
レオンギルトは笑いながら事切れた。
「うああっ!」
「おいっ!! 魔物だ!」
「剣を構えろ!!」
あちらこちらで混乱が起きている。
よく見れば森の奥には腐樹もたくさん生えていた。
ここは腐樹の森だ。
「なんてこった……」
キャディッシュは絶望の表情で呟いた。
魔物の鳴き声が響く。
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