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第一章 聖域
17、特訓
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「良いかい? まずは、自分の中にある力を認識し、操作することが大切だ」
ユキはスコットに言われるまま目を閉じ深呼吸をする。
スコットによれば、ユキ自身の力はユキの生命力。それは体の中央に集まり、血液のように体内を循環しているらしい。
この辺りかな、とユキが両手でお腹を触ると、ほんの少し他の位置より温かい気がする。
「見つけた? 最初はそのまま、手を当てていた方がわかりやすいかも」
スコットの言葉に、ユキは集中を切らさないよう目を閉じたまま無言で頷く。
「普段その力は身体を動かすエネルギーとして消費される。全身に散っているから、そのままだと使いにくいし無駄が多いんだ。だから、まずは意識して一か所に集める」
「???」
ユキは一か所に集める、と頭の中でスコットの言葉を復唱しながらお腹に力を籠めてみるが、何も変わらない。むしろ、散ってしまったような気さえする。
「まぁ、初めから何でも上手くいくとは限らねぇしな」
「そうだね。それに、ユキは一度ボクを治してくれているから、きっとできるようになる。自分を信じて」
2号とスコットの慰めに、ユキは頷きながらもう一度お腹に熱を集めることに挑戦する。
ほんの少しだけ、温かさが増した。できた! と思った瞬間、それは散ってしまう。
ガックリと項垂れるユキに、スコットは諦めずに続けてて、と言って立ち上がる。
「またどっか行くのか?」
「うん。神力使うの、失敗してもエネルギーは減るからね。ユキがお腹空いた時にすぐ補給できるよう、食べ物と交換できる何かを採取しに行こうかなって」
「おいらも手伝うよー」
そのまま食べ物と交換してもらってくる、と言うスコットにアースが手を挙げた。ルチもやる気満々だ。
「こういうキラキラしたものが人って好きなんでしょ? ユキのご飯と交換できる?」
「うん。勿論。良いのかい?」
「任せて! 宝探しは得意なんだ!」
アースが地面からよいしょと取り出したのは水晶がびっしりとついた石の塊。それもかなり純度が高いのか、透き通りキラキラと輝いている。
スコットがじゃぁ頼むね、と言うと、アースは地面に潜り、ルチはどこかへと飛んでいく。
スコットも森の奥へと進んでいった。
「行っちゃった」
「気にせず、続けろよ。戻ってくるまでにできるようになってびっくりさせてやろうぜ」
「うん」
それから幾度も失敗を繰り返していたが、ウィンがユキの手を取り、その上に乗ると不思議と1回で成功した。ウィンからユキを包み込むような、柔らかなそよ風を感じる。
にっこりと微笑むウィン。どうやら、彼女が力の操作を手伝ってくれたらしい。
それから、ユキがウィンの手助けを必要としなくなるまで何度も繰り返し、とうとうユキは一人で熱を中心に集めることに成功した。
「できたー」
「おぉ、やったな!」
できた、と力を抜いた途端、疲労感が一気に全身に広がり、ユキは仰向けに倒れる。
心配する2号とウィンに、疲れただけだから大丈夫、と告げるがそのまま立ち上がらずに転がっている。
そんなユキの頭をウィンが優しく微笑み撫でてくるので、ユキはお姉ちゃんってこんな感じかな、と思う。
暫くそのまま休んでいると、ようやくスコット達が戻ってきた。
大量のサンドイッチやスープもある。ユキは空腹になっていることに気づき、促されるままそれらを食べた。残りはスコットが再び異空間にしまう。
「スコット見てて。できるようになったの!」
元気いっぱいになったユキは、お腹に神力を集めて見せる。
それを感じ取れるらしいスコットは、凄い! と力いっぱい褒めてくれた。
嬉しくて集中が切れてしまったユキに、スコットはもう一度集めてそのまま維持してみて、と言う。
ユキが言われるままにお腹に力を籠め、散らさないよう意識を向け続ける。
「そう、そのまま。魔素を霊素に変換するのも、治すのも今集めてるその力を使うからね。集めたその力を、どう使いたいか強くイメージして」
「……ウィンの羽を治したい」
口にしたのは何となくであったが、イメージを固めるにはそれが合っていたらしい。
ユキのお腹が、ポウッ、と輝き出す。
「そう、良いよ! できてる! じゃあ、その力を、ウィンに向かって放つ!」
「へそから? 尻から?」
放つ、のイメージができる前に2号が口を出し、ユキは吹き出してしまう。
すると、せっかく集めた力が散ってしまった。
ユキを笑わせた2号はスコットに怒られていた。
「お腹から直接って出せるイメージがないよ。どうしよう」
「あ、そうか。うん、じゃぁ、最初は手とか、足とか、体の先端に集めた方が良いかもしれない」
慣れるといちいち意識しなくても使えるから忘れてた、とスコットが言う。
ユキは、スコットを治した時はどうやったんだっけ、と考える。そして、目頭が熱くなり、そこからこぼれた涙が光ったのだったと思い出す。
そこで、手を洗った時に指先に水滴が集まり滴り落ちるイメージを作る。しかし、これがまた難しい。
集まった力を指先に移動する、その行為だけに集中し、ウィンにも手伝ってもらうが何度も失敗を繰り返す。
そうして、丸一日を費やし、ようやく指先に力を集めることに成功する。
喜ぶのも束の間、ユキは再び集中する。
「この力で、ウィンの羽を治す……!」
ポゥ、とユキの指先が輝く。
そして、その指にウィンの羽の折れた部分にそっと触れる。
触れた瞬間、ウィンが光に包まれる。光が羽に収束し、やがて消えると、ウィンの羽はピンと張り、折れていたとは思えない状態になっていた。
治った羽を見たウィンが嬉しそうにパタパタと自分の羽を動かし、ふわりと宙に浮かぶ。
「やった! できたぁぁ……」
笑顔でユキの周囲をクルクルと飛ぶウィンを見たユキはガッツポーズをすると、そのまま力尽きた。
ユキはスコットに言われるまま目を閉じ深呼吸をする。
スコットによれば、ユキ自身の力はユキの生命力。それは体の中央に集まり、血液のように体内を循環しているらしい。
この辺りかな、とユキが両手でお腹を触ると、ほんの少し他の位置より温かい気がする。
「見つけた? 最初はそのまま、手を当てていた方がわかりやすいかも」
スコットの言葉に、ユキは集中を切らさないよう目を閉じたまま無言で頷く。
「普段その力は身体を動かすエネルギーとして消費される。全身に散っているから、そのままだと使いにくいし無駄が多いんだ。だから、まずは意識して一か所に集める」
「???」
ユキは一か所に集める、と頭の中でスコットの言葉を復唱しながらお腹に力を籠めてみるが、何も変わらない。むしろ、散ってしまったような気さえする。
「まぁ、初めから何でも上手くいくとは限らねぇしな」
「そうだね。それに、ユキは一度ボクを治してくれているから、きっとできるようになる。自分を信じて」
2号とスコットの慰めに、ユキは頷きながらもう一度お腹に熱を集めることに挑戦する。
ほんの少しだけ、温かさが増した。できた! と思った瞬間、それは散ってしまう。
ガックリと項垂れるユキに、スコットは諦めずに続けてて、と言って立ち上がる。
「またどっか行くのか?」
「うん。神力使うの、失敗してもエネルギーは減るからね。ユキがお腹空いた時にすぐ補給できるよう、食べ物と交換できる何かを採取しに行こうかなって」
「おいらも手伝うよー」
そのまま食べ物と交換してもらってくる、と言うスコットにアースが手を挙げた。ルチもやる気満々だ。
「こういうキラキラしたものが人って好きなんでしょ? ユキのご飯と交換できる?」
「うん。勿論。良いのかい?」
「任せて! 宝探しは得意なんだ!」
アースが地面からよいしょと取り出したのは水晶がびっしりとついた石の塊。それもかなり純度が高いのか、透き通りキラキラと輝いている。
スコットがじゃぁ頼むね、と言うと、アースは地面に潜り、ルチはどこかへと飛んでいく。
スコットも森の奥へと進んでいった。
「行っちゃった」
「気にせず、続けろよ。戻ってくるまでにできるようになってびっくりさせてやろうぜ」
「うん」
それから幾度も失敗を繰り返していたが、ウィンがユキの手を取り、その上に乗ると不思議と1回で成功した。ウィンからユキを包み込むような、柔らかなそよ風を感じる。
にっこりと微笑むウィン。どうやら、彼女が力の操作を手伝ってくれたらしい。
それから、ユキがウィンの手助けを必要としなくなるまで何度も繰り返し、とうとうユキは一人で熱を中心に集めることに成功した。
「できたー」
「おぉ、やったな!」
できた、と力を抜いた途端、疲労感が一気に全身に広がり、ユキは仰向けに倒れる。
心配する2号とウィンに、疲れただけだから大丈夫、と告げるがそのまま立ち上がらずに転がっている。
そんなユキの頭をウィンが優しく微笑み撫でてくるので、ユキはお姉ちゃんってこんな感じかな、と思う。
暫くそのまま休んでいると、ようやくスコット達が戻ってきた。
大量のサンドイッチやスープもある。ユキは空腹になっていることに気づき、促されるままそれらを食べた。残りはスコットが再び異空間にしまう。
「スコット見てて。できるようになったの!」
元気いっぱいになったユキは、お腹に神力を集めて見せる。
それを感じ取れるらしいスコットは、凄い! と力いっぱい褒めてくれた。
嬉しくて集中が切れてしまったユキに、スコットはもう一度集めてそのまま維持してみて、と言う。
ユキが言われるままにお腹に力を籠め、散らさないよう意識を向け続ける。
「そう、そのまま。魔素を霊素に変換するのも、治すのも今集めてるその力を使うからね。集めたその力を、どう使いたいか強くイメージして」
「……ウィンの羽を治したい」
口にしたのは何となくであったが、イメージを固めるにはそれが合っていたらしい。
ユキのお腹が、ポウッ、と輝き出す。
「そう、良いよ! できてる! じゃあ、その力を、ウィンに向かって放つ!」
「へそから? 尻から?」
放つ、のイメージができる前に2号が口を出し、ユキは吹き出してしまう。
すると、せっかく集めた力が散ってしまった。
ユキを笑わせた2号はスコットに怒られていた。
「お腹から直接って出せるイメージがないよ。どうしよう」
「あ、そうか。うん、じゃぁ、最初は手とか、足とか、体の先端に集めた方が良いかもしれない」
慣れるといちいち意識しなくても使えるから忘れてた、とスコットが言う。
ユキは、スコットを治した時はどうやったんだっけ、と考える。そして、目頭が熱くなり、そこからこぼれた涙が光ったのだったと思い出す。
そこで、手を洗った時に指先に水滴が集まり滴り落ちるイメージを作る。しかし、これがまた難しい。
集まった力を指先に移動する、その行為だけに集中し、ウィンにも手伝ってもらうが何度も失敗を繰り返す。
そうして、丸一日を費やし、ようやく指先に力を集めることに成功する。
喜ぶのも束の間、ユキは再び集中する。
「この力で、ウィンの羽を治す……!」
ポゥ、とユキの指先が輝く。
そして、その指にウィンの羽の折れた部分にそっと触れる。
触れた瞬間、ウィンが光に包まれる。光が羽に収束し、やがて消えると、ウィンの羽はピンと張り、折れていたとは思えない状態になっていた。
治った羽を見たウィンが嬉しそうにパタパタと自分の羽を動かし、ふわりと宙に浮かぶ。
「やった! できたぁぁ……」
笑顔でユキの周囲をクルクルと飛ぶウィンを見たユキはガッツポーズをすると、そのまま力尽きた。
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