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第二章 プリメア
19、手続き
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ユキはガレートと共に冒険者ギルドへと来ていた。
入った途端にユキへと視線が集まるが、隣にガレートの姿を見るやすぐに視線は散っていった。
特に絡んでくる者もおらず、初めてガレートと会った時に言っていた「自分達と行動していれば変な輩は寄ってこない」というのは本当だったのだとユキは実感した。
「ギルド長はいるか?」
「ええ、少々お待ちください」
ガレートが受付に声をかけると、しばらくしてアルカがやってきた。
こんないきなり来て、用件も伝えずに会わせてもらえるのはガレートがAランク冒険者だからだろう。
ガレートがアルカに何やらヒソヒソと耳打ちすると、いつもの部屋に通された。
「ユキ、昨日は災難だったな」
「えっと、怖かったけど、アッバスとガレートが助けてくれたの」
アルカは腰を降ろすなり本題に入る。
傭兵ギルドの件は特に問題ないそうだ。ギルド員を殺されたと苦情が来たことは来たらしいが、その前にギルド員であるユキが攫われそうになったという事実を突き付け逆に脅したらしい。
ユキ達を襲った傭兵の雇い主を衛兵に突き出すことで決着したとのこと。
「それでも仲間を殺されたと絡む奴が出てくるかもしれんが……」
「まぁ、それはお互い様でしょ。いつもの事だ」
冒険者ギルドと傭兵ギルドのいざこざは日常茶飯事らしい。
雇い主は小さな商会で、今回の件で取り潰しになる可能性が高いそうだ。
「まぁ、本当の依頼人はどこかの貴族だろう」
「そうだろうな。子供を欲しがる奴はいくらでもいる」
規模は小さいとはいえ奴隷商ではなく商会だったことから、後継者欲しさの貴族が本当の犯人だろうというのがアルカの推測。
まだ狙われていることには変わりないだろうから、気を付けるよう忠告された。
「明日出発するから大丈夫」
「明日?! それはまたずいぶん急だな」
「まぁ、それで明日開門と同時に発ちたいから、一応手続きを、と思ってな」
スコットには時間が無い。ユキも、狙われているのがわかっていて留まる気はない。
フィオナには少し申し訳ないとは思うが、ユキにとって何より大事なのはスコットを助けることなのだから。
「それで、これで地図買えますか?」
ユキは森で小精霊達に集めてもらった薬草や木の実を鞄から取り出す。
アルカは一つ一つ丁寧に鑑定し、紙に何やら書きつけるとリーリアを呼び出した。
リーリアは紙を受け取ると退室し、紙と袋を持って戻ってきた。
「欲しい地図は大まかなもの、だったな」
アルカの確認に、ユキは頷く。
リーリアが袋を机の上に置く。重そうな音が聞こえた。
「今回の買取金、銀貨68枚とさせてもらった。内訳はこの紙に」
A5サイズほどの紙に、品名と数量、金額が細かく書かれていた。
ユキはそれで初めて正式なお金の単位を知った。金額の後ろにRと付いていたのだ。
地図の値段を聞いた時に提示されたお金の種類は金貨と銀貨と銅貨。街中の買い物でライーが銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚と教えてくれた。
そして、紙の合計金額には6800Rとある。
「じゃあ、これで地図をください」
ユキは袋から輝くような銀貨を10枚取り出した。
リーリアは頷くと、A3サイズの紙を机に広げた。
受付のフロアに飾ってあった地図を半分に割ったような大陸の地図。最初からロストエンドは入っていないようだ。
地図には最初に説明されていた通り、大都市を示す点とそれを繋ぐ主要街道が描かれている。
「この中で、崩れてしまっている都市はありますか?」
「崩れ……そうだな……」
アルカとリーリア、ガレートが額を突き合わせてどこそこから避難民が、などと良いながら×印を書き込んでいく。
こんなもんか、と三人が離れたので覗き込むと、半円状に×印が広がっている。
ユキは×印の外側にある都市がいくつかあるのを見つける。
「ガレートさん、まずはここを目指したいです」
神樹に遠い所から崩れているならば、神樹を囲むように印が付くはず。印の外側に無事な都市があるならば、装置はその側にある。
ユキはそう考えたのだが、その都市が一つではなかったことで早くも目論見が外れてしまった。
落胆したユキだったが、何も手がかりがない状態からここまで候補が絞れたじゃないか、と思い直す。
「ロットか。酪農で生計を立てている都市だ。肉とミルクが食えるぞ」
「機能しているならば、な」
現在地から一番近い都市を指すと、ガレートが嬉しそうに言う。
そんなガレートにアルカが釘を刺した。
ロットに繋がる街道が崩れてしまい、ロットから燻製肉などを配送している商人が来なくなってしまったそうだ。
「だが、崩れていないルートもあるだろう」
「そうだな。まずはリーベから入るルートを試す。その為にも、一度エレーアで情報収集だな」
ガレートがロットから指を辿り、印の内側にある点で指を止めた。
アルカが頷く。
「では、エレーアに着いたらギルドを通して報告をしてくれ。一応目的地エレーアで手続きしておく」
「了解」
どうやら遠方と連絡を取り合う手段はあるらしい。
エレーアは紡績の街だとガレートが教えてくれた。服飾が発展しているそうだ。
ファッションに興味のないユキはふぅん、とだけ答えた。
ギルドでの手続きが終わり、ガレートと二人商店街へと向かう。
「まずは装備だな。ここはまだ弱い魔物しか出ないからそれでも何とかなってきたんだろうが、エレーアに向かうならその恰好じゃだめだ。防具と、武器も何か見繕おう」
「あ、でも、お金そんなにない……」
ユキの全財産は先ほど地図を買った残り、銀貨58枚だ。
ガレートは足りなきゃ俺が立て替えてやる、と笑った。
入った途端にユキへと視線が集まるが、隣にガレートの姿を見るやすぐに視線は散っていった。
特に絡んでくる者もおらず、初めてガレートと会った時に言っていた「自分達と行動していれば変な輩は寄ってこない」というのは本当だったのだとユキは実感した。
「ギルド長はいるか?」
「ええ、少々お待ちください」
ガレートが受付に声をかけると、しばらくしてアルカがやってきた。
こんないきなり来て、用件も伝えずに会わせてもらえるのはガレートがAランク冒険者だからだろう。
ガレートがアルカに何やらヒソヒソと耳打ちすると、いつもの部屋に通された。
「ユキ、昨日は災難だったな」
「えっと、怖かったけど、アッバスとガレートが助けてくれたの」
アルカは腰を降ろすなり本題に入る。
傭兵ギルドの件は特に問題ないそうだ。ギルド員を殺されたと苦情が来たことは来たらしいが、その前にギルド員であるユキが攫われそうになったという事実を突き付け逆に脅したらしい。
ユキ達を襲った傭兵の雇い主を衛兵に突き出すことで決着したとのこと。
「それでも仲間を殺されたと絡む奴が出てくるかもしれんが……」
「まぁ、それはお互い様でしょ。いつもの事だ」
冒険者ギルドと傭兵ギルドのいざこざは日常茶飯事らしい。
雇い主は小さな商会で、今回の件で取り潰しになる可能性が高いそうだ。
「まぁ、本当の依頼人はどこかの貴族だろう」
「そうだろうな。子供を欲しがる奴はいくらでもいる」
規模は小さいとはいえ奴隷商ではなく商会だったことから、後継者欲しさの貴族が本当の犯人だろうというのがアルカの推測。
まだ狙われていることには変わりないだろうから、気を付けるよう忠告された。
「明日出発するから大丈夫」
「明日?! それはまたずいぶん急だな」
「まぁ、それで明日開門と同時に発ちたいから、一応手続きを、と思ってな」
スコットには時間が無い。ユキも、狙われているのがわかっていて留まる気はない。
フィオナには少し申し訳ないとは思うが、ユキにとって何より大事なのはスコットを助けることなのだから。
「それで、これで地図買えますか?」
ユキは森で小精霊達に集めてもらった薬草や木の実を鞄から取り出す。
アルカは一つ一つ丁寧に鑑定し、紙に何やら書きつけるとリーリアを呼び出した。
リーリアは紙を受け取ると退室し、紙と袋を持って戻ってきた。
「欲しい地図は大まかなもの、だったな」
アルカの確認に、ユキは頷く。
リーリアが袋を机の上に置く。重そうな音が聞こえた。
「今回の買取金、銀貨68枚とさせてもらった。内訳はこの紙に」
A5サイズほどの紙に、品名と数量、金額が細かく書かれていた。
ユキはそれで初めて正式なお金の単位を知った。金額の後ろにRと付いていたのだ。
地図の値段を聞いた時に提示されたお金の種類は金貨と銀貨と銅貨。街中の買い物でライーが銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚と教えてくれた。
そして、紙の合計金額には6800Rとある。
「じゃあ、これで地図をください」
ユキは袋から輝くような銀貨を10枚取り出した。
リーリアは頷くと、A3サイズの紙を机に広げた。
受付のフロアに飾ってあった地図を半分に割ったような大陸の地図。最初からロストエンドは入っていないようだ。
地図には最初に説明されていた通り、大都市を示す点とそれを繋ぐ主要街道が描かれている。
「この中で、崩れてしまっている都市はありますか?」
「崩れ……そうだな……」
アルカとリーリア、ガレートが額を突き合わせてどこそこから避難民が、などと良いながら×印を書き込んでいく。
こんなもんか、と三人が離れたので覗き込むと、半円状に×印が広がっている。
ユキは×印の外側にある都市がいくつかあるのを見つける。
「ガレートさん、まずはここを目指したいです」
神樹に遠い所から崩れているならば、神樹を囲むように印が付くはず。印の外側に無事な都市があるならば、装置はその側にある。
ユキはそう考えたのだが、その都市が一つではなかったことで早くも目論見が外れてしまった。
落胆したユキだったが、何も手がかりがない状態からここまで候補が絞れたじゃないか、と思い直す。
「ロットか。酪農で生計を立てている都市だ。肉とミルクが食えるぞ」
「機能しているならば、な」
現在地から一番近い都市を指すと、ガレートが嬉しそうに言う。
そんなガレートにアルカが釘を刺した。
ロットに繋がる街道が崩れてしまい、ロットから燻製肉などを配送している商人が来なくなってしまったそうだ。
「だが、崩れていないルートもあるだろう」
「そうだな。まずはリーベから入るルートを試す。その為にも、一度エレーアで情報収集だな」
ガレートがロットから指を辿り、印の内側にある点で指を止めた。
アルカが頷く。
「では、エレーアに着いたらギルドを通して報告をしてくれ。一応目的地エレーアで手続きしておく」
「了解」
どうやら遠方と連絡を取り合う手段はあるらしい。
エレーアは紡績の街だとガレートが教えてくれた。服飾が発展しているそうだ。
ファッションに興味のないユキはふぅん、とだけ答えた。
ギルドでの手続きが終わり、ガレートと二人商店街へと向かう。
「まずは装備だな。ここはまだ弱い魔物しか出ないからそれでも何とかなってきたんだろうが、エレーアに向かうならその恰好じゃだめだ。防具と、武器も何か見繕おう」
「あ、でも、お金そんなにない……」
ユキの全財産は先ほど地図を買った残り、銀貨58枚だ。
ガレートは足りなきゃ俺が立て替えてやる、と笑った。
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