俺、きのこです。

禎祥

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きのこのきのこ *

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朝起きたら、きのこでした。しかも食用。

俺は相当旨いのか、さっき雀の大群に襲われた。
痛みを感じなかったから、やっぱり夢を見ているんだろう。そして、食われた箇所は時間経過で元通り。
そんな歩くエリンギの俺。今は湖の畔をてくてく散策中。

湖に映る俺の姿は、どこかのマスコットの様に一見愛らしい。

そう、

俺は気付いてしまった。ビジュアル的にアウトな位置から生える立派な松茸に。
「エリンギから何故松茸!」
いやいやいや、そうじゃない。
「しかも人間だった時より立派!」
そうでもない。落ち着け俺。

「こんなところから松茸ニョッキしちゃダメだろ!」
マスコット好きとして許せん!

ぶちぃっ!

怒りに任せて引きちぎる。ちょっぴりヒュッとしたけど全然痛くはなかった。
引きちぎったそれは紛れもなく松茸。ちょっと匂いを嗅いでみる。…うん、正真正銘の松茸だ。生えてきた場所がアレでなければ焼いて食べたいところだ。

「まぁ、とにかくこれでもう変な所は…」
もう一度湖面に姿を映して確認したら、また生えていた。
「……」
え、何で?さっき抜いたよね?何でもうニョッキしちゃってんの?
無意識レベルで引っこ抜く。

にゅっ

また生えてきた。

「ふんっがぁぁぁぁぁぁあああああああっ!」

抜いては一瞬で生える松茸との格闘。
俺の周囲に見る見る松茸の山ができていく。

もう、何コレ。どうなってんの?
俺のアレな位置で松茸の菌が繁殖してるってこと?このままどんどん菌が繁殖すれば内側から松茸に乗っ取られる?やだ怖い。

そして…

一瞬生えるのが止んだと思ったら。

にゅっ

今度は少し下の方から生えた。

「やめて!さらにリアルだから!」
もうネタでも何でもなくなってしまうだろ!
これは完全にアウトだ!

泣きながら引っこ抜く俺。
だんだん下の方下の方に位置をずらして生える松茸。完全に遊ばれてる?
前かがみにならないと手が届かなくなった。

「ふんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
他者から見たら賢者タイムにしか見えないその闘いを何度繰り返しただろうか。

ようやく松茸は生えてこなくなった。
「やった!俺は長く苦しい戦いに勝ったんだ…!」

湖面に姿を映して確認したら文字通り精も根も尽き果ててシオシオになった俺がいた。
だが、目に見える範囲に松茸はない。これで、一安心。




(にゅっ)

俺はこの時、全く気付いていなかったんだ。
俺の完全死角、背面下方から下向きに生えたその松茸に…。
気付いた時にもちろん「●●●かっ!」と突っ込んだのは言うまでもない。


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