俺、きのこです。

禎祥

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きのことにゃんこ

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きのこになって二日目の朝。
今俺は、湖の畔で手籠に無傷の松茸を拾い集めている。

「案外無事なの多いのな。」
せっせと拾い集める俺のお尻が何やらもぞもぞする。

「…お前、ガブられてんぞ。」
「へ?」
ちび俺が俺の頭を叩いて教えてくれたので見たら、黒い縞々にゃんこが俺の尻をガブっていた。

「可愛いなあ。何でこんなとこいるん?迷子?」
拾いたいけど、俺も迷子なんだよね。

「お腹が空いてるん?俺の尻なんて食ったらお腹壊すよ?」
「んなぁ~」
頭を撫で撫でしたら、甘え声出して擦り寄ってきた。やだ、何この生き物。愛しい。

「どうしよう、ちび俺。この子欲しい。」
「飼えないでしょ。元の場所に返してらっしゃい。」
「どこよ、元の場所って?」

「なぁ~ん」
鳴き声が切なげになってきた。

「マジで腹減ってんのかね。」
「食べれそうなもん無いよ。松茸くらい?」
「食わんっしょ。」
そう言いつつ匂いを嗅がせてみる。

フンフン、と匂いを嗅いだにゃんこはクワッっと口を開き耳ペタンで眉間にめっちゃ皺を寄せる。
「何その顔?!」
「好きじゃないってさ。」
「俺の尻の方が好きって事?」
「言い方!」
ちび俺に殴られた。

「でもなー、マジでやるもん無いよ?魚でも釣ってみる?」
湖にいることだし。

森に戻って蔓と枝を拾って戻ってくると、なんちゃって釣竿を作成。
蔓の先にちび俺を結んで、と。
ちび俺が我に返る前に投擲。

「おいぃぃぃ!?」

ぼちゃん、と着水。そのまま沈んでいくちび俺。あ、必死に泳いでる。

片目でちび俺の視界と繋ぐと、水面に向かってぐいぐい移動してた。
その視界に魚影。魚の顔って何で正面から見るとあんな間抜けなんかね?
魚がぐんぐん近づいてちび俺の視界が真っ暗になった。

「よっしゃ、喰いついた!」

一気に引き上げる。

びちびちっ

下半身にでかい魚を生やしたちび俺がピューッと水を吐き出しながらギロリ、と睨んでくる。
その魚には、網タイツを履かせたらシットロト踊りを踊ってくれそうな足が。

「ちび俺、お前まさか…。」
「不可抗力だ。」

さっと目線を逸らすちび俺。
…喰いつく前につつかれるうちにキスしちゃったんだね…。

とりあえず、半分呑まれてるちび俺を魚の口から引っこ抜く。

「あれ?ちび俺はどこも変化してないよ?」
「マジか。マジだ。謎。」
ちび俺が全身チェックして首を傾げる。

「ちび俺はこういう生き物で、何の魔法もかかってないから変化なしという判定?」
「ってことは、こいつは魔法で魚に変えられた元人間ってこと?」

「「あ」」





確認しようと魚を振り返ったら、にゃんこにモグモグされてた。ちょいグロい。

「んなぁ~」

満足げに顔を洗うにゃんこ。
その足元は、人間っぽい足だけ残されていた。合掌。安らかに眠ってくれ。



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